最近、ニュースを見れば「円安」の話題で持ちきりですよね。「海外旅行に行きたいけど、円安だから高くつなあ…」「輸入品がどんどん値上がりして、お財布が厳しい…」なんて感じている人も多いんじゃないでしょうか。
そんな中、2024年から始まった新NISA。多くの人が「おトクな制度だから」と始めていると思いますが、実はこんなウワサを聞いたことはありませんか?
「みんなが新NISAで海外の株を買うから、円が売られて円安が進んでいるんだ」
確かに、ぼくもそう思っていました。日本の個人投資家が、新NISAを使って一斉にアメリカなどの海外資産に投資する。そのために円を売って外貨(ドルなど)を買うから、円の価値が下がって円安になる…。なんだか、もっともらしい話ですよね。
ところが、です。 その「通説」が、どうやら変わりつつあるようなんです。
2025年7月10日にロイターで報じられたニュースによると、これまでの「新NISAマネー=一方的な円売り圧力」という見方に変化が見られる、というのです。

この記事では、「え、そうなの?」「じゃあ、ぼくたちの投資行動って、為替にどういう影響を与えているの?」という疑問を、投資初心者の方にも分かりやすく、そして詳しく解説していきます。
この記事を読み終わるころには、
- なぜ「新NISAが円安の原因」と言われていたのか
- 最新のデータから見える、個人投資家の新しい動き
- これからの為替とどう向き合って投資をしていけばいいのか
が、スッキリ理解できるはずです。一緒に、賢い投資家への一歩を踏み出しましょう!
そもそも、なぜ「新NISAが円安を招く」と言われていたの?
まず、基本のキからおさらいしましょう。「なんで新NISAで海外の株を買うと、円安につながるの?」という部分です。ここを理解すると、今回のニュースの面白さがグッと増しますよ。
◆ 円を売って、ドルを買うということ
ぼくたちが日本で生活していると、当たり前ですが日本円を使いますよね。でも、例えばアメリカのAppleやNVIDIAの株を買いたい!と思ったら、日本円では直接買えません。一度、日本円を米ドルに両替してから、そのドルで株を買う必要があります。
この「円をドルに両替する」という行為、為替市場では**「円を売って、ドルを買う」**と表現されます。
市場では、モノの値段が需要と供給で決まるのと同じで、通貨の価値も「買いたい人」と「売りたい人」のバランスで決まります。
- 円を売りたい人 > 円を買いたい人 ⇒ 円の価値が下がる(円安)
- 円を買いたい人 > 円を売りたい人 ⇒ 円の価値が上がる(円高)
つまり、たくさんの人が新NISAを使ってアメリカの株(投資信託を含む)を買おうとすると、「円を売りたい人」がどんどん増えるわけです。これが、円安圧力になる、と考えられていました。
◆ 長期・積立だから「一方通行」だと思われていた
さらに、NISAという制度の特性も、この「円安圧力」説を後押ししていました。
NISAは、本来「長期的な資産形成」を応援するための制度です。毎月コツコツと同じ投資信託を積み立てていく…という使い方をしている人が多いですよね。
そのため、専門家の間では、
「個人投資家は一度決めた積立投資を、相場がどうなろうと淡々と買い続けるだろう」 「つまり、毎月、安定的に、円を売って外貨を買う動きが続くことになる」
と考えられていたんです。 これが、新NISAによる「構造的な円安圧力」や「底流にある円安要因」と言われる理由でした。一度流れ始めたら止まらない、一方通行の大きな川のようなイメージですね。
ぼくも、「なるほど、ぼくの毎月の積立も、円安の一因になってるのかもなあ」なんて思っていました。しかし、最新のデータは、ぼくら個人投資家が、そんな単純な「一方通行」の動きだけをしているわけではないことを示し始めたのです。
【最新データ】通説に変化!「売り」の動きも活発化していた
さて、ここからが本題です。これまでの「新NISA=円安の一方通行」という通説が、なぜ揺らぎ始めたのでしょうか。そのカギは、財務省が発表した最新のデータに隠されていました。
◆ 「買い」だけでなく「売り」も増えていた衝撃
財務省は毎月、「対外及び対内証券売買契約等の状況」という、ちょっと難しい名前の統計を発表しています。これは、日本の投資家が海外の株や債券をどれくらい買ったり売ったりしたかを示す、いわば「日本と海外のお金のやり取りの成績表」のようなものです。
この中で、特に新NISAの動向を反映すると言われているのが、「投資信託委託会社」による「株式・投資ファンド持ち分」という項目です。
2025年6月のデータを見てみると、確かに**5,193億円の「買い越し」**でした。
【かんたん解説】買い越しとは?
