2024年から始まった新NISAは、すごいブームですね。ぼくの周りでも「始めたよ」という声がどんどん増えていて、特に若い世代の投資家が急増しているようです。最近発表されたニュースによると、個人の株主数が1年でなんと914万人も増えたとのことです(※これは延べ人数で、名寄せ後の実際の増加数は74万人です)。
まさに「貯蓄から投資へ」という大きな流れが来ています。これは本当に素晴らしいことだと思います。
しかし、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。 「新NISAを始めたけれど、何を買えばいいか分からないから、とりあえず人気のS&P500にしている」 …そのような声が、皆さんの周りでも聞こえてくるのではないでしょうか。
もちろん、S&P500(アメリカの代表的な企業500社にまとめて投資する投資信託)は、世界経済の中心であるアメリカの成長に乗ることができる、大変優れた選択肢の一つです。投資の王道であり、多くの専門家も推奨しています。
ですが、ぼくは最近このように思うのです。 「みんなと同じようにアメリカ株にだけ投資していて、私たちの30年後、40年後は本当に安泰なのでしょうか?」 「私たちが老後を迎える頃、この日本という国が活力を失っていたら、いくら個人資産があっても幸せな暮らしはできないのではないでしょうか?」
今日は、そんな気持ちを抱える皆さんと一緒に、新しい投資の選択肢である「国策投資」について考えてみたいと思います。これは、ただお金を増やすだけではなく、私たちの手で日本の未来を少しでも明るくできるかもしれない、興味深い投資の話です。こちらの記事を紹介します。
【初心者向け解説①】そもそもNISAとは? NISA(ニーサ)は「少額投資非課税制度」のことです。通常、株式や投資信託で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内で得た利益には税金がかからない、という大変お得な制度です。2024年から始まった新NISAは、非課税で投資できる上限額が大幅にアップし、制度自体も恒久化されたため、大きな注目を集めています。
【初心者向け解説②】S&P500はなぜ人気があるのですか? 正式名称は「S&P500種株価指数」です。AppleやGoogle、Amazonといったアメリカを代表する有名企業500社の株価を元に計算される指数のことです。これに連動する投資信託を買うだけで、自動的にアメリカのトップ企業500社に分散投資ができるため、手間がかからず安定した成長が期待できるとして、特に投資初心者に人気があります。
そもそも「国策投資」とは何でしょうか?なぜ今、大切なのでしょうか?
「国策投資」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。ですが、内容はとてもシンプルです。
国策投資というのは、一言でいえば「これから日本という国が、国を挙げて『この分野を伸ばすぞ』と力を入れていくテーマ(産業や技術)に関連する企業に投資すること」です。
例えば、政府が「これからは再生可能エネルギーの時代だ。太陽光発電を普及させる」と宣言し、補助金を出したり法律を整備したりした場合、太陽光パネルを製造する会社や発電所を運営する会社の株価は上昇が期待できます。そういった企業に投資するのが国策投資のイメージです。
元のニュース記事の筆者は、大変重要な視点を提示しています。それは、「あなたが40年後に老後を迎える時、もし日本が国家として本当に貧しくなっていたら、どんなに個人資産があっても、あなたの暮らしは貧しいものにしかならない」ということです。
想像してみてほしいのです。 皆さんが新NISAでコツコツ積み立てたお金が、将来3000万円、5000万円になったとします。それは素晴らしいことです。しかし、その頃の日本が、経済が停滞してインフラは老朽化し、社会不安が増して治安も悪化していたとしたらどうでしょうか。いくらお金があっても、安心して豊かな生活を送ることは難しいかもしれません。
特に、私たち若い世代には「時間」という強力な武器があります。10年、20年、あるいは30年、40年という長いスパンで物事を考えられます。目先の株価の上下に一喜一憂するのではなく、遠い未来の日本の姿を想像しながら、その未来を創る会社を応援する。そのような投資ができるのは、私たちの特権ではないでしょうか。
「貯蓄から投資へ」というスローガンが叫ばれて久しいですが、この本当の目的は、ただ国民一人ひとりが資産を増やせば良いという話ではないはずです。国民の預貯金に眠っているお金が、国内の新しい技術や努力している企業に流れ込むことで産業が育ち、国全体が豊かになる。その結果、巡り巡って私たちの生活も豊かになる。これこそが、このスローガンが本来目指すべき姿だったとぼくは考えます。
しかし現実は、新NISAで集まった資金の多くが、S&P500などを通じて海外、特にアメリカに流れています。もちろん、それが悪いわけではありません。ですが、せっかくなら、その投資の一部を、私たちが暮らすこの国の未来のために使ってみるのも、大変意義のあることではないでしょうか。
