新NISAが始まり、SNSやYouTubeでは「オルカン(全世界株式)一本でOK!」「何も考えずに積み立てろ!」という言葉が溢れています。確かに、世界中の企業に分散投資できるオルカンは、投資初心者にとって最適解の一つです。
しかし、もし明日、リーマンショック級の暴落が起きたら? あなたの大切な資産が半分近くに減ってしまったとき、それでも平気でいられるでしょうか。
今回は、MONEY PLUSに投稿された記事をベースに、オルカン一本の弱点を補い、どんな相場でも生き残るための「自分だけのアセットアロケーション(資産配分)」について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
オルカン一本ブームの死角とは?記事から見るリスクの正体
まずはこちらの話題から見ていきましょう。最近、MONEY PLUSにオルカンに関する興味深い記事が投稿されました。その内容は、「オルカンは優秀だが、万能ではない」というものです。

記事によると、オルカンには次のような「見えない偏り」や「弱点」があると指摘されています。
- 中身の約60%がアメリカ株である:全世界と言いつつも、実は運命共同体のように米国の景気に左右されます。
- 株式100%の攻撃型ファンドである:資産を増やすエンジンとしては優秀ですが、暴落時に資産を守るブレーキの役割をする資産が含まれていません。
- 為替の影響を直接受ける:円安になれば資産は増えますが、円高と株安が同時に来ると、資産が大きく目減りするリスクがあります。
投資を始めたばかりの時は増えることばかり考えがちですが、長く投資を続けるには減る時期をどう乗り越えるかが鍵になります。全世界に投資しているから安心と思い込んで思考停止するのではなく、自分のリスク許容度(どれくらい損に耐えられるか)に合わせて、メンテナンスをしていく必要があるのです。
では、具体的にどうすればいいのでしょうか? 答えは「アセットアロケーション」にあります。
投資の成果は9割が決まっている?アセットアロケーションの魔法
投資の世界には、とても有名な定説があります。それは、投資パフォーマンスの90%以上は、アセットアロケーションによって決まるというものです。
アセットアロケーションとは、アセット(資産)をアロケーション(配分)すること。つまり、手持ちの資金を国内株式、外国株式、債券、金、不動産などの資産クラスに、どのような割合で振り分けるかというレシピのことです。
多くの人は、どの銘柄が上がるか、今は買い時か、といったタイミングや銘柄選びに熱中しがちです。しかし、実はそれらが投資成果に与える影響はごくわずか。美味しい料理ができるかどうかがレシピでほとんど決まってしまうように、投資もどの資産をどれくらい持つかという配分こそが、将来のリターンとリスクを決定づけるのです。
僕自身の投資戦略も、この考え方がベースになっています。特定の銘柄を一点買いして一発逆転を狙うようなギャンブルはしません。その代わりに、自分のリスク許容度に応じて、株式クラスと債券クラスを一定の割合で保持するスタイルを貫いています。
もしあなたがオルカン一本であれば、それは株式クラス100%という、実はかなりリスクの高い(値動きの激しい)配分になっていることを自覚する必要があります。ここを見直すことが、安定した資産形成への第一歩です。
心の安寧を守るクッション。債券クラスの重要性
株式100%だとリスクが高いなら、何を混ぜればいいの? そう思った方に、まず検討してほしいのが債券です。
債券とは、国や企業にお金を貸して、その利子をもらう仕組みのこと。株式に比べてリターンは控えめですが、値動きが安定しており、元本が戻ってくる可能性が高い資産です。
僕のアセットアロケーションにおいて、債券クラスはクッションのような役割を果たしてくれます。株式市場が荒れ狂い、株価が暴落して精神的に辛い時でも、債券を持っていれば資産全体のダメージを和らげてくれるからです。これは、投資を長く続けるための安心材料として非常に重要です。
一般的に、株式と債券は逆の動きをする(逆相関)と言われています。景気が悪くなって株が売られると、安全資産である債券が買われて価格が上がることが多いため、ポートフォリオ全体の値動きをマイルドにしてくれるのです。
もちろん、最近のデータでは株式と債券の相関が高まっている(一緒に上がったり下がったりする)という指摘もあります。しかし、それでも株式単体に比べれば債券の値動きは小さく、資産全体のリスクを抑える効果は依然として健在です。
