【インデックス投資の教科書㉒】失敗しないインデックスファンド選び!3つの重要チェックポイント

インデックス投資の教科書

前回は、私たちがインデックス投資を行う上で利用する「投資信託」の基本的な仕組みと、その運用方針によって「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2種類に大別されることを学びました。

この連載で主眼を置いているのは、市場平均との連動を目指す「インデックスファンド」です。低コストで分かりやすく、手間もかからないため、特に投資初心者の方におすすめの選択肢でしたね。

さて、今回は一歩進んで、「じゃあ、世の中にたくさんあるインデックスファンドの中から、具体的にどれを選べばいいの?」という疑問にお答えします。

実は、例えば「S&P500に連動するインデックスファンド」や「全世界株式に連動するインデックスファンド」といったように、同じ指数(ベンチマーク)を目指す商品でも、複数の運用会社から様々なファンドが提供されています。どれを選んでも同じ、というわけではありません。

今回は、失敗しないインデックスファンド選びのために、必ずチェックしておきたい3つの重要なポイントについて解説していきます。

チェックポイント①:最重要!「信託報酬(コスト)」の低さ

インデックスファンドを選ぶ上で、最も重要と言っても過言ではないのが、運用にかかるコスト、特に「信託報酬」の低さです。

信託報酬とは、投資信託を保有している間、その運用や管理の対価として、私たちの資産(信託財産)から毎日少しずつ差し引かれていく費用のことです。いわば、ファンドの「維持費」のようなものですね。

なぜ、これがインデックスファンド選びで最重要なのでしょうか?

理由はシンプルです。インデックスファンドは、その名の通り、特定の市場指数(ベンチマーク)に連動することを目指しています。つまり、同じ指数に連動するインデックスファンドであれば、その運用成果(リターン)自体には、本来それほど大きな差は出にくいはずなのです。

しかし、信託報酬というコストは、確実に私たちのリターンから差し引かれます。たとえ同じ運用成果だったとしても、信託報酬が高いファンドを選んでしまうと、その分だけ手元に残るリターンが少なくなってしまいます。

特に、長期投資においては、このコスト差の影響は無視できません。例えば、年率0.1%の信託報酬差でも、10年、20年、30年と積み重なれば、最終的な資産額に何十万円、場合によっては何百万円もの差を生む可能性があるのです。(第3回参照)

近年、インデックスファンドの低コスト競争は非常に激しくなっており、信じられないほど低い信託報酬のファンドも登場しています。同じ指数に連動するファンドが複数ある場合は、迷わず、できる限り信託報酬が低いものを選ぶ。これがインデックスファンド選びの基本中の基本であり、鉄則と言えます。

(なお、信託報酬以外にも、売買委託手数料や監査費用といった、目論見書には直接記載されない「隠れコスト」が存在します。これらを含めた「実質コスト」も重要ですが、その点については次回以降で詳しく触れたいと思います。)

チェックポイント②:ファンドの規模と安定性「純資産総額」

次に確認したいのが、「純資産総額」です。これは、その投資信託に、現在どれくらいの資金が集まっているかを示す指標で、ファンドの「規模」を表します。

なぜ純資産総額が重要なのでしょうか?

一つ目の理由は、ファンドの安定性です。一般的に、純資産総額が大きいファンドほど、多くの投資家から支持され、資金が集まっていることを意味します。資金が潤沢にあれば、運用会社も効率的な運用(例えば、指数に連動させるための頻繁な銘柄入れ替えや、大口の売買など)を行いやすくなり、結果として運用が安定しやすいと考えられます。

二つ目の理由は、「繰上償還」のリスクです。繰上償還とは、純資産総額があまりにも小さくなってしまったり、減少し続けたりすると、ファンドの運用を継続することが困難になり、当初の予定よりも早く運用を終了してしまうことです。繰上償還されると、その時点での時価で強制的に換金されてしまうため、もし価格が下落しているタイミングであれば損失が確定してしまいますし、長期的な運用計画も狂ってしまいます。

では、どれくらいの純資産総額があれば安心なのでしょうか?明確な基準があるわけではありませんが、一般的には、数十億円、できれば数百億円以上の規模があれば、比較的安定した運用が期待でき、繰上償還のリスクも低いと考えられます。