日本の未来を創る、注目の「国策」テーマ
では、具体的にどのような分野が「国策」として注目されているのでしょうか。ニュース記事では、特に長期的で壮大な2つのテーマが挙げられています。それは「核融合エネルギー」と「海底資源開発」です。
未来のエネルギー:核融合開発
「核融合」と聞くと、「核分裂」や「原発」を連想し、少し怖いイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、この二つは全く異なるものです。
【初心者向け解説③】核融合とは? 太陽が燃え続けているのと同じ原理です。原子同士を「融合」させて、莫大なエネルギーを取り出す技術のことを指します。原子力発電で利用される「核分裂」とは異なり、理論上、高レベル放射性廃棄物を排出せず、暴走する危険性も極めて低いとされています。そして燃料は、海水中に豊富に存在する重水素などです。これが実現すれば、人類はエネルギー問題からほぼ解放されると言われる、まさに夢の技術なのです。
日本はエネルギーのほとんどを海外からの輸入に頼っている、資源に乏しい国です。もし、この核融合発電が実現すれば、エネルギーを自給自足できるようになり、経済安全保障の観点で非常に強くなることができます。
「それはSFの世界の話ではないか」と思うかもしれませんが、実は世界中で開発競争が激化しており、日本も国を挙げて研究を進めています。京都大学発のスタートアップが注目を集めたり、政府も多額の予算を投入し始めたりしています。30年、40年後には、社会を支えるエネルギーになっているかもしれません。そのような壮大な夢に、投資という形で参加できるのは、とても興味深いことだと思います。
眠れるお宝:海底資源開発
もう一つ、日本の未来を左右するのが「資源」です。 スマートフォンや電気自動車のバッテリーに不可欠な「レアアース」や「レアメタル」。これらのほとんどを、日本は中国など特定の国からの輸入に頼っています。もし、その国との関係が悪化し「もうあなたの国には売りません」と言われたら、日本のハイテク産業は停止してしまうかもしれません。これは国家の非常に重要な課題です。
しかし、希望の光があります。それは、日本の広大な排他的経済水域(EEZ)に眠る、莫大な海底資源です。
【初心者向け解説④】排他的経済水域(EEZ)とは? 沿岸から200海里(約370km)までの、その国が水産資源や鉱物資源を探査・開発する権利を持つ海域のことです。日本は島国であるため、このEEZの面積が世界でもトップクラスに広くなっています。
ニュースによると、東京の南方にある南鳥島沖の海底には、世界需要の数百年分にも相当するレアアースが眠っていることが確認されているそうです。 2026年には、日本の探査船「ちきゅう」が、本格的な試験掘削を開始する予定とのことで、夢物語は終わり、まさに今、国家プロジェクトとして現実が動き出しているのです。
もし、この海底から資源を商業ベースで引き上げる技術が確立されれば、日本は資源輸入国から、一気に資源大国へと生まれ変わる可能性があります。エネルギーの「核融合」と、資源の「海底開発」。この2つは、日本の長年の弱点を克服し、未来の豊かさを築くための、まさに「国策」の二本柱と言えるかもしれません。
「国策銘柄」の探し方と投資のヒント
「国策投資の面白さは分かりましたが、具体的にどの会社の株を買えばいいのでしょうか?」 そこが一番知りたい点だと思います。ここでは、具体的な銘柄探しのヒントをいくつかご紹介します。
(重要)この記事は特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。あくまで考え方の一例として紹介するものであり、最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
ヒント1:ニュースに出てくる企業名を調べてみる
一番分かりやすいのが、今回のニュース記事でも触れられていた企業をヒントにすることです。
・海底資源開発の関連銘柄として… ・レアアース泥の回収システムに関わる「東洋エンジニアリング(6330)」 ・回収機材の開発に関わる「古河機械金属(5715)」 ・海底鉱物の精錬に注力する「太平洋金属(5541)」
例えば、このような企業名が出てきたら、まずは証券会社のアプリやウェブサイトで、どのような事業をしている会社なのか、最近の株価はどうなっているのかを調べてみましょう。そこから、「この会社は、海底資源開発のどの部分を担っているのか」と深掘りしていくと、他の関連企業も見つかってきます。関連知識が広がっていく感覚は、個別株投資の醍醐味の一つです。
ヒント2:政府が発表する「骨太の方針」を眺めてみる
少し上級者向けかもしれませんが、政府が毎年6月頃に発表する「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」は、国策のテーマの宝庫です。
