NISAの影に隠れた”もう一つの節税制度”が大改正
新NISAが2024年にスタートして以来、投資ブームが続いています。SNSやニュースでは連日のように「NISA口座開設数が過去最高」「つみたて投資枠が人気」といった話題で持ちきりですよね。でも、実はその影に隠れて、もっと強力な節税効果を持つ制度があることをご存知でしょうか。
それが「iDeCo(イデコ)」、正式には個人型確定拠出年金と呼ばれる制度です。年収600万円の会社員なら、なんと生涯で276万円もの節税ができる可能性があるんです。

2026年12月から、このiDeCoが大幅にパワーアップします。主な改正内容は2つ。拠出できる金額の上限が大幅に引き上げられることと、加入できる年齢が70歳まで延長されることです。特に会社員の方にとっては、月額の拠出上限が2万3000円から6万2000円と約2.7倍にアップするという、見逃せない変更となっています。
さらに2026年4月には、企業型DCの「マッチング拠出制度」も改正されます。これまでの上限規制が撤廃され、最大5万5000円まで上乗せできるようになるんです。
NISAとiDeCoは、どちらも投資の利益が非課税になる点では似ていますが、実は大きな違いがあります。NISAは運用益が非課税になるだけですが、iDeCoは「掛金を払った時点で所得控除」「運用中の利益も非課税」「受取時も税制優遇」という三重の節税メリットがあるんです。
この記事では、投資初心者の方でもわかりやすいように、2026年のiDeCo改正とマッチング拠出改正について、専門用語をできるだけ避けながら丁寧に解説していきます。NISAだけでなく、iDeCoやマッチング拠出も上手に活用すれば、あなたの老後資金づくりが大きく加速するはずです。
上限額が2.5倍に!会社員に朗報の拠出限度額引き上げ
今回の改正で最も注目すべきポイントが、拠出限度額の引き上げです。拠出限度額とは、iDeCoに毎月いくらまで積み立てられるかの上限金額のこと。この金額が大きくなればなるほど、節税のメリットも大きくなります。
会社員の場合:月2.3万円→6.2万円に
これまで企業年金がない会社員の場合、iDeCoには月額2万3000円までしか拠出できませんでした。それが改正後は月額6万2000円まで拠出可能になります。増加額はなんと月3万9000円、年間では46万8000円もアップするんです。
会社員であれば、企業年金の有無に関わらず一律で月額6万2000円まで拠出できるようになる見込みです。これまでは企業年金がある会社員は上限が低く設定されていましたが、改正後はシンプルに統一されるため、制度がわかりやすくなるメリットもあります。
自営業者の場合:月6.8万円→7.5万円に
自営業者やフリーランスの方は、月額6万8000円から7万5000円に引き上げられます。増加額は月7000円、年間8万4000円です。会社員ほど劇的な変化ではありませんが、それでも嬉しい改正ですよね。
具体的な節税シミュレーション
では、この改正で実際にどれくらい節税できるのか、具体的な数字で見ていきましょう。
年収600万円の会社員(企業年金なし)の場合を例に計算してみます。
改正前
- 月額拠出額:2万3000円
- 年間拠出額:27万6000円
- 年間節税額:約5万5000円(所得税・住民税の合計)
改正後
- 月額拠出額:6万2000円
- 年間拠出額:74万4000円
- 年間節税額:約14万8000円(所得税・住民税の合計)
年収600万円の会社員の場合、年間の節税額が約5万5000円から約14万8000円へと、約2.5倍以上に増加します。
これは掛金を払った時点での節税効果だけです。さらに運用益も非課税になるので、トータルの税制メリットはもっと大きくなります。
