投資初心者向け解説:銀行が注目する「ステーブルコイン」とは?手数料0.01ドルの送金革命

投資ニュース解説

今日は、私たちの生活やお金の未来を大きく変えるかもしれない、非常に重要なニュースについてお話ししたいと思います。

なんと、アメリカの著名な銀行であるシティグループやJPモルガン・チェースといった金融界の巨人たちが、「ステーブルコイン」というデジタル通貨の事業へ本格的に参入すると表明したのです。

米銀がステーブルコインに参入 手数料0.01ドルの衝撃、本業に危機 - 日本経済新聞
【ニューヨーク=三島大地】米大手銀が相次ぎステーブルコインへの参入を表明している。規制をまとめた「GENIUS(ジーニアス)法」の成立で、米政府や監督当局は普及に向けた動きを加速する。送金手数料がわずか0.01ドルと、その数十倍の費用を取っ...

「銀行が仮想通貨を扱うのは少し怖い」

「そもそもステーブルコインとは何だろう?」

そう思われるかもしれませんね。そのお気持ちは、とてもよく分かります。これまで銀行は、ビットコインのような仮想通貨に対して、どちらかといえば慎重な姿勢を示してきましたからね。

それなのに、なぜここにきて突然、方針を転換し「参入します」と発表したのでしょうか。

実はその裏には、銀行の”本業”が根底から揺らぐほどの、大きな危機感があるのです。そして、この変化の波は、銀行だけでなく、私たちのお金のやり取りや、将来の資産形成にも、非常に大きな影響を与えそうなのです。

この記事では、

  • そもそも「ステーブルコイン」とは何か、ビットコインとどう違うのか
  • なぜ銀行はそれほど焦っているのか
  • このニュースによって、私たちの生活や投資はどのように変わっていくのか

という点について、専門用語をできるだけ使わずに分かりやすく解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。これは、知っておいて損はない情報です。

そもそも「ステーブルコイン」とは?ビットコインと何が違うのでしょうか?

それではまず、今回の主役である「ステーブルコイン」について、理解を深めていきましょう。

「仮想通貨」と聞くと、多くの方がビットコインを思い浮かべるのではないでしょうか。1日で価格が大きく変動することもあり、まるでジェットコースターのようで、「利益が出るかもしれないが、リスクが高い」というイメージがありますね。

しかし、ステーブルコインは、その正反対の存在と言えます。

名前の通り、「ステーブル(Stable)」=「安定した」コインであり、米ドルや円といった、私たちが普段利用しているお金(法定通貨)の価値に対して価格が安定しているのです。

例えば、代表的なステーブルコインである「USDT」や「USDC」は、「1コイン ≒ 1米ドル」となるように設計されています。つまり、ビットコインのように価格が激しく上下することがほとんどありません。

「なぜそのようなことが可能なのか?」と疑問に思われるかもしれません。その秘密は「裏付け資産」にあります。

ステーブルコインを発行している会社は、コインを1枚発行するごとに、その価値を保証するための「1ドル」を、実際に銀行口座などで保管しています。そのため、いつでも「1コイン」を「1ドル」に交換することが可能です。この信頼性が、価値の安定につながっているというわけです。

身近なもので例えるなら、交通系ICカードやギフト券などに近いかもしれません。私たちが1000円をチャージすると、そのカードには「1000円分の価値」が記録され、1000円分のお買い物に利用できます。ステーブルコインも、そのようなイメージで捉えると分かりやすいでしょう。

まとめると、以下のようになります。

  • ビットコイン:価値の裏付けがなく、需要と供給によって価格が大きく変動します。ハイリスク・ハイリターンな投資対象です。
  • ステーブルコイン:ドルなどの法定通貨に裏付けられており、価格が安定しています。決済や送金に利用しやすいのが特徴です。