ここには、「これから日本は、このような課題に取り組み、こういう社会を目指します」という政府の考えが記されています。例えば、「GX(グリーントランスフォーメ-ション)」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」、「半導体戦略」といった言葉が出てきたら、それがまさに国策テーマです。そのキーワードでニュース検索するだけでも、関連する企業がたくさん見つかるはずです。
ただ、ニュース記事の筆者が指摘するように、この資料は全方位的に書かれすぎていて「結局、一番重要なのはどれなのか」と分かりにくい部分もあります。ですから、まずはご自身が「これは」と共感できる、興味を持てるテーマを一つ見つけるところから始めるのが良いかもしれません。
ヒント3:証券会社の「テーマ検索」を使ってみる
これが初心者の方にとって一番簡単で実践的な方法かもしれません。 楽天証券やSBI証券といったネット証券には、「テーマ・キーワードから探す」といった機能があります。
そこに例えば「再生可能エネルギー」「半導体」「防衛」「サイバーセキュリティ」といった、国策になりそうなキーワードを入力すると、関連する銘柄の一覧が表示されます。ここを入り口にして、気になった会社を一つずつ調べていくのがおすすめです。
「国策投資」のメリットと知っておくべき注意点(リスク)
最後に、国策投資に挑戦する前に、そのメリットと注意点をしっかりと理解しておきましょう。
国策投資のメリット
- 大きなリターンが期待できる可能性 国が後ろ盾となって強力に推進するわけですから、政策がうまくいけば、関連企業は大きく成長する可能性があります。株価が10倍、50倍になるような銘柄が生まれるとしたら、このような分野からかもしれません。
- 社会に貢献している実感が持てる 自分の投資したお金が、日本のエネルギー問題や資源問題を解決する一助になっている。そう考えると、ただ利益を追い求めるだけではない、大きなやりがいを感じられるはずです。
- 投資がもっと楽しくなる インデックス投資は「ほったらかし」で良いのが魅力ですが、少し退屈に感じることもあるかもしれません。国策投資は、未来を予測し、自分で企業を発掘する宝探しのような楽しさがあります。経済ニュースを見る目も変わってくるでしょう。
知っておくべき注意点(リスク)
- 成果が出るまで、非常に時間がかかる 核融合や海底資源開発は、5年や10年で結果が出る話ではありません。30年、40年という超長期的な視点が必要になります。
- 国策が変更・失敗するリスク 政権が交代して、今まで進めてきた政策が変更される可能性はゼロではありません。また、巨額の予算を投じても、技術的な壁を越えられずに計画が頓挫するリスクもあります。
- 株価の変動が大きい 未来への期待で買われる分、少しの悪いニュースで株価が急落することもあります。安定感という点では、インデックス投資には劣ります。
結論:コア・サテライト戦略で始めてみましょう
では、どうすれば良いのでしょうか。ぼくのおすすめは「コア・サテライト戦略」です。
・コア(核):資産の大部分(例えば7〜9割)は、S&P500や全世界株式(オール・カントリー)のような、安定成長が期待できるインデックス投資で固めます。ここはご自身の資産を守り育てる「守り」の部分です。
・サテライト(衛星):残りの少額(1〜3割)で、国策銘柄のような、より積極的なリターンを狙う「攻め」の投資に挑戦します。
この方法なら、たとえサテライト部分の投資がうまくいかなくても、資産全体が大きく傷つくことはありません。まずは資産の一部を「お楽しみ枠」として、日本の未来を応援する国策投資を始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ:あなたの投資が、日本の未来を創ります
今回は、新NISAの新しい選択肢として「国策投資」についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。
- 新NISAブームですが、S&P500への投資だけで良いのか、一度立ち止まって考えてみましょう。
- 国策投資は、日本の未来への応援投資です。資産形成と社会貢献の両方が目指せます。
- 注目テーマは「エネルギー」と「資源」です。日本の弱点を克服する可能性を秘めています。
- 大きなリターンが期待できる一方、超長期的な視点とリスクへの理解が必要です。
- まずは資産の一部を使う「サテライト投資」として、少額から挑戦してみましょう。
S&P500に投資することは、アメリカの成長の果実を得ることです。それも素晴らしい投資だと思います。 一方、国策投資は、日本の未来という畑に種をまき、水をやり、育てていくような投資だとぼくは考えています。
収穫までに大変な時間がかかるかもしれませんし、途中でうまくいかないこともあるかもしれません。しかし、もし無事に育てば、それはお金という果実だけではなく、「豊かで活力ある日本」という、私たちや、私たちの子どもの世代にとって、何にも代えがたい大きな実りになるはずです。
皆さんのその一歩の投資が、40年後の日本の景色を、ほんの少しだけ明るく彩るかもしれない。そう考えると、とても興味深く、やりがいのあることだと思いませんか。
一緒に日本の未来への投資を始めてみましょう。