「買い越し」とは、買った金額(取得)から売った金額(処分)を差し引いた結果、プラスになっている状態のことです。つまり、売った量よりも買った量の方が多い、ということです。
「なんだ、やっぱり買い越してるじゃないか。円安圧力は続いてるってこと?」 そう思いますよね。ぼくも最初そう思いました。
しかし、注目すべきはその中身です。 実は、前年同月(2024年6月)の買い越し額は1兆5億円でした。それに比べると、2025年6月の買い越し額はほぼ半分に減っているんです。
そして、その理由は「買う人が減ったから」ではありませんでした。 なんと、「買う量(取得)」はあまり変わらないのに、「売る量(処分)」が約5,000億円も増えていたのです!
さらに、2025年の上半期(1月~6月)で見ると、もっと驚きの事実が。
- 買った金額(取得):前年比で約3兆円増加
- 売った金額(処分):前年比でなんと約4兆円も増加!
これは何を意味するのでしょうか? そうです、ぼくら個人投資家は、ただ黙々と海外資産を「買い続けている」だけではなかった、ということです。相場の状況を見ながら、持っている海外資産を「売る」という行動も、非常に活発に行っていたのです。
これは、専門家たちが想定していた「一方通行の川」というイメージを覆す、大きな発見でした。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストも、構造的な資金流出(円売り)は続いているとしつつも、この新しい動きに注目しています。
個人投資家は、ただ流れに身を任せるだけじゃない。ちゃんと羅針盤を見て、時には流れに逆らってでも舵を切る、たくましい船乗りだった、ということなのかもしれません。
個人投資家の新戦略?「逆張り」が為替の安定装置になる未来
「買う」だけでなく「売る」動きも活発化していることが分かりました。では、個人投資家は一体、どんなタイミングで売買をしているのでしょうか?そのキーワードが**「逆張り」**です。
◆ 相場の流れを読む「逆張り」投資とは?
「逆張り(ぎゃくばり)」という言葉、聞いたことがありますか? これは、投資手法の一つで、市場の大多数の投資家とは反対の行動をとることを指します。
- 相場が下がっている時(みんなが不安で売っている時)に、あえて**「買う」**
- 相場が上がっている時(みんなが熱狂して買っている時)に、あえて**「売る」**
まさに、相場の流れに「逆らって張る」投資スタイルです。 今回のニュースで、ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は、日本の個人投資家がこの「逆張り」を、非常に機動的に行っている可能性を指摘しています。
◆ データが示す「逆張り」の証拠
もう一度、データを見てみましょう。 2025年の3月から4月にかけて、個人投資家による海外資産の「取得(購入)」が、過去最大規模に膨れ上がりました。
- 3月の取得額: 4兆2,286億円
- 4月の取得額: 3兆8,818億円
この時期、アメリカの株価(S&P500種指数)はどうなっていたかというと、2月までの好調から一転して下落していました。同時に、為替もドル安/円高の傾向にあったんです。
つまり、 「海外の株価が下がった!」「円高で割安に買える!」 というタイミングを捉えて、多くの個人投資家が一斉に買い向かったと考えられます。まさに「逆張り」の買いです。
逆に、株価が上昇して利益が出た場面では、今度は「処分(売却)」を増やしている。これが、先ほど見た「売る量も増えている」というデータの正体だったわけです。
◆ なぜ、そんな器用なことができるの?
「でも、NISAって長期投資が基本じゃないの?短期で売買なんてしていいの?」 そう思いますよね。
確かに、毎月定額を積み立てる「つみたて投資枠」は、短期売買には向きません。しかし、新NISAにはもう一つ、年間240万円まで使える「成長投資枠」があります。この枠を使えば、個別株や、より幅広い投資信託を、自分の好きなタイミングで売買できます。
おそらく、多くの個人投資家がこの「成長投資枠」をうまく活用して、相場の潮目を読んだ機動的な売買を行っているのでしょう。
◆ 個人投資家が「為替の安定装置」になる?
この「逆張り」の動きがもっと広がると、為替市場に面白い影響を与える可能性があります。
- 円高・海外株安が進むと… ⇒ 個人投資家の「逆張り買い」が増える(円を売って外貨を買う動き) ⇒ これ以上、円高が進むのを抑える効果が期待できる
- 円安・海外株高が進むと… ⇒ 個人投資家の「利益確定売り」が増える(外貨を売って円に換える動き) ⇒ これ以上、円安が進むのを抑える効果が期待できる
つまり、ぼくら個人投資家一人ひとりの「逆張り」的な投資行動が、行き過ぎた円高や円安をマイルドにする「調整弁」や「安定装置」のような役割を果たすかもしれない、ということです。
自分たちの投資が、日本経済の安定に少しだけ貢献しているのかも…と考えると、なんだかワクワクしてきませんか?
