【インデックス投資の教科書⑪】世界まるごと投資を簡単に!グローバルインデックスファンドとは?

インデックス投資の教科書

前回は、特定の国や地域に偏らず、広く「世界経済全体」の成長に投資することの意義と合理性についてお話ししました。カントリーリスクを分散し、予測困難な未来に対して、より確実性の高いリターンを目指すアプローチでしたね。

「なるほど、世界に投資するメリットは分かったけど、じゃあ具体的にどうやって始めたらいいの?」 「世界中の株なんて、個人で買うのは難しそう…」

そう思われた方も多いのではないでしょうか。

今回のテーマは、まさにその疑問にお答えするものです。その「世界まるごと投資」を、私たち個人投資家、特に初心者でも、驚くほど簡単に、そして手軽に実現できる素晴らしいツール、それが「グローバルインデックスファンド」なのです。

世界投資、どうやって始める?

もし個人で「世界まるごと投資」を実践しようとしたら、どうなるでしょうか?

アメリカの有名企業の株、ヨーロッパの安定企業の株、これから成長しそうなアジアの国の株…など、世界中のたくさんの国の、たくさんの企業の株を自分で選んで、それぞれの国の証券取引所で、それぞれの国の通貨を使って売買する必要があります。

これには、

  • 各国の経済や企業に関する膨大な情報収集
  • 言語の壁
  • 為替レートの変動リスクへの対応
  • 各国での口座開設や取引の手間、高い手数料

など、考えただけでも気が遠くなるような、たくさんのハードルが存在します。正直、普通の個人投資家がこれを実行するのは、現実的ではありませんよね。

そこで登場するのが、「投資信託(ファンド)」という仕組み、特に今回ご紹介する「グローバルインデックスファンド」なのです。

グローバルインデックスファンドってどんなもの?

グローバルインデックスファンドとは、その名の通り、「グローバル(=全世界)の市場の動きを示す指数(インデックス)に連動することを目指す投資信託」のことです。

世界全体の株式市場の平均的な動きを示す代表的な指数(ベンチマークとも呼ばれます)としては、例えば以下のようなものがあります。

  • MSCI ACWI(All Country World Index):先進国と新興国合わせて約50カ国の大型株・中型株、約3,000銘柄で構成される指数。
  • FTSE Global All Cap Index:先進国・新興国合わせて約50カ国の大型・中型・小型株まで含んだ、約9,000銘柄以上で構成される、より網羅的な指数。

グローバルインデックスファンドは、これらの指数に含まれる非常に多くの国の、非常に多くの企業の株式を、指数と同じような構成比率で保有するように運用されています。

つまり、あなたがすることは、このグローバルインデックスファンドを一つ購入するだけ。それだけで、あたかも世界中の何千もの企業に、自動的に、しかも適切な割合で分散投資しているのと同じ効果が得られるのです。

日本で投資家から人気を集めている具体的なファンドとしては、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などが挙げられますね。(これはFTSE Global All Cap Indexに連動を目指すファンドです。)

たった一つの商品を買うだけで、世界中の経済成長の恩恵を受けられる可能性があるなんて、すごい仕組みだと思いませんか?

なぜ魅力的?グローバルインデックスファンドのメリット

このグローバルインデックスファンドには、特に投資初心者にとって嬉しいメリットがたくさんあります。

  1. 究極レベルの「分散投資」を手軽に実現 最大の魅力はこれでしょう。一つのファンドで、自動的に多数の国・地域、多数の業種、数千もの個別銘柄に分散投資できます。さらに、投資先の通貨も円だけでなく、ドル、ユーロなど多様な通貨に分散されることになります。これにより、特定の国や企業が不調になった場合のリスクを、極限まで低減することが期待できます。これほどの分散を個人で行うのは不可能です。
  2. 低コストな商品が多い インデックスファンド全般に言えることですが、特定の指数に連動させるというシンプルな運用方針のため、ファンドマネージャーが銘柄調査に奔走するアクティブファンドに比べて、運用コスト(信託報酬)が非常に低く抑えられている商品が多いです。長期投資において、コストの低さはリターンを押し上げる重要な要素になります。
  3. 運用管理の手間がほとんどかからない どの国の株をどれくらいの割合で持つか、といった国別のアセットアロケーションや、株価変動によって崩れた比率を元に戻すリバランスなども、基本的にはファンドの内部で自動的に行ってくれます(※ファンドによりますが、全世界株式ファンドの多くはこの機能を持っています)。あなたは最初にファンドを選んで購入(または積立設定)するだけで、あとは基本的に「ほったらかし」でも、常に世界市場全体への投資を維持できるのです。
  4. 世界経済の成長をシンプルに取り込める 「どの国が伸びるか」といった難しい予測をする必要がありません。「世界経済全体は長期的には成長するだろう」という、シンプルで分かりやすい考え方に基づいて、その成長の果実を享受することを目指せます。