なぜ会社員への恩恵が大きいのかというと、自営業者と比べて使える節税手段が限られているからです。自営業者は経費計上など様々な節税方法がありますが、会社員は給与所得控除以外に使える控除が少ないんですね。そのため、iDeCoの所得控除は会社員にとって非常に貴重な節税ツールとなるわけです。
ただし注意点として、拠出できる金額が増えるからといって、必ずしも上限まで使う必要はありません。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、無理のない範囲で積み立てることが大切です。まずは月1万円や2万円からスタートして、家計に余裕があれば徐々に増額していくのが賢明でしょう。
70歳まで加入可能に!長期運用で資産が劇的に増える理由
2つ目の大きな改正ポイントが、加入可能年齢の延長です。これにより、より長期間にわたって資産形成ができるようになります。
加入年齢が70歳未満まで延長
改正により、被保険者種別にかかわらず、iDeCoへの加入可能年齢が65歳未満から70歳未満まで引上げられる予定です。これまでは会社員で65歳未満、自営業者で60歳未満(一部条件で65歳未満)までしか加入できませんでしたが、改正後は誰でも70歳まで積み立てができるようになります。
この変更の背景には、日本の「人生100年時代」への対応があります。定年が延長され、70歳まで働く人が増えている現代において、老後資金の準備期間も延ばす必要があるというわけです。
30年運用の威力を数字で見る
加入年齢の延長が、どれほどのインパクトを持つのか、具体例で見てみましょう。
40歳から始めた場合の比較です。
改正前(65歳まで25年間)
- 月額拠出額:6万2000円
- 拠出期間:25年間
- 元本:1860万円
- 運用益(年利3%):約710万円
- 合計:約2570万円
改正後(70歳まで30年間)
- 月額拠出額:6万2000円
- 拠出期間:30年間
- 元本:2232万円
- 運用益(年利3%):約1380万円
- 合計:約3612万円
5年間の延長で、なんと約1000万円以上も資産が増える計算になります。これは「複利効果」のおかげです。
複利効果とは、運用で得た利益をそのまま再投資することで、雪だるま式に資産が増えていく効果のこと。特に投資期間が長くなればなるほど、この効果は絶大になります。
年収600万円の会社員が40歳からiDeCoを開始し、70歳まで30年間拠出した場合、元本は2232万円、運用益は約1380万円となり、運用益にかかる約20%の税金が非課税となるため、276万円もの節税が可能です。
NISAとの節税効果比較
ここで気になるのが、「NISAとどっちがお得なの?」という点ですよね。
NISAの生涯非課税投資枠は1800万円です。一方、改正後のiDeCoは、会社員が40歳から70歳まで上限額を拠出した場合、元本だけで2232万円になります。
さらに重要なのが、iDeCoには掛金全額が所得控除になるという、NISAにはないメリットがあること。年収600万円の会社員が年間74万4000円を拠出すれば、毎年約14万8000円の税金が戻ってくるんです。30年間なら444万円にもなります。
つまり、老後資金の準備という目的に限定すれば、iDeCoの方が税制優遇は圧倒的に有利なんです。
ただし、iDeCoには「60歳まで引き出せない」という制約があります。住宅購入や教育費など、途中で使う可能性がある資金はNISAで運用し、確実に老後まで使わない資金はiDeCoで運用するという使い分けが賢明でしょう。
50歳からでも遅くありません。50歳から70歳まで20年間運用すれば、十分な老後資金を準備できます。「今から始めても遅い」と諦めず、できるだけ早くスタートすることが大切です。
【2026年4月先行実施】マッチング拠出の上限撤廃でさらにお得に
iDeCoとは別に、もう一つ注目すべき改正があります。それが「マッチング拠出制度」の上限撤廃です。こちらは2026年4月から先行して実施される予定です。
マッチング拠出制度って何?
