インデックス投資批判の真実!パッシブファンド全盛時代に個人投資家が取るべき戦略

投資ニュース解説

はじめに:今、投資の世界で何が起きているのか?

最近、投資の世界で注目されているニュースがあります。それは「インデックスファンド(パッシブ投資)が市場を支配しすぎて、株価形成がおかしくなっているのではないか」という議論です。

インデックス投資といえば、投資初心者の強い味方として推奨されてきました。手数料が安く、市場平均に連動するので、難しいことを考えずに長期で資産形成できる――そんなイメージをお持ちの方も多いでしょう。

しかし、このインデックス投資があまりにも普及しすぎた結果、「割高・割安を考えず機械的に売買するインデックスファンドが市場を歪めている」という批判の声が上がっているのです。一方で、「いや、これは長期投資家にとって大きなチャンスだ」という意見もあります。

画像1:割高・割安を考えず、機械的に売買するインデックスファンドの勢力拡大に批判の声。けれど株価と企業価値の乖離が拡大すれば長期投資家にはチャンス!(ダイヤモンド・ザイ) - Yahoo!ファイナンス
●インデックスファンドが普及しすぎて、ファンダメンタルズは株価形成において意味を失いつつあるのか?  近年の株式市場を...

今回は、この議論の本質を投資初心者の皆さんにもわかりやすく解説し、私たち個人投資家がどう考え、どう行動すべきかを一緒に考えていきましょう。

インデックス投資の急拡大 ― アメリカで起きている変化

パッシブ投資とは?基本のおさらい

まず、基本的な用語を整理しましょう。パッシブ投資(インデックス投資)とは、日経平均やS&P500といった株価指数に連動することを目指す投資手法です。

例えば、S&P500に連動するインデックスファンドを買えば、アメリカの代表的な500社の株をまとめて保有しているのと同じ効果が得られます。ファンドマネージャーが「この会社は成長しそうだ」と個別に銘柄を選ぶ必要がないため、運用コストが非常に安いのが特徴です。

これに対して、アクティブ投資は、プロのファンドマネージャーが企業を徹底的に調査し、成長が期待できる銘柄を選んで投資する手法です。市場平均を上回るリターンを目指しますが、調査や売買にコストがかかるため、手数料は高めになります。

アメリカで進むパッシブ化の実態

アメリカでは、このパッシブ投資が急速に拡大しています。2017年時点で、米国ファンド資産の約37%がインデックスファンドやETFなどのパッシブ投資だったとされています。その後も増加を続け、2017年上半期だけでアクティブファンドからパッシブファンドへ約5000億ドル近い資金が移動しました。

この背景には、いくつかの理由があります:

  1. 低コストの魅力: パッシブ投資の手数料はアクティブ投資の数分の一。長期では大きな差になります
  2. 年金・401(k)の自動積立: アメリカの確定拠出年金制度で、多くの人が自動的にインデックスファンドに積立投資
  3. アクティブファンドの苦戦: 多くのアクティブファンドが市場平均に勝てず、「だったら安いインデックスでいい」という流れ

世界最大のインデックスファンド運用会社バンガードの運用資産は、2025年に10兆ドル(約1460兆円)を突破しました。これは日本のGDPの約2倍以上に相当する巨額です。

批判の声:「市場が壊れているのでは?」

こうした急拡大に対して、一部の専門家から批判の声が上がっています。その代表的な論者の一人が、ストラテジストのマイケル・グリーンです。

グリーンらの主張は、こうです:

  • インデックスファンドは、企業の実力(ファンダメンタルズ)を見ずに、機械的に売買する
  • その結果、市場の価格弾力性が低下し、わずかな資金移動でも株価が大きく振れる不安定な構造になっている
  • 割高・割安という概念が失われ、株価は企業価値ではなく資金フローで決まるようになっている

つまり、「本来、株価は企業の業績や成長性を反映して決まるべきなのに、インデックスファンドへのお金の出入りで決まってしまっている」という指摘です。

著名投資家のマイケル・バーリやハワード・マークスも、パッシブ投資の拡大が株価の歪みやバブルを生んでいると警告しています。

この議論、一見すると説得力がありそうですが、本当にそうなのでしょうか?データに基づいて検証してみましょう。

「市場は壊れた」は本当か?データで検証する

もし本当なら、こんな現象が起きるはず

インデックス投資が本当に市場を支配し、株価形成が資金フローだけで決まっているなら、具体的にどんな現象が観察されるでしょうか?