また、単に現在の純資産総額が大きいだけでなく、資金が継続的に流入し、「増加傾向にあるか」どうかも、そのファンドの人気度や将来性を測る上で参考になるでしょう。

チェックポイント③:「運用実績」は参考程度?指数との連動性を確認

三つ目のチェックポイントは、「過去の運用実績(リターン)」です。もちろん、過去にどれくらいの成果を上げてきたかは気になるところですよね。

しかし、運用実績を見る際には注意が必要です。投資の世界の鉄則として、「過去の運用実績は、将来の運用成果を保証するものではない」ということを、まず念頭に置かなければなりません。過去に成績が良かったからといって、今後も同じように良い成績が続くとは限らないのです。

特にインデックスファンドの場合、アクティブファンドほど過去のリターンの高さを重視する必要はありません。なぜなら、インデックスファンドの目的は「市場平均(指数)に連動すること」だからです。

ですから、インデックスファンドの運用実績を見る際に、より重要なのは「リターンがどれだけ高かったか」ということよりも、「連動を目指している指数(ベンチマーク)の動きと、実際のファンドの基準価額の動きが、どれだけ一致しているか」ということです。指数ときちんと連動できていれば、そのインデックスファンドは役割を果たしていると言えます。指数から大きくかい離(離れてしまうこと)しているようなファンドは、運用がうまくいっていない可能性があり、避けた方が無難かもしれません。この指数との連動性の度合いは、「トラッキングエラー」という指標で示されることもあります。

また、設定されてからまだ日が浅いファンドは、十分な運用実績データがないため、判断が難しい場合がある点にも留意しましょう。

3つのポイントで賢く選ぼう!最終的な決め手は?

ここまで、インデックスファンドを選ぶ上で重要な3つのチェックポイントを見てきました。

  1. 信託報酬(コスト)の低さ:最重要!できるだけ低いものを選ぶ。
  2. 純資産総額:規模が大きく、増加傾向にあるかを確認し、安定性と継続性を見る。
  3. 運用実績(指数との連動性):過去のリターンよりも、ベンチマークにきちんと連動しているかを確認する。

これらのポイントを総合的に比較検討し、ご自身が投資したい指数(例えば、全世界株式、S&P500、TOPIXなど)に連動するファンドの中から、ベストな選択肢を見つけていくことになります。

中でも、繰り返しになりますが、長期的なリターンに最も直接的に影響を与えるのは「信託報酬の低さ」です。迷ったときは、まずコストを比較することを強くお勧めします。

これらの情報は、投資信託の「月次レポート」や「(交付)目論見書(もくろみしょ)」といった資料、あるいは各証券会社のウェブサイトなどで確認することができます。少し専門的な用語も出てきますが、慣れてくれば比較できるようになりますよ。

最終的には、これらの客観的なデータに加え、ご自身の投資方針や、利用している証券会社での取り扱い状況、ポイントプログラムの有無なども考慮に入れながら、総合的に判断し、「これなら納得できる!」と思えるファンドを選んでくださいね。

まとめ:低コスト・安定性・連動性でファンドを選ぼう!

第22回の今回は、数多くあるインデックスファンドの中から、自分に合ったものを選ぶための具体的な3つのチェックポイントについて解説しました。

  1. 信託報酬:最も重要。できる限り低いものを選ぶ。
  2. 純資産総額:ファンドの規模と安定性の目安。大きく増加傾向が望ましい。
  3. 運用実績:過去のリターンより、指数への連動性を重視する。

これらのポイントを参考に、ぜひご自身でファンド情報を比較検討してみてください。納得のいくファンド選びが、長期的な資産形成の成功につながります。

さて、インデックスファンド選びで最も重要な「コスト」について、もう少し深掘りしておきたい点があります。次回は、目に見える信託報酬だけでなく、「隠れコスト」も含めた実質的なコストについて解説します。

次回の第23回は、「投資においてコストはコントロールできる(隠れコストを含む実質コストが重要)な理由」と題して、なぜコスト管理が重要なのか、そして信託報酬だけでは見えないコストについても解説していきます。お楽しみに!

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