2025年の日経平均株価は年末に5万339円で取引を終え、2024年末比で26.2%という驚異的な上昇率を記録しました。新NISAをきっかけに投資を始めた方の多くは、「投資って意外とカンタンかも!」と感じているかもしれませんね。
10月には日経平均株価が史上初めて5万円を突破し、11月には5万2,636円という最高値を記録しました。AI関連銘柄を中心に、アドバンテストやソフトバンクグループ、東京エレクトロンなどの半導体株が大きく上昇し、3年連続の大幅上昇となりました。
まさに、投資を始めるには最高のタイミングだったと言えるでしょう。しかし、ここで立ち止まって考えてほしいことがあります。それは「下落への覚悟」です。

今回の記事では、好調な相場が続く今だからこそ知っておきたい、株価下落への備えと心構えについて、投資初心者の皆さんにわかりやすく解説していきます。
相場の歴史が教えてくれる「上昇の後には下落がある」という真実
上がった相場は必ず下がる可能性がある
投資の世界には、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があります。2025年に26%も上昇した日経平均株価ですが、もし同じ割合で下落したらどうなるでしょうか?
計算してみると、5万339円から26%下落すると、約3万7,250円になります。「そんなに下がるわけない」と思われるかもしれませんが、実はこの数字でも2023年末の株価より高いのです。しかし、私たちの心理は不思議なもので、「5万円から大きく下がった」という印象だけが強く残ってしまいます。
これを行動経済学では「参照点の変化」と呼びます。人間は、現在の価格を基準(参照点)として物事を判断するため、客観的には損していなくても、大きな損失と感じてしまうのです。
過去30年間で60%以上の下落が3回も
バブル崩壊後の約30年間で、日経平均株価が60%以上下落したことが3回ありました。つまり、10年に1回程度は大きな調整が起こっているということです。
2025年は、年間の変動幅(最高値と最安値の差)が2万1,844円と、バブル崩壊の影響を受けた1990年の1万9,169円を35年ぶりに更新しました。これは、現代の株式市場がいかにボラティリティ(価格変動)が大きいかを物語っています。
具体的な過去の暴落例を見てみましょう:
リーマンショック(2008年) 世界株式の代表的な指数であるMSCI ACWI Indexは、リーマンショック時に直前の高値から円換算ベースで60%以上下落しました。100万円投資していたら、一時的に40万円程度まで減少してしまったということです。しかも、元の水準に戻るまでに6年以上かかったのです。
このように、歴史を振り返ると、株式市場では30%程度の調整は「よくあること」だということがわかります。
新NISA投資家が特に注意すべき「下落未経験」のリスク
2024年から投資を始めた方は要注意
2024年8月には、日経平均株価が過去最大の下落幅を記録する「日本版ブラックマンデー」が発生しました。新NISAで投資を始めたばかりの初心者の方は、このとき初めて「含み損」を経験したかもしれません。
含み損とは? 含み損とは、保有している株式や投資信託の評価額が、購入時の価格より下回っている状態のことです。実際に売却するまでは損失は確定しませんが、画面上で自分の資産が減っているのを見るのは、精神的に大きなストレスになります。
しかし、2024年8月の下落は比較的短期間で回復しました。その後、11月初めまでの長期上昇局面では、AI・半導体関連銘柄が相場を力強く牽引し、日経平均も11月4日の取引時間中に5万2,636円の高値をつけたため、多くの投資家は「ほっと胸をなでおろした」ことでしょう。
この経験から「下落してもすぐ戻る」と楽観的に考えてしまうのは危険です。過去には、回復に数年かかった例もたくさんあるからです。
心理的な参照点がリセットされている危険性
2024年1月に投資を始めた方にとって、日経平均3万5,000円前後が「スタート地点」でした。しかし今や5万円台が当たり前になっています。この心理的な変化が、実は大きな落とし穴なのです。
もし日経平均が3万7,000円まで下落しても、実際には2024年初めとほぼ同じ水準です。しかし、5万円を見慣れてしまった私たちには「大暴落」に感じられてしまうのです。
下落時に絶対やってはいけない3つの行動
NG行動①:パニック売り(狼狽売り)
株価が下落すると、「もっと下がる前に売ってしまおう」という衝動に駆られます。しかし、これは最もやってはいけない行動の一つです。
