片山金融相が仮想通貨ETFの国内解禁に改めて意欲
日本でも、いよいよ「仮想通貨ETF」が購入できるようになるかもしれません。
片山さつき財務・金融担当相は2026年7月10日、金融情報サービス会社QUICKが主催した「オープンQUICK2026」の講演で、暗号資産を裏付け資産とするETFについて、国内での解禁に向けた検討を進める考えを示しました。
海外ではすでに仮想通貨ETFの取引が広がっています。日本でも、投資家が安心して暗号資産へ投資できる環境を整える必要がある、というのが今回の発言のポイントです。
現在、暗号資産を金融商品として位置付けるための金融商品取引法、いわゆる金商法の改正案が国会で審議されています。
法案は2026年4月10日に国会へ提出され、6月10日に衆議院財務金融委員会で可決。翌11日には衆議院本会議を通過し、6月15日に参議院財政金融委員会へ付託されました。
ただし、2026年7月12日時点では参議院での議決や法律の成立には至っていません。「仮想通貨ETFの解禁が正式に決まった」という段階ではなく、あくまで制度改正に向けた審議が進んでいる状況です。
今回のニュースで押さえておきたいポイントは、次の3つです。
- 仮想通貨ETFの国内解禁に向け、政府が前向きな姿勢を示している
- 暗号資産を金商法の規制対象とする法案が参議院で審議されている
- 税率20%の申告分離課税や国内ETFの実現につながる可能性がある
仮想通貨に興味はあるものの、取引所の口座開設やウォレットの管理が不安で、一歩を踏み出せなかった人も多いのではないでしょうか。
仮想通貨ETFが国内の証券取引所に上場すれば、暗号資産投資のハードルはかなり下がる可能性があります。
そもそも仮想通貨ETFとは?現物を持たずに投資できる仕組み
ETFとは「Exchange Traded Fund」の略で、日本語では上場投資信託と呼ばれます。
一般的な投資信託と同じように、複数の投資家から集めた資金を運用する金融商品ですが、株式と同じように証券取引所でリアルタイムに売買できるのが特徴です。
仮想通貨ETFは、ビットコインなどの暗号資産の価格に連動することを目指すETFです。
例えばビットコインETFを購入すると、投資家自身がビットコインを直接保有しなくても、ビットコイン価格の値動きに投資できます。
米国では2024年1月、証券取引委員会のSECが複数のビットコイン現物型ETPについて、取引所への上場と売買を承認しました。米国では厳密にはETFではなくETPと分類される商品もありますが、日本では一般に「ビットコイン現物ETF」と呼ばれています。
直接ビットコインを購入する場合、通常は暗号資産取引所に口座を開設し、日本円を入金してビットコインを購入します。
自分のウォレットへ移す場合には、「秘密鍵」や「シードフレーズ」と呼ばれる重要な情報も管理しなければなりません。
秘密鍵とは、暗号資産を動かすためのパスワードのようなものです。紛失すると資産を取り出せなくなる可能性があり、第三者に盗まれると暗号資産を送金される危険があります。
一方、国内上場の仮想通貨ETFが実現すれば、通常の証券口座から株式やETFと同じように注文できる可能性があります。
投資家が自分でウォレットや秘密鍵を管理する必要はありません。暗号資産の保管は、ETFの運用会社や委託先のカストディアンと呼ばれる専門事業者が担当します。
これは投資初心者にとって非常に大きなメリットです。
ただし、ハッキングの危険が完全になくなるわけではありません。投資家個人が秘密鍵を管理するリスクが、運用会社や資産保管会社の管理リスクに置き換わると考えるのが正確です。
金融商品の仕組みを利用することで、個人が背負う管理負担を大幅に減らせる点が、仮想通貨ETFの価値だといえるでしょう。
仮想通貨ETFが解決してくれる3つのハードル
私は個人的に、仮想通貨ETFの国内解禁に期待しています。
仮想通貨への投資には可能性がある一方、初心者にとっては始めにくい要素がいくつもあるからです。
1.仮想通貨取引所へ口座を開設する必要がない
現在、ビットコインなどを直接購入するには、基本的に暗号資産取引所の口座が必要です。
本人確認を行い、銀行口座から入金し、販売所と取引所の違いを理解したうえで注文します。
特に初心者は、「販売所」と「取引所」の違いで戸惑いやすいでしょう。