この「価格が安定していて、送金や決済に使いやすい」という特徴が、今回のニュースを理解する上で非常に重要なポイントとなります。

衝撃!手数料0.01ドルの破壊力。銀行の収益モデルが終わる日

さて、ステーブルコインがどのようなものかお分かりいただけたところで、本題に入りましょう。なぜ銀行は、このステーブルコインに参入しなければならないと焦っているのでしょうか。

その答えは、ただ一つ。「手数料」にあります。

特に、国境を越える「国際送金」の手数料は、これまで銀行にとって非常に大きな収益源でした。

例えば、皆さんが海外の友人に、日本の銀行から10万円を送金するとします。その場合、送金手数料や為替手数料などが発生し、時には送金額の10%以上、つまり1万円を超える手数料がかかることもありました。時間も数日かかることが多く、「高くて、遅い」のが当たり前だったのです。

しかし、これをステーブルコインで送金した場合はどうなるでしょうか。

ニュースによると、その手数料は、わずか0.01ドルです。

もう一度お伝えします。0.01ドルです。

現在の為替レートで日本円に換算すると、約1.5円です。

1万円以上かかっていたものが、たった1.5円になるのです。しかも、送金は数分で完了します。どちらが便利かは、比べるまでもありませんね。

これは、銀行にとって深刻な事態です。これまで独占してきた「国際送金」という年間約2.6京円にも上る巨大な市場を、フィンテック企業に奪われかねない状況なのです。

さらに、この影響は国際送金だけにとどまりません。ステーブルコインでの買い物が一般的になれば、クレジットカードの決済手数料ビジネスも同様の脅威にさらされます。

今まで「手間がかかっても、銀行を通すしかない」と考えられていたお金の流れが、ステーブルコインによって迂回されてしまうのです。この「中抜き」の恐怖が、銀行を動かした最大の理由と言えるでしょう。「このままでは事業が成り立たなくなる」という、強い危機感が感じられます。

なぜ今?銀行を動かした法律「GENIUS(ジーニアス)法」

「それほど優れた技術であれば、なぜ銀行はもっと早くから取り組まなかったのか?」

はい、それは良い質問ですね。実は、銀行もステーブルコインの潜在能力には、以前から気づいていたはずです。しかし、どうしても参入できない大きな理由がありました。それは、明確なルールが存在しなかったからです。

これまでのステーブルコインの世界は、法整備が追いついておらず、いわば「無法地帯」に近い状態でした。誰が発行してもよく、本当に裏付け資産を保有しているのかを検証する仕組みも曖昧でした。

信用を第一とする銀行にとって、そのような不透明な世界に足を踏み入れることは、リスクが高すぎました。万が一、問題が発生すれば、銀行全体の信用問題に発展しかねません。

しかし、その状況を大きく変える出来事が起こりました。それが、ニュースにも登場した「GENIUS(ジーニアス)法」の成立です。

これは、アメリカでステーブルコインを発行するための、いわば「公式な交通ルール」なのです。この法律によって、

  • 誰が発行できるのか(当局から認可を受けた事業者のみ)
  • 価値の裏付けはどうするのか(発行額と同額の安全な資産を保有する義務)

といったルールが、明確に定められました。

これまで整備されていなかった道路に、信号や横断歩道が設置され、安全に通行できるようになった、というイメージです。

これには、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備理事会)の高官も、「ジーニアス法の成立により、ステーブルコインは議論の最前線に登場した。伝統的な銀行システムにとって重要な意味とチャンスがある」と、その重要性を認めています。

国が「このルールに従えば、安全にビジネスを展開してよい」というお墨付きを与えたのです。これであれば、慎重な銀行も安心して参入できるわけです。これが、銀行が一斉に動き出した大きなきっかけなのです。

未来予測!私たちの生活と投資はどう変わるのでしょうか?