積立投資の場合、今後の成長が期待できる資産に投資をしているのであれば、そのまま積立を継続することを検討すべきです。なぜなら、下落している間も積立を続ければ、相対的に安い価格で購入することができ、ドル・コスト平均法により、平均購入単価を下げる効果も期待できるからです。
ドル・コスト平均法とは? 毎月一定額で投資信託を購入する方法です。価格が高いときは少ない口数を、価格が安いときは多くの口数を購入できるため、購入価格が平準化されます。これにより、「高値づかみ」のリスクを減らすことができます。
例えば、毎月3万円ずつ投資信託を購入する場合:
- 1口1万円のとき → 3口購入できる
- 1口5,000円に下落 → 6口購入できる
- 1口1万5,000円に回復 → 2口購入できる
合計11口を購入し、支払総額は9万円なので、平均購入単価は約8,182円になります。もし最初に9万円一括で購入していたら9口しか買えなかったところ、積立投資により2口多く購入できたことになります。
NG行動②:積立投資の停止
「やっぱりNISAは怖い」と積立投資をやめてしまうのも大きな間違いです。
下落相場は、積立投資家にとっては「安値で購入できるチャンス」なのです。暴落時は「安く買えるチャンス」と捉え、焦らず冷静に積み立てを継続する姿勢が大切です。
積立投資を停止してしまうと、以下のようなデメリットがあります:
- 安く買えるチャンスを逃す:下落時こそ多くの口数を購入できる絶好の機会
- 複利効果が薄れる:投資期間が短くなると、複利の効果が十分に発揮されない
- 市場回復時の利益を得られない:停止している間に相場が回復してしまう可能性
NG行動③:含み益を全額利益確定
大きく利益が出ているからといって、全額を売却してしまうのも考えものです。
「売って、買い直し」はNISAの年間投資枠の制限を考えると、できるだけ少なくしたいところです。特に現役世代は、「全額売却した後、市場が回復・上昇に転じた未来」のリターンを取り逃すことになります。
ただし、以下のような場合は、一部売却も選択肢に入ります:
- 大きな含み益が出ていて、かつ投資を終了させてもいい理由がある
- 近い将来、まとまった現金が必要になる予定がある(住宅購入、子供の教育費など)
- リバランス(資産配分の調整)が必要な場合
下落相場でも冷静でいられる3つの準備
準備①:イメージトレーニングをしておく
投資で成功するには、「うまくいったとき」だけでなく、「うまくいかなかったとき」のイメージトレーニングも重要です。
具体的には、こんな質問を自分に投げかけてみましょう:
- 「自分の資産が30%減ったら、どう感じるだろうか?」
- 「その状態が1年続いたら、耐えられるだろうか?」
- 「そのとき、どう行動するべきか?」
このようなシミュレーションをしておくことで、実際に下落が来たときにパニックになりにくくなります。
準備②:長期投資の視点を持つ
過去の株式相場を見ると、暴落が起きても長くて5年、短くて半年から1年で回復し、右肩上がりで成長しています。世界経済は長期的には成長を続けており、それに伴い株式市場も上昇していくと考えられます。
重要なのは、短期的な値動きに一喜一憂しないことです。10年、15年、20年と腰を据えて保有し続けることで、一時的な損失を乗り越え、複利の効果を最大限に活かしながら、資産の成長を目指すことができるのです。
長期投資が有効な理由
- 時間分散効果:投資期間が長いほど、一時的な下落の影響が薄まる
- 複利効果:利益が利益を生む効果が、時間とともに加速度的に増える
- 経済成長の恩恵:世界経済の長期的な成長に乗ることができる
例えば、長期投資は15年以上、積立・分散投資は20年以上続けることで、お金を減らさずに堅実にお金を増やせる可能性は高いというデータもあります。
準備③:生活防衛資金を確保する
投資で失敗する大きな理由の一つが、「生活費が足りなくなって、含み損の状態で売却せざるを得なくなる」ことです。
手元の現預金が不足し、急な出費(冷蔵庫やノートPCの故障など)で、含み損のまま投資信託を売却せざるを得なくなったという失敗例もあります。
生活防衛資金の目安
- 会社員:生活費の3〜6ヶ月分
- 自営業・フリーランス:生活費の6ヶ月〜1年分
この金額を銀行預金などの「すぐに引き出せる形」で確保してから、余裕資金で投資を始めましょう。
投資は、「なくなっても生活に困らないお金」で行うのが鉄則です。
分散投資でリスクを減らす具体的な方法
投資先を分散する