販売所では事業者を相手に簡単に売買できますが、購入価格と売却価格の差であるスプレッドが広くなる場合があります。取引所では利用者同士が売買するため、注文方法について一定の理解が必要です。
仮想通貨ETFなら、普段使っている証券口座から売買できる可能性があります。
すでにNISAや投資信託のために証券口座を持っている人にとっては、新しいサービスの操作方法を一から覚える負担が減ります。
2.ウォレットや秘密鍵を自分で管理しなくてよい
暗号資産には、銀行預金や一般的な証券口座とは異なる管理方法があります。
取引所へ預けたままにする方法もありますが、取引所の経営破綻や不正アクセスを心配して、自分のウォレットで保管する人もいます。
ところが自己管理には、秘密鍵の紛失や誤送金など、別のリスクがあります。
送金先のアドレスを間違えても、銀行振込のように簡単に取り消せるとは限りません。
仮想通貨ETFでは、このような技術的な管理を投資家自身が行わなくて済みます。
「仮想通貨の値動きには投資したいが、ウォレットは管理したくない」という人には、非常に相性のよい商品です。
3.税金の計算が分かりやすくなる可能性がある
現在の日本では、個人が暗号資産取引で得た利益は、原則として雑所得に分類されます。
給与などの所得と合算して税額を計算する総合課税の対象となり、所得が多い人では住民税と合わせた税率が最大55%程度になる場合があります。
これに対し、2026年度税制改正大綱では、金商法などの改正を前提として、一定の暗号資産取引を20%の分離課税へ移行する方針が示されました。
所得税15%、住民税5%の合計20%で、株式や投資信託に近い仕組みです。対象となる暗号資産取引の損失については、一定の条件のもとで3年間の繰越控除を認める方針も示されています。
さらに、暗号資産ETFについても、投資信託に関する政令の改正を前提に分離課税の対象とする方向です。
ただし、税制改正大綱に記載されたからといって、すでに新税制が利用できるわけではありません。
金商法改正や関連する政令の整備、施行時期の確定が必要です。改正金商法の施行日の翌年1月以降に、新しい税制を適用する仕組みが想定されています。
また、国内の仮想通貨ETFがNISAの成長投資枠に入るかどうかも、現時点では確定していません。
「ETFだから自動的にNISAで買える」とは限らないため、制度の詳細を待つ必要があります。
SBIなど金融機関も商品開発へ、日本の市場はどう変わる?
制度改正を見越して、金融業界も準備を進めています。
SBIホールディングスは決算説明資料で、東証上場を想定した暗号資産ETFの商品案を公表しています。
その一例が、ビットコインとXRPを組み合わせる「SBI・ビットコイン/XRP ETF」です。
資料では、ビットコインを51%以上、XRPを49%以下とする商品案や、海外の暗号資産ETFへ投資する国内公募投資信託の構想も示されています。あくまで商品案であり、実際の設定や上場が決定したわけではありませんが、金融機関が具体的な準備を進めていることが分かります。
日本取引所グループでも、制度整備を前提に仮想通貨ETFや関連する先物商品の上場が検討されています。
こうした動きが進めば、暗号資産投資は「一部の詳しい人が取引所で購入するもの」から、「一般の投資家が証券口座で保有する金融商品」へと変化するかもしれません。
金融庁の資料によると、2025年1月末時点で国内の暗号資産交換業者に開設された口座は延べ1,200万口座を超え、利用者の預託資産残高は5兆円以上に達していました。
投資経験者の暗号資産保有率は約7.3%とされ、すでに一部の特殊な投資家だけの市場ではなくなりつつあります。
暗号資産を金商法の対象に移す狙いは、単にETFを発売することだけではありません。
金融庁の検討では、投資運用や助言を行う事業者への規制、広告や情報提供のルール、不公正取引への対応、詐欺的な勧誘からの利用者保護なども論点となっています。
海外でビットコインETFなどが広がり、個人だけでなく機関投資家も暗号資産へ投資するようになったため、価格形成や取引の公正性を守る必要が高まっているのです。
仮想通貨ETFの解禁は、「国が仮想通貨の値上がりを保証する」という意味ではありません。
投資家がより安全で分かりやすい仕組みを通じて投資できるよう、金融商品としてのルールを整える動きだと理解するべきでしょう。
初心者はどう使う?コア・サテライト戦略で数%から考える
仮想通貨ETFが解禁されたとしても、資産の大部分を仮想通貨へ投資することはおすすめできません。