では最後に、この大きな変化の波が、私たちの生活や投資にどのような影響を与えるのか、未来を少し予測してみましょう。

生活への影響:海外がもっと身近になります

まず間違いなく変わるのは、海外との金銭的な距離でしょう。

  • 海外送金:海外で学ぶ子供への仕送りや、海外の友人への送金が、メッセージを送るくらい気軽に、そして低コストでできるようになるでしょう。
  • 海外通販:海外のオンラインショップで買い物をする際も、複雑なクレジットカード情報の入力や、高い為替手数料を気にする必要がなくなるかもしれません。
  • 国際的な決済:日本を訪れた外国人観光客が自国のステーブルコインで支払いをしたり、私たちが海外旅行でスマートフォン一つで簡単に決済したりすることが当たり前になるかもしれません。

将来的には、クレジットカードの役割の一部が、ステーブルコインに代替される可能性も考えられます。

銀行の未来:変革を迫られる金融機関

銀行は、単にお金を預かり送金するだけの中間業者ではいられなくなります。フィンテック企業と競争したり、あるいは協力したりしながら、新しいビジネスを創出していく必要に迫られるでしょう。

例えば、ニュースでシティグループが言及していたように、ステーブルコインの裏付け資産を管理する「カストディ」業務や、法人向けの新しい決済サービスなどが、銀行の新たな収益源になっていく可能性があります。私たち利用者にとっては、銀行間の競争が激化することで、より便利で安価なサービスが生まれるというメリットが生まれるかもしれません。

投資家としての視点:新しいチャンスの波に乗るには

この金融革命は、投資家にとっても大きなチャンスの種を秘めています。

もちろん、ステーブルコイン自体は価格が安定しているため、直接的な値上がり益を狙う投資対象にはなりにくいです。しかし、この変化の中心にいる企業や技術に目を向けることで、リターンを得られる可能性があります。

  • 関連企業への投資:ステーブルコインの発行や管理、ブロックチェーン技術を開発している企業の株式。
  • 金融セクターの変化:この変革にうまく適応し、新しいサービスを生み出せる銀行や金融機関。
  • 仮想通貨市場全体への影響:ステーブルコインが普及することで、仮想通貨市場全体の信頼性が向上し、ビットコインなど他の仮想通貨への資金流入が加速する可能性。

もちろん、新しい技術にはリスクも伴いますので、十分な情報収集を行い、ご自身で納得した上で投資判断をすることが大切です。しかし、この歴史的な変化の波を見逃すことはできないでしょう。

今日のまとめ:金融革命の始まりを見逃さないようにしましょう

さて、今日は米大手銀行のステーブルコイン参入というニュースを一緒に見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

最後に、今日のポイントを簡単におさらいしておきましょう。

  • 米大手銀行が本格参入:シティやJPモルガンが、低手数料の「ステーブルコイン」事業への参入を表明しました。
  • ステーブルコインとは:米ドルなどと価値が連動した、価格が安定しているデジタル通貨です。
  • 手数料が革命的:国際送金が約1.5円(0.01ドル)になる可能性があり、既存の銀行のビジネスモデルを覆すほどのインパクトがあります。
  • 「GENIUS法」が後押し:法律が整備されたことで、銀行も安心して参入できる環境が整いました。
  • 未来はこう変わる:私たちの海外送金や買い物がより便利になり、投資家にとっても新しいチャンスが生まれます。

今回のニュースは、単に「銀行が新しい事業を始めた」という話ではありません。これは、インターネットが情報のやり取りを根本から変えたように、ブロックチェーン技術がお金のやり取りを根本から変えようとしている、その始まりの合図なのです。

銀行という巨大な存在が、自らのビジネスモデルを破壊しかねない技術に、自ら参入せざるを得ない。それほど大きな地殻変動が金融業界で起きているということです。

投資初心者の皆さんにとって、このような大きな変化の流れを掴んでおくことは、将来の資産を築く上で非常に重要です。これからも、難しい金融ニュースの裏側を、ぼくと一緒に読み解いていきましょう。

それでは、また次の記事でお会いしましょう。

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