【結論】じゃあ、ぼくら投資初心者はどうすればいいの?
さて、これまでの話を踏まえて、ぼくら投資初心者はこれからどう行動していけば良いのでしょうか。 「逆張りがいいなら、すぐに真似した方がいいの?」と焦る必要はまったくありません。大切なポイントを3つにまとめました。
1.基本は「長期・積立・分散」を忘れない
まず、大前提として、資産形成の王道である「長期・積立・分散」の考え方は絶対に忘れないでください。
- 長期: 短期的な値動きに一喜一憂せず、10年、20年という長い目で資産を育てる。
- 積立: 毎月コツコツと定額を買い続けることで、購入単価を平準化させる(ドルコスト平均法)。
- 分散: 一つの国や資産に集中させず、色々なものに投資を分けてリスクを減らす。
今回のニュースは、この基本を否定するものでは全くありません。「つみたて投資枠」での毎月の積立は、これまで通り淡々と続けていくのが正解です。相場が下がったからといって怖くなってやめてしまうのが、一番もったいないですよ。
2.「利益確定(利確)」という選択肢も頭の片隅に
その上で、今回の学びを活かすとすれば、「利益を確定させる(利確)」という選択肢を、頭の片隅に置いておくことです。
例えば、「成長投資枠」で買っている投資信託や株式が、予想以上に大きく値上がりしたとします。その時に、「よし、ここで一度利益を確定させて、円に戻しておこう」と考えるのも、立派な戦略です。
今回のニュースで明らかになったように、賢い個人投資家たちは、株価が上がったタイミングで上手に売却しています。すべてを売る必要はありません。例えば、「利益が出ている分の一部だけ」を売却して、少しお小遣いを確保したり、次の投資の資金にしたりするのも良いでしょう。
NISA口座は一度売却しても、その非課税枠が翌年には復活します。この「枠の再利用」ができるようになったのが、新NISAの大きなメリット。これを活かさない手はありません。
3.自分の「リスク許容度」と相談する
「逆張り買い」や「利益確定売り」。これらは、ある意味で市場の動きを読む、少しアクティブな投資スタイルです。
大切なのは、自分自身がどれくらいのリスクを取れるのか(リスク許容度)をしっかり理解すること。
- 「相場が下がっても、将来を信じて買い続けられる」という人は、積立投資に集中するのが向いています。
- 「ある程度のリスクを取って、積極的に利益を狙いたい」という人は、成長投資枠で少しだけ逆張りを試してみるのも面白いかもしれません。
一番ダメなのは、周りの雰囲気に流されて、よく分からないまま売買してしまうことです。なぜ買うのか、なぜ売るのか。自分なりのルールを決めて、冷静に判断することが、投資の世界で長く生き残る秘訣です。
今回のニュースは、ぼくら個人投資家が、ただの「受け身」の存在ではなく、市場に影響を与えるほどの力を持った「賢いプレーヤー」になりつつあることを教えてくれました。
まとめ:あなたの投資が、為替の未来を変えるかも?
さて、今回は「新NISAが円安の原因」という通説が変わりつつある、というニュースを深掘りしてきました。 最後に、今日のポイントをまとめておきましょう!
- 通説:「新NISAで海外投資」→「円売り」→「円安」という一方通行の流れだと思われていた。
- 新事実:最新データでは、海外資産を「買う」動きだけでなく「売る」動きも非常に活発化していることが判明!
- なぜ?:個人投資家が相場の流れを読み、「株安・円高で買う」「株高・円安で売る」という「逆張り」的な売買を機動的に行っている可能性が高い。
- 未来:この動きが広がれば、個人投資家が「行き過ぎた円安・円高」を抑制する、為替の安定装置のような役割を果たすかもしれない。
- 私たちにできること:基本は「長期・積立・分散」。その上で、成長投資枠などを使い、利益が出た時に一部を「利確(売却)」する選択肢も頭に入れておくと、より賢い投資ができる。
これまで、為替のような大きな話は、国や巨大な金融機関だけが動かしているものだと思っていましたよね。でも、今回のニュースは、ぼくら一人ひとりの新NISAでの投資判断が、集まることで大きな力となり、為替市場の動向にまで影響を与えうることを示してくれました。
「新NISA=円安」という単純なレッテル貼りは、もう古いのかもしれません。
もちろん、これからも為替がどう動くかは誰にも分かりません。しかし、最新の情報を学び、自分の頭で考え、行動することで、どんな相場でもしなやかに対応できる「賢い投資家」に近づけるはずです。
あなたの小さな一歩が、日本の為替の未来を、少しだけ変えているのかもしれませんよ。