ビットコインなどの暗号資産は、大きな成長が期待される一方、価格変動も非常に大きい資産です。
米国の金融商品に関する開示資料でも、ビットコインに連動する商品は伝統的な金融商品より値動きが大きくなりやすく、短期間に大幅な損失が発生する可能性が指摘されています。
そこで考えたいのが「コア・サテライト戦略」です。
コア・サテライト戦略とは、資産の中心部分を安定した長期運用向けの商品で構成し、一部だけを値上がりが期待できる資産へ振り向ける方法です。
例えば、資産全体の90~95%を全世界株式などの低コストなインデックスファンドや現金・債券で構成し、残りの5~10%をサテライト枠として運用します。
仮想通貨ETFを利用するなら、そのサテライト枠のさらに一部として、資産全体の1~5%程度から検討する方法が考えられます。
仮に総資産が1,000万円なら、1%は10万円、3%は30万円、5%は50万円です。
価格が半分になった場合でも、資産全体の3%しか保有していなければ、資産全体への影響は約1.5%に抑えられます。
反対に仮想通貨が大きく成長すれば、少額であってもポートフォリオ全体のリターンを押し上げる可能性があります。
もちろん、適切な割合は年齢、収入、家族構成、投資経験、リスク許容度によって異なります。
投資初心者は、次の順番を崩さないことが大切です。
まず、数カ月から2年程度の生活費を生活防衛資金として確保します。
次に、NISAなどを活用し、全世界株式やバランスファンドのような分散された商品を資産形成の中心にします。
そのうえで価格が大きく下落しても生活や将来設計に影響しない金額だけを、仮想通貨ETFへ振り向けます。
ETFになって購入方法が簡単になっても、ビットコインそのものの価格変動が小さくなるわけではありません。
また、商品が登場した際には、次の点を確認する必要があります。
- ビットコインなどの現物を保有する商品か、先物を利用する商品か
- 信託報酬や売買手数料はいくらか
- 対象となる暗号資産は何か
- 基準価額と市場価格の差が大きくないか
- 資産の保管をどの事業者が担当するか
- NISAの対象になるか
- 税制上どのように扱われるか
特に信託報酬は、保有している間、継続的に差し引かれるコストです。
同じビットコイン価格への連動を目指す商品でも、コストや運用方法によって長期的な成績に差が出ます。「有名な会社の商品だから」という理由だけで選ばず、複数の商品を比較することが重要です。
まとめ:仮想通貨ETFは投資のハードルを下げるが、主役ではなくサテライト枠で
片山金融相が国内解禁への意欲を改めて示したことで、日本の仮想通貨ETFは実現に向けて一歩前進したと考えられます。
金商法改正案は衆議院を通過し、現在は参議院で審議されています。税制についても、一定の暗号資産取引や暗号資産ETFを20%の分離課税とする方針が示されました。
SBIなどの金融機関も具体的な商品案を公表しており、制度が整えば、日本の証券口座から仮想通貨ETFを購入できる時代が訪れる可能性があります。
私は、仮想通貨ETFの国内解禁を歓迎しています。
仮想通貨取引所への口座開設、ウォレットや秘密鍵の管理、複雑な損益計算や税制といったハードルを下げ、一般の投資家が暗号資産へアクセスしやすくなるからです。
ただし、ETFはビットコインなどの価格下落を防いでくれる商品ではありません。
投資方法が便利になっても、暗号資産の価格変動リスクは残ります。資産形成の中心は、全世界株式などに幅広く分散された低コストのインデックスファンドとし、仮想通貨ETFはコア・サテライト戦略のサテライト枠として考えるのが現実的でしょう。
資産全体の数%程度であれば、大幅な下落が起きた場合の影響を限定しながら、暗号資産市場の成長に参加できます。
仮想通貨ETFは、資産形成のすべてを任せる「主役」ではありません。
しかし、これまで技術や税金の難しさから仮想通貨投資を避けていた人にとっては、新しい選択肢になり得ます。
今後は、金商法改正案の成立時期、ETFの上場基準、20%分離課税の開始時期、NISA対象の可否、各社の商品内容に注目していきましょう。
※本記事は2026年7月12日時点の公表情報を基に作成しています。法案、税制、ETFの商品案は今後変更される可能性があります。本記事は特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。
