「5年後、あなたの持っているビットコインの価値がゼロになるかもしれない…」
もしこんな話を聞いたら、ドキッとしてしまいますよね。2025年9月、仮想通貨「ソラナ（SOL）」の共同創設者であるアナトリー・ヤコベンコ氏が、まさにそんな衝撃的な警告を発し、投資家の間で大きな話題となっています。
ヤコベンコ氏は、有名なポッドキャスト番組で「今から5年以内に、量子コンピュータがビットコインの暗号技術を突破する可能性は50/50（五分五分）だ」と発言したのです。
「量子コンピュータって、なんだか難しそう…」「自分のビットコインは大丈夫なの？」と不安に思った方も多いのではないでしょうか。特に投資を始めたばかりの方にとっては、SF映画のような話に聞こえるかもしれません。
この記事では、投資初心者の方にもこのニュースがスッと理解できるように、以下の点をじっくり解説していきます。
- そもそも「量子コンピュータ」って何がすごいの？
- なぜ専門家の間でも意見が真っ二つに割れているの？
- 結局、私たち投資家はどう考え、どう行動すればいいの？
結論から言うと、「過度に怖がる必要はないけれど、未来への準備は大切」というのが、この記事でお伝えしたいメッセージです。この記事を読めば、今回のニュースの背景が分かり、冷静な視点で仮想通貨投資と向き合えるようになりますよ。それでは、一緒に見ていきましょう！
そもそも「量子コンピュータ」って何がすごいの？ビットコインが狙われる理由
「量子コンピュータ」と聞くと、なんだかすごく賢いスーパーコンピュータの進化版、というイメージを持つかもしれませんね。その認識は、半分正解で半分間違いです！まずは、この未来のコンピュータの正体から探っていきましょう。
従来のコンピュータと量子コンピュータ、何が違うの？
すごく簡単に例えるなら、こんな違いがあります。
- 従来のコンピュータ（スパコン含む）：一本道の迷路を、超高速で一つずつ試していく秀才
- どんなに複雑な計算も、一つ一つの手順を驚異的なスピードでこなして答えにたどり着きます。でも、基本的には「AがダメならB、BがダメならC」と、順番に試すことしかできません。
- 量子コンピュータ：無数の分身を作って、迷路の全ての道を“同時”に試せる超人
- 「量子」という不思議な世界の性質を利用して、0であり1でもある「重ね合わせ」という状態を作れます。これにより、膨大な計算を並列で一気に行うことができてしまうんです。
この「同時にたくさんの計算ができる」という特性が、ビットコインにとって脅威になると言われています。
なぜビットコインの「暗号」が狙われるのか？
ビットコインをはじめとする仮想通貨は、非常に強力な「暗号技術」によって守られています。このおかげで、私たちは安全にコインを送ったり受け取ったりできるわけです。この安全神話の中心にあるのが「公開鍵暗号」という仕組みです。
ここで、少し専門用語が出てきますが、金庫と鍵に例えると分かりやすいですよ。
- 公開鍵暗号とは？
- 公開鍵（みんなに公開する鍵）：あなたの「銀行口座番号」のようなものです。誰かがあなたにビットコインを送りたい時、この公開鍵（ビットコインアドレス）を使います。誰に見られても大丈夫な鍵です。
- 秘密鍵（自分だけが持つ鍵）：あなたの「銀行口座の暗証番号」です。この秘密鍵を持っている人だけが、その口座からビットコインを送金できます。絶対に他人に知られてはいけない、一番大切な鍵です。
現在の暗号技術のすごいところは、「公開鍵から秘密鍵を特定するのは、事実上不可能」という点にあります。これは、巨大な数字の「素因数分解」という計算が、現在のどんなスーパーコンピュータを使っても、天文学的な時間がかかってしまうことを利用しているからです。
【簡単解説：素因数分解】 例えば、「15」という数字は「3 × 5」に分解できますよね。これが素因数分解です。数字が小さいと簡単ですが、「290,832,983,471」のような巨大な数字を素因数分解するのは、とてつもなく大変なんです。ビットコインの暗号は、これよりも遥かに、遥かに巨大な数字を使っています。
しかし、量子コンピュータはこの「素因数分解」が大得意なんです！ 従来のコンピュータが何億年もかかるような計算を、わずか数時間や数分で解いてしまう可能性があると言われています。もし本当にそんな強力な量子コンピュータが完成すれば、誰かの公開鍵から秘密鍵を計算で割り出し、いとも簡単にビットコインを盗めてしまう…これが「量子コンピュータがビットコインの脅威」と言われる最大の理由なのです。