論理的に考えると、以下のようなことが起きるはずです:

  1. すべての株が同じように動く: 個別企業の業績に関係なく、インデックス全体に資金が入れば全銘柄が上がり、出れば全銘柄が下がる
  2. 企業間の株価の差が縮小: 優良企業も赤字企業も同じような値動きになる
  3. 決算発表や業績予想の影響が小さくなる: 企業の実力が株価に反映されにくくなる

実際の市場では何が起きているか

しかし、実際の株式市場を見ると、このような現象は確認できません

2024年から2025年にかけても、決算内容が良かった企業の株価は大きく上昇し、期待外れだった企業は下落しています。AI関連企業とそうでない企業、成長企業と成熟企業では、まったく異なる値動きをしています。

例えば、2024年のアメリカ市場では:

  • エヌビディアなどAI関連株は大幅上昇
  • 一部の小売・金融株は低迷
  • セクター(業種)ごとに明確なパフォーマンス差が存在

つまり、銘柄ごとの値動きの違いは依然として存在し、「株は一斉に同じ方向へ動いている」という客観的な事実は確認できないのです。

パッシブ投資は一枚岩ではない

さらに重要なポイントがあります。それは、パッシブ投資といっても、実は非常に多様だということです。

インデックス投資には、様々な種類があります:

  • 広範な市場全体に投資するもの(S&P500、全世界株式など)
  • 特定のセクターに投資するもの(テクノロジー、ヘルスケアなど)
  • 投資スタイル別のもの(成長株、バリュー株、高配当株など)
  • スマートベータ型(特定の要因を重視する指数)
  • レバレッジ型・インバース型(相場の2倍の値動き、逆の値動きを目指すもの)

これらのETFやインデックスファンドは、同じ方向に同時に動くわけではありません。資金フローも分散しており、「パッシブ投資が一斉に同じ銘柄を同じタイミングで買う」という状況にはなっていないのです。

専門家の冷静な分析

楽天証券の山崎元氏(故人)は生前、こう指摘していました:「パッシブ運用がアクティブ運用に対して優位に立つ理由は、複雑な理論ではなく、単純に『手数料が圧倒的に安いから』だ。市場が効率的であっても、なくても、インデックスファンドの方が優れている」

つまり、インデックス投資の優位性は、「市場を壊している」からではなく、「無駄なコストを払わずに済む」という極めてシンプルな理由によるものなのです。

歪みがあるなら、それはチャンスになる ― 市場の自己修正メカニズム

市場には「自己修正機能」がある

仮に、インデックス投資の拡大によって一時的に株価の歪みが生じたとしましょう。その場合、市場はどうなるでしょうか?

実は、歪みが大きくなればなるほど、それを利用して利益を得ようとする投資家が現れます。これが市場の自己修正メカニズムです。

具体的には:

  1. 株価が割安になりすぎた企業: バリュー投資家やヘッジファンドが買い集める
  2. 株価が割高になりすぎた企業: ショート(空売り)を仕掛ける投資家が現れる
  3. 価格差が生じた似た企業: 裁定取引(アービトラージ)で利益を狙う投資家が参入

つまり、「市場が歪んでいる」という状況は、逆にアクティブ投資家にとっては絶好のチャンスなのです。

企業も受け身ではない

さらに、企業自身も市場の動きに応じて行動を変えます:

  • 株価が割高なとき: 増資や株式を使ったM&A(企業買収)を積極化
  • 株価が割安なとき: 自社株買いを実施して株主に報いる

例えば、2023-2024年にかけて、日本企業の自社株買いが過去最高水準に達したのは、まさにこの動きの表れです。東証が「PBR1倍割れ企業は改善策を」と要請したことも影響していますが、企業が株価を意識して行動している証拠です。

長期投資家にとっての意味

ここで重要なのは、短期的な歪みと長期的な価値は別物だということです。

確かに、インデックス投資の資金フローによって、短期的には株価が乱高下するかもしれません。しかし、3年、5年、10年という長期で見れば、企業の利益成長こそが株価を決定する最大の要因であることに変わりはありません。

むしろ、インデックス投資の拡大で短期的な歪みが大きくなるということは、長期視点を持つ個人投資家にとって、割安な優良企業を見つけやすくなるという意味でもあるのです。

伝説の投資家ウィル・ダノフに学ぶ ― 本質的な投資哲学

本物のアクティブ投資家は今も勝ち続けている

「インデックス投資全盛の時代に、個別株投資(アクティブ投資)は意味がないのでは?」

そんな疑問を持つ方もいるかもしれません。しかし、実は本物の実力を持つアクティブ投資家は、今でも市場平均を上回り続けています

その代表例が、ウィル・ダノフという人物です。

ウィル・ダノフとは?

