【インデックス投資の教科書⑫】投資のキホン!分散投資はなぜ重要?卵はひとつのカゴに盛るな!

インデックス投資の教科書

前回は、「グローバルインデックスファンド」を活用することで、世界中に簡単に分散投資できる、というお話をしました。インデックス投資の大きな魅力の一つが、この「分散」を手軽に実現できる点にあるんですね。

さて、今回は、投資の世界で繰り返しその重要性が説かれる「分散投資」について、なぜそれが投資の基本原則なのか、そして、どのようにリスクを低減させるのか、その仕組みを改めて基礎からしっかりと理解していきましょう。

「卵は一つのカゴに盛るな」投資の格言を思い出そう

投資について少しでも学んだことがある方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。

「Don’t put all your eggs in one basket.」 (すべての卵を一つのカゴに盛るな)

これは、投資の世界における非常に有名な格言です。もし、持っている卵を全部一つのカゴに入れて運んでいて、そのカゴを落としてしまったら、すべての卵が割れてしまうかもしれません。でも、複数のカゴに分けて入れておけば、たとえ一つのカゴを落としても、他のカゴの卵は無事ですよね。

投資もこれと同じ考え方です。 大切な資金を、たった一つの投資先(例えば、特定の会社の株)に集中させてしまうと、もしその投資先がダメになった場合、大きな損失を被ってしまいます。しかし、投資先を複数に分けておけば(=分散投資)、一つの投資先が不調でも、他の投資先が好調であれば、全体としての損失を抑えることができる、というわけです。

これが、分散投資の基本的な考え方であり、重要性を示す分かりやすい例え話です。

なぜ分散するとリスクが減るの?そのメカニズム

では、もう少し具体的に、なぜ投資先を分散させるとリスク(価格変動の振れ幅)が低減されるのでしょうか?そのメカニズムを見てみましょう。

ポイントは、値動きの異なるものを組み合わせることにあります。

例えば、一般的に株式と債券は異なる値動きをする傾向がある、という話を以前にしましたね。(第9回参照)

  • 株式100%のポートフォリオ:景気が良いときは大きく値上がりするかもしれませんが、景気が悪くなると大きく値下がりする可能性もあります。値動きの幅(リスク)は大きくなります。
  • 株式50%・債券50%のポートフォリオ:株式が大きく値下がりする局面でも、比較的値動きの安定している債券がその下落を和らげてくれる(クッション効果)可能性があります。逆に、株式が大きく値上がりする局面では、債券部分があるために上昇幅は株式100%よりは抑えられますが、全体としてはより安定的な値動きが期待できます。

このように、異なる値動きをする傾向のある資産を組み合わせることで、お互いの不得意な部分を補い合い、ポートフォリオ全体の値動きの振れ幅を小さくすることができるのです。これを「ポートフォリオ効果」と呼んだりもします。

もし、一つの資産だけに集中投資していたら、その資産が不調になったとき、あなたの資産全体が大きなダメージを受けてしまいます。しかし、分散投資をしていれば、一部の資産が不調でも、他の資産がそれをカバーしてくれることで、損失を限定的にし、精神的な負担も軽減することができるのです。

分散投資の「種類」を知ろう:何をどう分ける?

「分散投資が大事なのは分かったけど、具体的に何をどう分ければいいの?」

分散投資には、いくつかの「切り口」があります。主に以下の4つの分散を意識することが重要です。

  1. 資産クラスの分散 これが最も基本的な分散です。値動きの異なる主な資産、つまり「株式」「債券」「REIT(不動産)」「コモディティ(金など)」「現金・預金」などに資金を分けて投資することです。前回までにお話ししてきた「アセットアロケーション」は、まさにこの資産クラスの分散を考えることに他なりません。
  2. 地域の分散(国際分散) 投資対象を特定の国や地域(例えば日本だけ)に限定せず、複数の国や地域(アメリカ、ヨーロッパ、アジア、新興国など)に分けて投資することです。これにより、特定の国の経済が悪化したり、政情不安が起きたりする「カントリーリスク」を低減できます。第10回で、世界全体に投資する意義についてお話ししましたね。
  3. 銘柄の分散 同じ資産クラスの中でも、投資先を分散させます。例えば、株式投資なら、一つの会社の株だけに集中するのではなく、様々な業種の、多数の会社の株に分けて投資することです。これにより、特定の企業の業績悪化や倒産といったリスクを低減できます。
  4. 時間の分散 投資するタイミングを一度に集中させず、複数回に分けて行うことです。例えば、毎月決まった日に一定額ずつ投資していく「積立投資」がこれにあたります。価格が高いときには少なく、安いときには多く買うことになるため、平均購入単価を抑える効果(ドルコスト平均法)が期待でき、高値掴みのリスクを避けることができます。