【補足：ビットコインを守る2つの暗号技術】
- 楕円曲線署名（ECDSA）：主に送金時の本人確認（デジタル署名）に使われる技術。量子コンピュータに破られると、秘密鍵がバレて資産が盗まれるリスクがあります。
- セキュアハッシュアルゴリズム（SHA-256）：取引データなどを特定の長さの文字列（ハッシュ値）に変換する技術。こちらは比較的、量子コンピュータへの耐性が強いと考えられていますが、万全ではありません。
このように、量子コンピュータは、現在の仮想通貨の安全性を根底から覆しかねない、とてつもないパワーを秘めているんですね。
専門家の意見は真っ二つ！「すぐそこにある危機」派 vs 「まだまだ先の話」派
さて、量子コンピュータがとてつもないパワーを秘めていることは分かりました。では、ソラナのヤコベンコ氏が言うように、その脅威は「5年以内」というすぐそこまで迫っているのでしょうか？
実はこれ、専門家の間でも意見が真っ二つに割れていて、大激論が巻き起こっているんです！それぞれの意見を見てみましょう。
「すぐそこにある危機だ！」と警告する専門家たち
今回のニュースの中心人物であるアナトリー・ヤコベンコ氏を筆頭に、脅威の緊急性を訴える声は少なくありません。
- アナトリー・ヤコベンコ氏（ソラナ共同創設者）
- 「5年以内にビットコインの暗号を突破する可能性は50/50」。
- その理由として、AIの進化が量子コンピュータの研究開発を驚異的に加速させている点を挙げています。「研究論文が出てから実装されるまでのスピードが異常に速くなっている」と彼は語ります。
- クレイグ・ギドニー氏（Googleの量子AI研究者）
- ヤコベンコ氏と同様に、ビットコインのセキュリティリスクが増大していると指摘。
- デービッド・カルバーロ氏（Naoris Protocol創設者）
- 「量子コンピュータは非常に進歩しており、5年以内にビットコインの暗号を解読できる可能性がある」と述べています。
- チャールズ・エドワーズ氏（Capriole Investments創設者）
- 「5〜10年以内に量子脅威が現実化する可能性は約50%」と、より具体的な数字を挙げています。
彼らの主張の根底にあるのは、「AIをはじめとする技術の進歩が、私たちの予想をはるかに超えるスピードで量子コンピュータを実用レベルに押し上げるかもしれない」という強い危機感です。GoogleやAppleといった巨大IT企業が、すでに自社のサービスに量子耐性のある暗号技術を導入し始めていることも、その緊急性を物語っていると彼らは主張します。
「いやいや、大げさだよ」と冷静な専門家たち
一方で、「その脅威は誇張されすぎている」と考える専門家もたくさんいます。
- アダム・バック氏（Blockstream社CEO）
- ビットコイン開発の第一人者である彼は、「現在の量子技術はビットコインの脅威とはなり得ない」と断言。脅威が現実的になるのは、少なくとも20年後だと予測しています。
- ピーター・トッド氏（Bitcoin Core貢献者）
- 彼もまた、ビットコインの暗号（ECDSA）を解読できる実用的な量子コンピュータの実現は「まだ遠い先の話」だと見ています。
- マイケル・セイラー氏（マイクロストラテジー社会長）
- 世界有数のビットコイン保有企業のトップである彼は、もっと辛口です。「量子リスクは誇張されている。それよりも、フィッシング詐欺のような、もっと身近な脅威の方が深刻な問題だ」と述べている。
懐疑派の専門家たちがそう主張するのには、ちゃんとした理由があります。彼らが指摘するのは、主に量子コンピュータが抱える技術的なハードルの高さです。例えば、計算の基本単位である「量子ビット」は非常にデリケートで、ちょっとしたノイズでもすぐにエラーを起こしてしまいます。このエラーを修正する技術がまだ確立されておらず、ビットコインの暗号を破るのに必要な、安定した数百万規模の量子ビットを持つマシンを作るのは、とてつもなく難しいのです。
このように、専門家の間でも意見は真っ二つ。どちらの意見も、それぞれの立場からの確かな根拠に基づいています。私たち投資家としては、どちらか一方を鵜呑みにするのではなく、両方の視点があることを理解しておくことが大切ですね。