マッチング拠出とは、会社が実施している企業型確定拠出年金(企業型DC)に、従業員が自分のお金を上乗せして積み立てられる制度のことです。
例えば、会社が月2万円を拠出してくれている場合、従業員も自分のお金を追加で積み立てることができます。この従業員が上乗せする部分を「マッチング拠出」と呼びます。
マッチング拠出のメリットは、iDeCoと同じように掛金全額が所得控除の対象になること。さらに、口座管理手数料が会社負担で無料になることが多いんです。iDeCoは年間2000円程度の手数料がかかるので、この差は地味に大きいですよね。
改正内容:上限規制が撤廃される
現在は、従業員が上乗せできる金額は事業主の掛金を超えない範囲とされていますが、2026年4月以降はこの制限が撤廃されます。
これまでのルールでは、会社が月2万円拠出していたら、従業員も最大2万円までしか上乗せできませんでした。つまり、会社の拠出額が少ない人は、自分でたくさん積み立てたくてもできなかったんです。
改正後は、会社の拠出額に関係なく、企業型DCとマッチング拠出の合計で月5.5万円(2027年1月以降は月6.2万円)まで拠出可能になります。
例えば、会社が月1万円しか拠出していなくても、従業員は月5.4万円(改正後は月6.1万円)を上乗せできるようになるわけです。
iDeCoとマッチング拠出、どっちを選ぶ?
ここで重要な注意点があります。iDeCoとマッチング拠出は、どちらか一方しか利用できません。両方を同時に使うことはできないんです。
では、どちらを選ぶべきでしょうか?
マッチング拠出がおすすめな人:
- 勤務先がマッチング拠出制度を導入している
- 口座管理手数料を節約したい
- 企業型DCと一体で管理したい
iDeCoがおすすめな人:
- 勤務先にマッチング拠出制度がない
- 自分で金融機関や運用商品を選びたい
- 転職の可能性がある(iDeCoは転職先にも持ち運べる)
マッチング拠出のメリットは、会社側が管理手数料を払うため利用者の手数料が無料なこと。一方、iDeCoは自分で金融機関を選べるため、手数料の安いネット証券を選んだり、好みの投資信託を選んだりできる自由度があります。
2026年4月にマッチング拠出の改正が先行実施されるため、勤務先がマッチング拠出を導入または拡充する可能性があります。まずは会社の人事部門に確認してみるとよいでしょう。
もし現在iDeCoに加入していて、マッチング拠出に切り替えたい場合は、事前にiDeCoの加入資格喪失手続きが必要です。手続きには時間がかかるので、計画的に進めましょう。
【投資初心者向け】今から準備すべきこと&注意点
ここまで2026年のiDeCo改正とマッチング拠出改正について解説してきました。最後に、投資初心者の方が今から準備すべきことと、知っておくべき注意点をまとめます。
1. 手続き開始時期を確認しよう
iDeCoの改正は2026年12月からの実施ですが、拠出額の変更手続きは2026年11月からなど、改正前から開始されることが予測されます。
実際の引き落としは2027年1月分からになる見込みですが、手続きには時間がかかります。すでにiDeCoに加入している方は、金融機関の公式サイトをこまめにチェックして、増額手続きの案内を見逃さないようにしましょう。
まだiDeCoに加入していない方は、今のうちに口座開設を済ませておくのがおすすめです。口座開設には1〜2ヶ月かかることもあるので、早めの準備が吉です。
2. 受取時の税制変更に注意(10年ルール)
実は2026年1月から、iDeCoの受取時に関する税制が変更されています。これは「退職所得控除の10年ルール」と呼ばれるものです。
簡単に説明すると、iDeCoを一時金で受け取る場合と、会社からの退職金を受け取る場合、その間隔が10年以上空いていないと、税制優遇が減ってしまうというルールです(以前は5年でした)。
2026年1月1日以降にiDeCoの一時金を受け取る場合、退職金と同時期に受け取ると退職所得控除の適用額が減る可能性があります。
対策としては、以下のような方法があります:
- iDeCoを年金形式で受け取る(一時金ではなく分割受取)
- 受取時期を調整する(60歳でiDeCo、70歳で退職金など)
- 専門家に相談して最適な受取方法を決める
ただし、この影響を大きく受けるのは、退職金がある会社員や公務員の方です。退職金がない方や、自営業・フリーランスの方はあまり気にしなくても大丈夫です。