投資先を特定の国や資産に集中させず、全世界の株式や債券など、値動きの異なる複数の資産に分けることで、一つの資産が下落しても他の資産でカバーし、全体のリスクを安定させることができます。
人気の分散投資商品
- オール・カントリー(全世界株式)
- 日本を含む先進国と新興国の株式に幅広く投資
- 「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などが人気
- S&P500(米国株式)
- 米国の主要500社に投資
- 「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」などが人気
- バランスファンド
- 株式と債券を組み合わせたファンド
- 株式だけよりリスクが低い
時間を分散する(積立投資)
毎月一定額を買い続けることで、価格が高いときには少なく、安いときには多く購入できます。これにより平均購入単価が平準化され(ドルコスト平均法)、高値掴みのリスクを避けやすくなります。
一括投資と積立投資の違いを具体例で見てみましょう:
【ケース1】一括投資(100万円を一度に投資)
- 投資タイミングが悪いと高値づかみのリスク
- 直後に30%下落したら70万円に(30万円の含み損)
- 元に戻るまで相当な時間がかかる可能性
【ケース2】積立投資(毎月5万円ずつ20回に分けて投資)
- 価格が下がっても追加購入でリスク分散
- 下落時は「安く買えるチャンス」と前向きに捉えられる
- 平均購入単価が平準化される
運用初期において価格が大きく下落した時に、積立投資は一括投資より投資金額が小さい分含み損も小さく、むしろその後は安く買えるチャンスと捉えることもできるのです。
2026年の相場見通しと心構え
期待できる点
AI・半導体関連銘柄の好調、円安による輸出企業の業績改善期待、日本企業のコーポレートガバナンス改革に対する海外投資家からの評価など、日本株市場はさらなる上昇が展望できる環境となっています。
2026年も株価上昇に期待したいところですが、以下のような不安要因も存在します。
警戒すべき点
米国の大手ハイテク企業の決算発表を機にAIブームの継続性への疑念が膨らむ可能性や、高市政権の積極財政が財務の健全性を損なうとの見方が長期金利を上昇させていることなどが懸念材料です。
また、2026年も、経済・金融・財政政策の不確実性、不透明性、不安定性を反映し、ボラティリティの激しい展開は継続すると予想されています。
投資初心者が持つべき心構え
- 上昇を期待しつつ、下落も想定する できれば2026年も株価上昇の年になってほしいですが、「でも、下がったときの用意はしておいてね」という小さな声を心の中に持っておくことが大切です。
- 短期的な値動きに惑わされない 日々の株価変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けましょう。
- 継続は力なり 下落相場でも積立投資を続けることが、将来的な資産形成の鍵となります。
まとめ:下落への覚悟が、投資成功の第一歩
2025年は素晴らしい株高の年でした。しかし、投資の世界では「上がったものは下がる」というのが歴史の教訓です。
新NISAで投資を始めた初心者の皆さんに、ぜひ覚えておいてほしいことをまとめます:
1. 歴史に学ぶ
- 過去30年で、日経平均株価は60%以上の下落を3回経験
- 下落は避けられないもので、30%程度の調整は「よくあること」
- ただし、長期的には市場は成長を続けてきた
2. 下落時のNG行動を避ける
- パニック売り(狼狽売り)はしない
- 積立投資は絶対に続ける
- 全額利益確定は慎重に判断する
3. 事前の準備が大切
- 下落のイメージトレーニングをしておく
- 長期投資の視点を持つ(15〜20年以上)
- 生活防衛資金(生活費の3〜6ヶ月分)を確保する
4. リスク管理の基本
- 分散投資(投資先の分散)
- 積立投資(時間の分散)
- 余裕資金で投資する
5. 2026年の心構え
- 上昇を期待しつつ、下落にも備える
- ボラティリティ(価格変動)の大きさを覚悟する
- 短期的な値動きに一喜一憂しない
相場が好調なときこそ、下落することを想定しておくべきです。ある期間で上がった相場は、同じ確率で下がる可能性があります。歴史上、永遠に続いた上昇相場はありません。
しかし、だからといって投資をやめる必要はありません。適切な知識と心構えを持ち、長期的な視点で投資を続けることが、資産形成の成功につながるのです。
2026年も、皆さんの投資が実りあるものになりますように。そして、万が一の下落時にも冷静に対応できる、賢い投資家であり続けてください!