ウィル・ダノフは、フィデリティ・インベストメンツという世界的な運用会社で、「フィデリティ・コントラファンド」という巨大ファンドを1990年から30年以上運用している伝説的なファンドマネージャーです。

彼のファンドの規模は約1,310億ドル(約19兆円)。単独のマネージャーが運用するアクティブファンドとしては世界最大です。

その運用実績は驚異的で:

  • 年平均リターン約13.7%(30年間)
  • S&P500指数の年平均10.4%を大きく上回る
  • 1990年以降、基準価額は約34倍に(同期間のS&P500は約16倍)

つまり、インデックス投資全盛の時代にあっても、彼は市場平均を大きく上回る成果を出し続けているのです。

ダノフの投資哲学 ― シンプルだが強力な3つの原則

ダノフの投資哲学は、実は非常にシンプルです。しかし、そのシンプルさこそが、インデックス投資全盛時代における個人投資家へのヒントになります。

原則1:「株価は最終的にEPS(1株利益)に従う」

ダノフが最も重視するのは、企業の利益予想が上方修正されているかどうかです。

EPS(Earnings Per Share:1株当たり利益)とは、企業の純利益を発行済み株式数で割った数値のこと。企業の収益力を表す最も基本的な指標です。

ダノフは言います:「将来の利益曲線が上向いている限り、短期的な株価変動に振り回される必要はない」

つまり、インデックス投資の資金フローで短期的に株価が上下しても、長期的には企業の利益成長こそが株価を決めるということです。

これは、初心者投資家にとって非常に重要な視点です。日々の株価の動きに一喜一憂するのではなく、「この会社は3年後、5年後にどれだけ利益を伸ばせるか」を考える習慣を持つべきなのです。

原則2:「値段は忘れられるが、クオリティは残る」

次に重要なのが、企業の質です。

一時的に株価が割高に見えても、競争優位性と長期的な成長力を備えた企業であれば、その価格は時間とともに正当化されます。

逆に、いくら安くても、成長力が伴わない企業に投資しても、長期では報われにくいのです。

競争優位性とは、例えば:

  • 強いブランド力(AppleやCoca-Colaなど)
  • 他社が真似できない技術(半導体製造装置のASMLなど)
  • ネットワーク効果(Facebookやメルカリなど、利用者が増えるほど価値が上がるサービス)
  • 高い参入障壁(法規制や巨額の初期投資が必要な業界)

こうした「お堀(経済的な堀)」を持つ企業は、一時的に株価が下がっても、長期的には復活し、成長を続けます。

原則3:「あなたは保有している株を毎日、改めて買っているのだ」

これは、ダノフの投資規律を示す最も重要な言葉です。

多くの投資家は、一度買った株を「自分のもの」と考え、売却を躊躇します。特に含み損を抱えていると、「損を確定したくない」という心理が働きます。

しかしダノフは言います:「過去の取得価格や含み損益に縛られず、今この株を新規に買うかという視点で考え続けろ。前提が崩れたら売れ」

これは、投資の意思決定において極めて重要な考え方です。

例えば、あなたが5年前に100万円で買った株が今150万円になっているとします。でも、その企業の成長ストーリーが崩れ、今後の成長が見込めなくなったとしたら?

「もう少し上がるかも」と期待してズルズル保有するのではなく、「今日150万円の現金があったら、この株を買うか?」と自問すべきなのです。答えがNoなら、売却して他の有望な投資先に資金を移すべきです。

ダノフのアプローチ:徹底したボトムアップ調査

ダノフは年間約1,200社、5年累計で約6,000社もの企業と面談します。これはボトムアップ・アプローチと呼ばれる手法で、マクロ経済や市場全体の予測ではなく、個別企業の実力を徹底的に調べ上げる投資スタイルです。

伝説的な投資家ピーター・リンチ(ダノフの師匠)の教えである「10社の調査を行えば見通しがつく」という哲学を引き継ぎ、企業のCEOや経営陣と直接対話し、競合状況や成長可能性を見極めます。

このアプローチは、個人投資家にも応用できます:

  • 企業の決算説明資料をしっかり読む
  • IR(投資家向け広報)に質問してみる
  • 実際にその企業の製品・サービスを使ってみる
  • 競合と比較して優位性を考える

「プロのように何千社も調査するのは無理」と思うかもしれませんが、逆に言えば、数社~数十社を深く理解するだけでも、十分に優位性を持てるということです。

個人投資家が今、取るべき戦略 ― パッシブとアクティブの賢い使い分け

「インデックス投資は終わった」わけではない

ここまで読んで、「やっぱりインデックス投資はダメなのか」と思った方、安心してください。インデックス投資は今でも個人投資家にとって非常に有効な選択肢です。

重要なのは、極端な二元論に陥らないことです。

「インデックス投資だけが正解」でもなければ、「もうインデックス投資は時代遅れ」でもありません。

インデックス投資のメリットは変わらない

インデックス投資の利点は、今も健在です:

  1. 圧倒的な低コスト: 年間手数料0.1%未満の商品も多数
  2. 手間がかからない: 銘柄選びや売買タイミングを考える必要なし
  3. 分散投資が自動的にできる: 1本で数百~数千社に投資
  4. 長期では市場平均に勝つアクティブファンドは少ない: データが証明する事実