3. NISAとiDeCoの賢い組み合わせ方
「NISAとiDeCo、どっちを優先すべき?」とよく聞かれますが、答えは「両方使うのがベスト」です。ただし、資金に限りがある場合は優先順位を考えましょう。
おすすめの優先順位:
- 会社員で企業型DCのマッチング拠出がある→まずマッチング拠出を活用
- 所得税・住民税を多く払っている→iDeCoで所得控除を活用
- 60歳までに使う可能性がある資金→NISAで運用
- 確実に老後まで使わない資金→iDeCoで運用
年収が高い人ほど、iDeCoの節税効果は大きくなります。年収800万円以上の方なら、iDeCoを最優先で検討する価値があるでしょう。
一方、年収が低めの方や、住宅購入・教育費などで将来お金が必要になる可能性がある方は、NISAを優先するのが無難です。
4. 運用商品の選び方
iDeCoを始める際、多くの人が悩むのが「どの商品を選べばいいの?」という点です。
投資初心者の方には、以下のような商品がおすすめです:
- バランス型ファンド:株式と債券を組み合わせた商品。リスクを抑えつつリターンも狙える
- インデックスファンド:日経平均やS&P500などの指数に連動する商品。手数料が安い
- ターゲットイヤーファンド:年齢に応じて自動的にリスクを調整してくれる商品
最初は定期預金などの元本確保型商品を選ぶ人も多いですが、長期運用ではインフレに負けてしまう可能性があります。多少のリスクを取ってでも、投資信託で運用する方が老後資金は増やせるでしょう。
ただし、あくまで自分のリスク許容度に合わせて選ぶことが大切です。夜も眠れないほど心配になるような投資は、長続きしません。
5. オンライン手続きの活用
拠出額の変更手続きは、オンラインで実施できる金融機関のサービスが、2025年10月頃から順次開始されています。
ネット証券などでは、スマホやパソコンから簡単に手続きができるようになっています。紙の書類を郵送するより圧倒的に早いので、ぜひ活用しましょう。
主要なネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)は、iDeCoの口座管理手数料が業界最安値水準で、商品ラインナップも豊富です。金融機関選びに迷ったら、これらのネット証券から選ぶのがおすすめです。
まとめ
2026年12月から始まるiDeCo改正と、2026年4月から先行実施されるマッチング拠出改正は、私たちの老後資金づくりを大きく後押ししてくれる制度変更です。特に会社員の方にとっては、拠出上限額が2.5倍以上になるという、見逃せない改正となっています。
改正の3大ポイントをもう一度おさらいしましょう。1つ目はiDeCoの拠出限度額引き上げです。会社員は月額2万3000円から6万2000円へ、自営業者は月額6万8000円から7万5000円へと増額されます。年収600万円の会社員なら、年間の節税額が約5万5000円から約14万8000円へと大幅アップします。
2つ目はiDeCoの加入年齢延長です。誰でも70歳まで加入できるようになることで、より長期間の資産形成が可能になります。40歳から70歳まで30年間運用すれば、元本2232万円に対して運用益が約1380万円、運用益の非課税メリットだけで276万円もの節税効果が得られる計算です。
3つ目はマッチング拠出の上限撤廃です。2026年4月から、会社の拠出額に関わらず月5.5万円(2027年1月以降は月6.2万円)まで上乗せできるようになります。勤務先にマッチング拠出制度がある方は、iDeCoとどちらを選ぶか検討する価値があるでしょう。
NISAが注目を集める中、iDeCoやマッチング拠出は少し地味な存在かもしれません。しかし、掛金の全額所得控除という強力な節税メリットは、NISAにはない大きな魅力です。老後の安心のために、今からiDeCoやマッチング拠出の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
改正の実施は2026年4月(マッチング拠出)と2026年12月(iDeCo)ですが、手続きはそれより前から始まる見込みです。すでに加入している方は増額手続きの準備を、まだの方は口座開設を検討してみましょう。人生100年時代を安心して過ごすために、iDeCoとマッチング拠出は心強い味方になってくれるはずです。