巨額マネーが動く！量子コンピュータ開発のリアルな最前線
専門家の意見が割れているとはいえ、一つだけ確かなことがあります。それは、世界中の巨大IT企業や国家が、量子コンピュータの開発に莫大な資金と人材を投入し、熾烈な開発競争を繰り広げているという事実です。
その開発スピードは、私たちの想像をはるかに超えるものかもしれません。ニュースで取り上げられている最新の動向を見てみましょう。
ITの巨人たちが本気！MicrosoftとIBMの挑戦
- マイクロソフトの「Majorana 1（マヨラナ・ワン）」
- 2025年2月、マイクロソフトは画期的な量子コンピュータ向けのチップを発表しました。このチップの登場により、「数十年ではなく数年で、産業規模の問題を解決できる量子コンピュータが実現するかもしれない」と同社は述べています。これは、従来の量子ビットよりもエラーに強いとされる新しい技術を使っており、将来的に100万量子ビットまで拡張できる可能性があるそうです。
- IBMの「IBM Quantum Starling」
- IBMも負けていません。2025年6月、同社は2029年までに稼働を目指す新しい耐障害性量子コンピュータの計画を発表しました。これは、現在のマシンの約20,000倍もの計算能力を持つとされ、実現すれば科学や金融の世界に革命をもたらすと言われています。
これらのニュースから分かるのは、量子コンピュータがもはや理論上の存在ではなく、具体的なロードマップのもとで着実に開発が進められているということです。
まだまだ課題も山積み？「量子ビット」の難しさ
ただし、先ほどの懐疑派の意見にもあったように、実用化への道は平坦ではありません。現在の量子コンピュータが抱える最大の課題は、計算の基本単位である「量子ビット」の扱いにくさです。
【簡単解説：量子ビット vs 論理量子ビット】
- 物理量子ビット：実際の量子コンピュータに搭載されている、いわば「素の状態」の量子ビットです。非常に不安定で、ノイズに弱く、頻繁に計算エラーを起こしてしまいます。元気だけど、たまに間違えちゃう新入社員のようなイメージです。
- 論理量子ビット：複数の物理量子ビットを一つのチームのように組み合わせて、お互いのエラーを監視・訂正させることで、安定して計算できるようにしたものです。一人でミスしてもチームでカバーする、頼れるベテランチームのような存在です。
ビットコインの暗号を破るには、エラー訂正が可能な数千個の「論理量子ビット」が必要だと考えられています。しかし、現在の技術では、1つの論理量子ビットを作るために、1,000個以上の物理量子ビットが必要になることもあります。
現在、数百〜数千の「物理量子ビット」を持つマシンは登場していますが、安定した「論理量子ビット」はまだ数個レベル。ここから数千個レベルに到達するには、まだ大きな技術的ブレークスルーが必要なのです。
とはいえ、ヤコベンコ氏が指摘するように、AIによるシミュレーションなどが、このブレークスルーを早める可能性も十分にあります。開発競争は、私たちが思っている以上に速いペースで進んでいるのかもしれません。
【結論】投資家として私たちはどう向き合うべき？3つの心構え
さて、ここまで量子コンピュータのすごさや、専門家の様々な意見、そして開発のリアルな現状を見てきました。情報がたくさんあって、「じゃあ、結局どうすればいいの？」と混乱してしまったかもしれませんね。
ご安心ください。ここからは、私たち投資家がこの問題とどう向き合っていくべきか、具体的な3つの心構えをシンプルにお伝えします。
結論から言うと、「今すぐパニックになってビットコインを売る必要は全くない。しかし、未来のリスクとして頭の片隅に置き、アンテナを高くしておくことが重要」ということです。
心構え①：未来の対策「ポスト量子暗号（PQC）」に注目しよう！
「今の暗号が破られるなら、新しい暗号を作ればいいじゃないか」 まさにその通りで、世界中の暗号研究者たちは、すでに行動を起こしています。それが「ポスト量子暗号（Post-Quantum Cryptography, PQC）」と呼ばれる、未来の暗号技術です。