これらのメリットから、グローバルインデックスファンドは、忙しい現代人や、投資にあまり手間や時間をかけたくない人、そしてもちろん投資初心者にとって、非常に合理的な選択肢と言えるのです。

選ぶときのポイントは?(簡単なヒント)

「グローバルインデックスファンドが良いのは分かったけど、色々種類がありそうで、どれを選べばいいの?」

確かに、全世界の株式市場に連動を目指すファンドにも、いくつか種類があります。詳細な選び方は今後の連載で改めて解説しますが、ここでは簡単なチェックポイントを3つだけ挙げておきますね。

  1. 連動を目指す「指数(ベンチマーク)」の種類 どの指数に連動するかによって、含まれる国や銘柄数、大型株中心か小型株まで含むか、などの違いがあります。例えば、MSCI ACWIとFTSE Global All Cap Indexでは、後者の方が小型株まで含んでいる分、より広範な分散が効いていると言えます。どちらが良いかは一概に言えませんが、その違いを理解しておくと良いでしょう。
  2. 「信託報酬(運用コスト)」の低さ これはインデックスファンド選びの鉄則です。同じような指数に連動するファンドであれば、運用成果に大きな差は出にくいので、とにかくコストが低いものを選ぶのが基本です。わずかな差でも、長期ではリターンに大きな影響を与えます。
  3. 「純資産総額」の規模 そのファンドにどれくらいの資金が集まっているかを示す指標です。純資産総額が大きい方が、一般的に安定した運用が期待でき、途中で運用が終了してしまう「繰上償還」のリスクも低いと考えられます。一つの目安として確認しましょう。

まずはこれらの点を比較検討して、ご自身が納得できるファンドを探してみてください。

グローバル投資へのパスポートを手に入れよう

今回の話をまとめると、グローバルインデックスファンドは、

  • 1本で世界中の多数の国・企業に分散投資できる
  • 低コストで運用できるものが多い
  • 運用に手間がかからない
  • 世界経済全体の成長を取り込める

という、非常に魅力的な特徴を持った投資信託です。

これは、特に投資初心者にとって、複雑な手続きや専門知識を必要とせずに「国際分散投資」という、投資の王道とも言える戦略を実践するための、強力な「パスポート」のようなものと言えるでしょう。

「難しいことは考えずに、まずはシンプルに世界経済の成長に投資してみたい」 そう考える方には、まさにうってつけの選択肢です。

このグローバルインデックスファンドを、あなたの投資ポートフォリオの中核(コア)に据えて、長期的な視点で資産形成に取り組んでいく、というのも非常に有効な戦略の一つですよ。

まとめ:世界への扉を開くグローバルインデックスファンド

第11回の今回は、前回お話しした「世界まるごと投資」を、誰でも簡単に実現できるツール、「グローバルインデックスファンド」について、その仕組みやメリット、簡単な選び方のヒントを解説しました。

  • グローバルインデックスファンドとは:全世界の株式市場などの動きに連動を目指す投資信託。
  • メリット:1本で究極の分散投資(国・地域・通貨・銘柄)が可能、低コスト、手間いらず、世界経済の成長を享受。
  • 選び方のヒント:連動指数、信託報酬、純資産総額などをチェック。
  • 初心者への価値:国際分散投資を始めるための手軽で強力なツールであり、「コア」戦略にも適している。

グローバルインデックスファンドは、あなたの資産形成の可能性を、日本国内から世界へと大きく広げてくれる存在です。

さて、世界に広く分散投資することの重要性が分かりましたね。次回は、分散投資そのものについて、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

次回の第12回は、「分散投資の重要性:リスクを低減させるための考え方」と題して、なぜ分散投資がリスク管理の基本とされるのか、その効果や具体的な考え方について、改めて詳しく解説します。お楽しみに!

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