これらの分散を効果的に組み合わせることで、より強固なリスク管理体制を築くことができるのです。

インデックス投資は「分散投資の優等生」である理由

ここまで読んで、「資産クラスも地域も銘柄も時間も分散するなんて、なんだかすごく大変そう…」と感じたかもしれません。

しかし、ここで思い出してほしいのが、私たちが学んでいる「インデックス投資」です。実は、インデックス投資、特に全世界の株式市場などを対象とする「グローバルインデックスファンド」は、これらの分散投資を驚くほど簡単に、そして効率的に実現してくれる「優等生」なのです。

なぜなら、

  • 多数の銘柄に自動で分散:インデックスファンドは、そもそも指数を構成する多数(時には数千!)の銘柄を組み入れています。一つのファンドを買うだけで、自動的に「銘柄の分散」が実現します。
  • 多数の国・地域に自動で分散:グローバルインデックスファンドなら、先進国から新興国まで、世界中の国・地域に投資対象が広がっています。これで「地域の分散(国際分散)」もクリアです。
  • 資産クラスの分散も可能:株式だけでなく、債券やREITなど、複数の資産クラスを組み合わせた「バランスファンド」と呼ばれるインデックスファンドを選べば、「資産クラスの分散」も一つの商品で実現できます。
  • 時間の分散も容易:多くの証券会社で、インデックスファンドの「積立投資」が簡単に設定できます。毎月自動で買い付けてくれるので、「時間の分散」も手間なく実践できます。

このように、インデックス投資を活用すれば、投資初心者であっても、専門家が実践するような高度な分散投資を、非常に低いコストと少ない手間で実現することが可能なのです。これこそが、インデックス投資が広く推奨される大きな理由の一つと言えるでしょう。

分散投資は「万能薬」ではない?注意点も理解しよう

分散投資は、リスクを管理する上で非常に強力なツールですが、決して「万能薬」ではありません。いくつか注意しておきたい点もあります。

  1. リスクをゼロにはできない 分散投資で低減できるのは、主に特定の資産や銘柄、地域に固有のリスク(個別リスク、非システマティックリスク)です。しかし、市場全体が同時に下落するようなリスク(市場リスク、システマティックリスク)は、いくら分散しても完全には避けられません。例えば、世界的な金融危機が起これば、どんなに分散されたポートフォリオでも、ある程度の損失は免れない可能性があります。
  2. リターンも平均化される リスクを抑える効果があるということは、裏を返せば、リターンも「平均化」される傾向があるということです。もし、特定の銘柄や地域への集中投資が大当たりすれば、短期間で莫大なリターンを得ることも可能ですが、分散投資ではそのような「ホームラン」は期待しにくくなります。分散投資は、大きな失敗を避ける代わりに、大きな成功の可能性も手放す、という側面があることも理解しておきましょう。
  3. やりすぎは逆効果も? 分散の考え方は重要ですが、むやみやたらに投資先のファンドを増やしすぎると、かえってポートフォリオ全体の管理が複雑になったり、それぞれのファンドでかかるコスト(信託報酬など)が積み重なってしまったりする可能性もあります。インデックス投資であれば、少数の優れたファンド(例えば、全世界株式ファンド1本など)でも十分に分散効果が得られる場合が多いです。

これらの注意点を理解した上で、それでもやはり、長期的な資産形成を目指す上では、分散投資は非常に有効で合理的な戦略です。リスクを完全に消すことはできなくても、コントロール可能な範囲に抑え、安定的に資産を育てていくための、最も基本的な考え方と言えるでしょう。

まとめ:分散投資でリスクと上手に付き合おう

第12回の今回は、投資の基本原則である「分散投資」について、その重要性とリスク低減の仕組み、そして具体的な種類について解説しました。

  • 分散投資とは:「卵は一つのカゴに盛るな」の格言通り、投資先を複数に分けることでリスクを低減させる考え方。
  • リスク低減の仕組み:異なる値動きをする資産を組み合わせることで、全体の変動をマイルドにする。
  • 分散の種類:資産クラスの分散、地域の分散、銘柄の分散、時間の分散がある。
  • インデックス投資の優位性:これらの分散投資を、初心者でも手軽に、低コストで実現できる。
  • 注意点:リスクはゼロにならず、リターンも平均化される。過度な分散は逆効果も。

分散投資は、投資における不確実性(リスク)と上手に付き合っていくための、賢明なアプローチです。インデックス投資を活用し、効果的な分散を図ることで、より安心して長期的な資産形成に取り組むことができるでしょう。

さて、分散投資の重要性を再確認したところで、次回は少し視点を変えて、「国際分散投資は最強ではないが合理的な投資手法である理由」について考えてみたいと思います。分散は基本ですが、それが常に「最強」とは限らない?そのあたりを深掘りしていきます。お楽しみに!

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