【簡単解説：ポスト量子暗号（PQC）】 その名の通り、「量子コンピュータ“後”の時代」でも安全に使えるように設計された、新しい暗号アルゴリズムのことです。量子コンピュータが得意とする「素因数分解」とは全く別のアプローチで作られているため、簡単には解読できないとされています。いわば、未来の量子コンピュータにも破られない、次世代の最強の鍵です。
ビットコインなどの仮想通貨は、ソフトウェアを更新する「アップグレード」が可能です。将来的にもし量子コンピュータの脅威が本当に現実のものとなれば、ビットコインのコミュニティは、このPQCのような新しい暗号技術にアップグレードすることで対応するでしょう。
もちろん、世界中のコンピュータを同時にアップグレードするのは簡単なことではありません。しかし、対策技術そのものはすでに研究・開発が進んでいる、という事実は知っておきましょう。
心構え②：情報収集を怠らず、賢い投資家になろう 📚
今回のニュースのように、仮想通貨の世界では、価格を左右する可能性のある情報が日々飛び交っています。大切なのは、一つの情報に振り回されないことです。
- 不安を煽るだけの情報に注意：「ビットコインは終わる！」といったセンセーショナルな見出しだけを信じないようにしましょう。
- 楽観的すぎる情報も疑う：「量子コンピュータなんて絶対無理」とリスクを無視するのも危険です。
今回見てきたように、専門家の間でも意見が分かれる複雑な問題です。「警告派」と「懐疑派」の両方の意見に耳を傾け、なぜ意見が違うのか、その背景まで理解しようと努めることが、賢い投資家への第一歩です。信頼できるニュースサイトや専門家のSNSなどをフォローして、常に最新の正しい情報をキャッチアップする習慣をつけましょう。
心構え③：投資の基本「分散」を忘れない
最後に、これは量子コンピュータの問題に限ったことではありませんが、最も重要な心構えです。それは、投資の基本である「資産の分散」を徹底することです。
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言がありますよね。もし、あなたの全財産がビットコインだけだったら、量子コンピュータのリスクが現実になった時に大きなダメージを受けてしまいます。
仮想通貨だけでなく、株式、債券、不動産など、値動きの異なる様々な資産に分散して投資をしていれば、どれか一つに万が一のことがあっても、他の資産がカバーしてくれます。
量子コンピュータのリスクは、あくまで将来起こるかもしれない数多くのリスクの一つです。どんな未来が来ても慌てないように、日頃からバランスの取れたポートフォリオを組んでおくことが、あなたの資産を守る最強の盾になります。
まとめ：冷静に、そして賢く未来に備えよう
今回は、ソラナ共同創設者の警告をきっかけに、「量子コンピュータは本当にビットコインの脅威なのか？」というテーマを深掘りしてきました。最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 脅威はリアルだが、時期は不明
- 量子コンピュータが完成すれば、現在のビットコインの暗号技術を破る力を持つのは事実です。しかし、その「完成」が5年後なのか、20年以上先なのかは、専門家の間でも意見が真っ二つに分かれています。
- 技術開発は加速している
- MicrosoftやIBMといった巨大企業が巨額の投資を行い、量子コンピュータの開発は着実に進んでいます。特にAIの進化がそのスピードを加速させているという指摘は無視できません。
- 対策も進んでいる
- 脅威に対して、人類も手をこまねいているわけではありません。「ポスト量子暗号（PQC）」という、未来の量子コンピュータにも耐えうる新しい暗号技術の研究が進んでいます。将来的にはビットコインもアップグレードで対応する可能性があります。
- 投資家としての心構え
- 今すぐパニックになる必要はありませんが、リスクは正しく認識しておくべきです。「PQCなどの対策技術に注目し、信頼できる情報源から学び続け、資産を分散させる」という3つの心構えが、あなたの資産を守ることに繋がります。
量子コンピュータの話題は、未来のテクノロジーと今の資産が交差する、非常に興味深いテーマです。SFのような話に聞こえますが、着実に現実に近づいています。過度に恐れるのではなく、正しい知識を身につけ、冷静に動向を追いかけていくこと。それが、これからの時代を生きる投資家にとって、とても大切なスキルになるはずです。