攻めのオルカンに対して、守りの債券。この2つを組み合わせることで、車で言えばアクセルとブレーキが揃った状態になり、安全運転での資産形成が可能になります。
さらに一歩進んだ分散投資。コア・サテライト戦略でビットコイン・金を活用
株式と債券で土台を作ったら、さらに一歩進んだ戦略を考えてみましょう。最近僕が検討しているのが、コア・サテライト戦略を取り入れ、株式や債券とは動きの異なる資産を少しだけ混ぜることです。
コア・サテライト戦略とは、資産をコア(中核)とサテライト(衛星)に分けて管理する考え方です。
・コア(守り):資産の90%以上。オルカンや債券などの安定的な長期運用。
・サテライト(攻め):資産の数%。より高いリターンを狙ったり、リスク分散のために持つ資産。
記事では第2の柱としてゴールド(金)が推奨されていました。金は有事の金とも呼ばれ、戦争やインフレ、金融不安の際に価格が上がる傾向があります。株や債券が共倒れするような局面でも輝きを放つため、数パーセント持っておくと保険になります。
さらに、現代のデジタルゴールドとも呼ばれるビットコイン(暗号資産)も候補に入ります。ビットコインETFが登場し、証券口座で手軽に買えるようになれば、アセットアロケーションの一部として組み入れることも検討したいです。
僕の考えでは、ポートフォリオの数パーセント程度であれば、ゴールドETFやビットコインETFをスパイスとして加えるのはありだと考えています。これらは伝統的な資産(株・債券)との相関が低いため、分散効果を高めることが期待できるからです。
ただし、これらはあくまでサテライト。メインディッシュではありません。全体のバランスを崩さない程度に留め、遊び心やリスク分散の手段として活用するのが賢い付き合い方です。
為替リスクはどうする?あえて為替ヘッジなしを選ぶ合理的な理由
最後に、海外投資をする上で避けて通れない為替リスクについてお話しします。
記事では、円高による資産目減りを防ぐために、為替ヘッジありの商品も選択肢として紹介されていました。しかし、僕個人の考えとしては、為替ヘッジ型の商品は購入しません。
為替ヘッジとは、将来の為替レートをあらかじめ予約することで、円高・円安の影響を受けないようにする仕組みのことです。
一見良さそうに見えますが、これには大きな落とし穴があります。それがヘッジコストです。為替ヘッジを行うには、日本と投資対象国の金利差分のコストを支払う必要があります。現在のように海外の金利が高く、日本の金利が低い状況では、このヘッジコストが非常に高額になり、せっかくのリターンを大きく削り取ってしまうのです。
長期投資において、確実にかかるコストは最大の敵です。僕は、為替リスクはあきらめる、つまり受容するという考え方を採用しています。
世界経済が成長すれば、長期的には株価の上昇が為替の変動を吸収してくれると期待すること。そして、そもそも円だけで資産を持つこと自体が、日本円への集中投資というリスクであること。このように割り切って、余計なコストを払わず、素直に為替ヘッジなしのファンドを持つ。これが、シンプルかつ合理的な選択だと考えています。
まとめ:儲けるよりも続けるための仕組みづくりを
今回は、MONEY PLUSの記事をきっかけに、オルカン一本の先にあるアセットアロケーション戦略について解説してきました。
内容をまとめます。
- オルカンは万能ではない:米国株への偏りや、守りの弱さを理解しておく。
- アセットアロケーションが命:投資成果の9割は資産配分で決まる。
- 債券をクッションにする:債券を持つことで、暴落時の精神的安定を確保する。
- サテライトで分散を強化:株・債券と動きの異なるゴールドやビットコインを数%混ぜる。
- 為替リスクは受容する:コストのかかる為替ヘッジは使わず、長期的な成長を信じる。
投資のゴールは、短期間で大儲けすることではありません。どんな相場環境になっても市場から退場せず、長く淡々と投資を続けることです。
オルカンは素晴らしい商品ですが、それだけで思考停止せず、自分のリスク許容度に合わせた心地よい資産配分を見つけてみてください。その工夫こそが、あなたの資産を鉄壁の守りで増やし続ける鍵になるはずです。
もし今の自分の配分、ちょっとリスク高すぎたかな?と思ったら、少しだけ債券ファンドの積立を追加してみるなど、小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか?
