【インデックス投資の教科書㉑】投資信託って何?インデックスファンドとの関係をスッキリ解説

インデックス投資の教科書

前回は、長期投資の強力な味方である「複利」の力について、その仕組みと重要性をお話ししました。時間を味方につけることが、資産を雪だるま式に増やす鍵でしたね。

さて、この連載ではこれまで、「インデックスファンド」という言葉を何度も使ってきました。例えば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のような具体的な商品名も挙げましたね。これらはインデックス投資を行う上で中心的な役割を果たす金融商品です。

ところで、この「インデックスファンド」とは、そもそもどのような仕組みの商品なのでしょうか? 実は、「インデックスファンド」は、「投資信託」と呼ばれる大きなカテゴリーの中の一種なのです。

今回は、インデックス投資の「乗り物」とも言える、この「投資信託」の基本的な仕組みと、その中でも特に重要な「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の違いについて、改めて分かりやすく解説していきます。

投資信託の基本的な仕組み:「みんなでお金を出し合ってプロに運用をお任せ」

投資信託(ファンドとも呼ばれます)とは、一言でいうと、「たくさんの投資家から少しずつお金を集めて、それをひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家(プロ)が株式や債券などに投資・運用してくれる金融商品」のことです。

その仕組みは、おおよそ以下のようになっています。

  1. まず、証券会社や銀行といった「販売会社」を通じて、私たち投資家が投資信託を購入します(お金を払います)。
  2. 私たちから集められたお金は、「信託銀行」というところで、ひとつの大きな資金(信託財産)として、安全に保管・管理されます。これは、運用を行う会社の資産とは明確に分けて管理されるため、万が一運用会社や販売会社が破綻しても、私たちのお金は守られる仕組みになっています。
  3. 次に、「運用会社」にいる運用の専門家(ファンドマネージャーと呼ばれます)が、どの株式や債券に、いつ、どれくらい投資するか、といった具体的な運用方針を決定し、信託銀行に対して運用の指示を出します。
  4. 運用によって利益が出たり、損失が出たりした場合、その成果は、私たち投資家が保有している投資信託の口数(持ち分)に応じて、公平に還元(分配)されます。投資信託の値段である「基準価額」が日々変動するのは、この運用成果を反映しているからです。

この仕組みの最大のメリットは、私たち個人投資家が、少額の資金(例えば、ネット証券なら100円からでも可能です)で、

  • 本来なら多額の資金が必要となるような、多数の株式や債券への「分散投資」
  • 専門的な知識や経験を持つプロによる「運用」

を手軽に利用できる点にあります。まさに、投資の初心者や、忙しくて自分で運用する時間がない人にとって、非常に便利な「乗り物」と言えるでしょう。

投資信託を支える「登場人物」たち

投資信託という「乗り物」がスムーズに運行するためには、いくつかの組織がそれぞれの役割を担って協力しています。主な登場人物は以下の3者です。

  1. 販売会社 私たち投資家にとって一番身近な存在です。投資信託を購入したり、換金(売却)したりする際の窓口となります。また、運用状況に関するレポートを提供したり、分配金を支払ったりする役割も担います。証券会社や銀行、郵便局などがこれにあたります。
  2. 運用会社(委託会社とも呼ばれます) 投資信託の「設計者」であり「運転手」です。どのような目的で、どのような資産に投資するのか、という投資信託の基本的な方針(運用戦略)を決め、実際に信託銀行に対して運用の指示を出します。「〇〇アセットマネジメント」や「〇〇投信」といった名前の会社が多いですね。
  3. 信託銀行(受託会社とも呼ばれます) 投資家から集めた大切なお金(信託財産)を、運用会社の資産とは別に、安全に保管・管理する「金庫番」の役割を果たします。運用会社の指示に基づいて、株式や債券の売買決済なども行います。

この3者がそれぞれの専門分野で役割分担し、連携することで、投資信託は成り立っているのです。

大きく分けて2種類!「インデックスファンド」と「アクティブファンド」

さて、投資信託には非常にたくさんの種類がありますが、その運用方針によって、大きく二つのタイプに分類することができます。これが、この連載のテーマとも深く関わる、「インデックスファンド」と「アクティブファンド」です。

  1. インデックスファンド これは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、米国のS&P500といった、特定の市場指数(ベンチマーク)の値動きに連動する運用成果を目指すタイプの投資信託です。市場全体の平均的な動きについていくことを目標とし、特別な銘柄分析などは行わないため、一般的に運用コスト(信託報酬)が低く抑えられています。この連載で主に取り上げているのは、こちらのタイプです。分かりやすく、手間がかからず、低コストである点が魅力です。
  2. アクティブファンド こちらは、市場指数(ベンチマーク)を上回る運用成果、つまり「市場平均以上のリターン」を獲得することを目指すタイプの投資信託です。ファンドマネージャーが、独自の調査や分析、経験に基づいて、「これは有望だ!」と判断した銘柄を選び出したり、市場の状況に合わせて売買のタイミングを計ったりと、積極的に運用を行います。より高いリターンを狙う分、調査費用や人件費などがかかるため、一般的に運用コスト(信託報酬)はインデックスファンドよりも高くなる傾向があります。

どちらのタイプが良いかは、一概には言えません。市場平均並みのリターンで満足でき、コストを抑えたいならインデックスファンド、市場平均以上のリターンを(コストを払ってでも)狙いたいならアクティブファンド、という選択になります。(ただし、アクティブファンドが必ずしもインデックスファンドより良い成績を上げられるとは限りません。むしろ長期的に見ると、多くのアクティブファンドは市場平均に負けている、というデータも存在します。)

まとめ:投資信託を理解して、自分に合った選択を

今回は、インデックス投資で中心的な役割を果たす「投資信託」について、その基本的な仕組みや種類を解説しました。

  • 投資信託とは:多くの人からお金を集め、プロが運用してくれる金融商品。少額から分散投資が可能。
  • 仕組み:販売会社、運用会社、信託銀行が連携して運営される。
  • 主な種類:運用方針により「インデックスファンド(市場平均を目指す、低コスト)」と「アクティブファンド(市場平均超を目指す、高コスト傾向)」に大別される。

投資信託は、私たち個人投資家が、手間や専門知識の壁を乗り越えて、効果的な資産形成を行うための、非常に便利で有効なツールです。

特に、インデックスファンドとアクティブファンドの違いを理解することは、あなたの投資方針に合った商品を選ぶ上で非常に重要になります。

さて、投資信託の基本が分かったところで、次回は、数多く存在するインデックスファンドの中から、具体的にどのような点に注目して選べば良いのか、その選び方のポイントについて詳しく見ていきましょう。

次回の第22回は、「インデックスファンドの選び方:信託報酬、純資産残高、運用実績」と題して、賢いファンド選びのための実践的なヒントをお届けします。お楽しみに!

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