特に、投資に時間を割けない人投資を始めたばかりの初心者にとって、インデックス投資は最適な選択肢の一つです。

一方で、個別株投資の魅力も理解する

同時に、個別株投資(アクティブ投資)の可能性も理解しておきましょう。

インデックス投資は市場平均のリターンを得る方法ですが、市場平均を大きく上回りたい自分の目利きを試したいという方には、個別株投資が適しています。

ただし、個別株投資には:

  • 銘柄選択のスキルが必要
  • 企業分析に時間がかかる
  • 集中投資によるリスクが高い
  • 心理的なプレッシャーが大きい

というデメリットもあります。

現実的な戦略:コアサテライト戦略

では、個人投資家はどうすればいいのか?

最も現実的で効果的なのが、コアサテライト戦略です。

これは、資産の大部分(コア部分)をインデックス投資で安定的に運用しつつ、一部(サテライト部分)を個別株投資や テーマ型投資で積極運用する方法です。

具体例:

  • コア(70-80%): 全世界株式インデックスファンド、米国S&P500インデックスファンド
  • サテライト(20-30%): 成長が期待できる個別株、高配当株、テーマ型ETF

この戦略の利点は:

  1. リスクとリターンのバランスが取れる
  2. 市場平均は確実に得つつ、上乗せリターンも狙える
  3. 個別株投資の勉強になる(失敗しても資産全体への影響は限定的)
  4. 自分の興味や得意分野を活かせる

投資を学び続ける姿勢

最後に、最も重要なことをお伝えします。

インデックス投資であれ、個別株投資であれ、投資について学び続ける姿勢を持つことが成功への鍵です。

市場環境は常に変化します。10年前の常識が今も通用するとは限りません。だからこそ:

  • 決算情報や経済ニュースをチェックする習慣をつける
  • 投資本を読む(ピーター・リンチ『ピーター・リンチの株で勝つ』など)
  • 実際に少額から投資を始めて経験を積む
  • 失敗から学ぶ(誰でも最初は失敗します)

投資は人生を通じた学びです。焦らず、じっくり、着実に。

まとめ:パッシブ投資全盛時代をチャンスに変える

ここまで、インデックス投資(パッシブ投資)をめぐる批判の声と、その真実について見てきました。最後に、重要なポイントをまとめましょう。

この記事のポイント

  1. インデックス投資の拡大は事実だが、「市場が壊れた」という証拠はない
    • 実際の市場では、企業ごとの株価の差は依然として存在
    • パッシブ投資も一枚岩ではなく、多様な資金フローが存在
  2. 仮に歪みがあっても、市場には自己修正メカニズムがある
    • 価格の歪みは裁定取引の機会を生む
    • 企業も株価に応じて自社株買いや増資で対応
    • 短期的な歪みと長期的な価値は別物
  3. 本物のアクティブ投資家(ウィル・ダノフなど)は今も勝ち続けている
    • 株価は長期的にはEPS(1株利益)に従う
    • 企業の質(クオリティ)こそが重要
    • 過去にとらわれず、常に「今買うか?」と自問する
  4. 個人投資家には「コアサテライト戦略」が最適
    • 資産の大部分はインデックス投資で安定運用
    • 一部を個別株投資で積極運用
    • リスクとリターンのバランスを取る
  5. 学び続ける姿勢こそが最大の武器
    • 市場環境は常に変化する
    • センセーショナルな終末論に惑わされない
    • 実証的なデータと企業の実力を見る目を養う

パッシブ投資の拡大は脅威ではなくチャンス

インデックス投資の拡大によって、確かに市場の短期的な値動きは激しくなっているかもしれません。しかし、それは長期視点を持つ個人投資家にとってはむしろチャンスです。

なぜなら:

  • 短期的な歪みで割安になった優良企業を見つけやすい
  • 市場が短期志向になるほど、長期投資家が有利になる
  • ファンダメンタルズ(企業の実力)を見る力が差別化要因になる

冷静に、賢く、長期視点で

投資の世界には、常に極端な意見が飛び交います。

「インデックス投資だけで十分!」という声もあれば、「もうインデックス投資は終わった!」という声もあります。

しかし、真実は往々にして、その中間にあります

インデックス投資の利点を活かしつつ、個別株投資の可能性も理解する。フローの影響を冷静に把握しつつ、企業の利益成長と質を見極める。短期的なノイズに惑わされず、長期的な視点を持ち続ける。

そんなバランス感覚を持った投資スタイルこそが、現代の市場環境で最も現実的で効果的なアプローチなのです。

皆さんの投資が、10年後、20年後に実を結ぶことを心から願っています。焦らず、学び続け、着実に資産形成を進めていきましょう!

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