危険なブーム?専門家が警鐘を鳴らす「企業の仮想通貨備蓄」そのヤバい5つの理由

投資ニュース解説

最近、アメリカの株価(ダウ平均)が4万5000ドルを超えた!なんて景気の良いニュースが流れてきて、なんだかウキウキしますよね。でもその裏側で、仮想通貨(暗号資産)の世界では、ちょっと見逃せない、新しい大きな動きが起きているんです。

それが、「企業による仮想通貨の備蓄」。

まるで冬眠前のクマが木の実を集めるみたいに、企業がせっせと仮想通貨を買い集めているんです。

企業は仮想通貨を備蓄すべきか 「教祖」が鳴らす警鐘 - 日本経済新聞
23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比507ドル高の4万5010ドルで終えた。欧州連合(EU)が米国との通商交渉で日本に続くとの期待から、米景気への強気論が強まった。暗号資産(仮想通貨)相場は軟調に推移したものの、このとこ...

2025年7月23日のニュースによると、あの「ハイテクの女王」として有名な投資家、キャシー・ウッドさんが率いるARKインベストメント・マネジメントが、ビットマイン・イマーション・テクノロジーズという会社の株に、なんと約270億円も投資したことが分かりました。

「ビットマインってどんな会社?」って思いますよね。この会社、なんと「うちの会社、これからイーサリアムをたくさん買い集めます!」と宣言したんです。すでに10億ドル(約1500億円!)を超えるイーサリアムを持っていて、将来的には世の中にあるイーサリアムの5%を保有するという、とてつもない目標を掲げています。

【かんたん解説:イーサリアムって?】 ビットコインに次いで有名な仮想通貨のことだよ。ビットコインが「デジタル・ゴールド」なら、イーサリアムは契約などを自動で行える「スマートコントラクト」という機能を持つ「デジタル・プラットフォーム」のようなイメージ。いろんなサービスがイーサリアムの技術を使って作られているんだ。

このニュース、なんだかワクワクしませんか?「すごい投資家が注目するくらいだから、企業が仮想通貨を持つのは、これから当たり前になるのかも?」「こういう会社に投資すれば、ぼくたちも儲かるチャンスがあるんじゃない?」なんて期待しちゃいますよね。

でも、ちょっと待ってください。このブーム、本当に手放しで喜んでいいものなのでしょうか? 今回の記事では、この「企業の仮想通貨備蓄」ブームの背景と、専門家が鳴らす警鐘について、投資初心者のあなたにも分かりやすく、そして詳しく解説していきます。この記事を読めば、ブームの裏側にある本当のリスクが見えてくるはずですよ!

ブームの火付け役!「マイクロストラテジー」のすごい成功

さて、どうして今、たくさんの企業が「うちも仮想通貨を買うぞ!」と手を挙げ始めたのでしょうか?その背景には、一社のとんでもないサクセスストーリーがあります。

その会社の名は、「ストラテジー(旧マイクロストラテジー)」社。

この会社こそ、まさに「企業の仮想通貨保有」ブームの火付け役であり、先駆者なんです。率いているのは、ビットコインの超強気派として知られるマイケル・セイラー氏。彼のリーダーシップのもと、ストラテジー社は2020年から、会社の資産でひたすらビットコインを買い続けるという、前代未聞の戦略をスタートさせました。

その結果はどうだったと思いますか?

なんと、2025年7月23日時点で、同社が保有するビットコインの価値は719億ドル(日本円で約10兆7000億円!)にものぼり、運用益は15倍以上に達しているんです!

…じゅ、15倍!? 思わず二度見しちゃう数字ですよね。もはやソフトウェアの会社なのか、ビットコインの投資会社なのか分からないくらいですが、この驚異的な成功が、世界中の企業経営者たちに衝撃を与えました。

「あのストラテジー社が、あれだけ儲けているぞ!」 「うちも会社の余ったお金でビットコインを買えば、同じように大儲けできるんじゃないか?」

そう考える企業が続々と現れたのです。仮想通貨の情報を集めているサイト「Bitcoin Treasuries」によると、今やアメリカの上場企業だけで51社もが、会社の資産としてビットコインを保有しています。

【かんたん解説:どうして企業は仮想通貨を買うの?】 理由はいくつか考えられるよ。

  • インフレ対策: 現金(ドルなど)の価値がインフレで目減りするのを防ぐため、価値が上がると期待されるビットコインに変えておく。
  • 新たな資産クラス: これまでの株や債券とは違う、新しい投資先としてポートフォリオに組み込む。
  • 企業価値の向上: ストラテジー社のように、仮想通貨を保有することで株価が上がり、企業価値そのものを高める狙い。

投資家の視点から見ると、これは非常に魅力的に映ります。「この会社は仮想通貨を持っているから、将来価値が上がれば株価も爆上がりするかも!」と、期待に胸が膨らみますよね。実際に、最初に紹介したビットマイン社も、PayPal創業者のピーター・ティール氏が大株主であることが分かってから、株価が昨年末と比べて5倍以上に急騰しています。

このように、企業の仮想通貨保有は、株価を押し上げる強力なエンジンになる可能性を秘めているんです。でも、物語には必ず光と影があるもの。このキラキラした成功談の裏には、どんなリスクが潜んでいるのでしょうか?次のブロックで、専門家の厳しい意見に耳を傾けてみましょう。

専門家が「待った!」- 5つの危険な理由(前編)

ストラテジー社の華々しい成功を見て、「これはすごい!乗り遅れちゃダメだ!」と感じた人も多いかもしれません。でも、ウォール街には、この熱狂に冷ややかな視線を送る、とても有名な専門家がいます。

彼の名前は、アスワス・ダモダラン教授。ニューヨーク大学で教鞭をとる、企業価値評価(バリュエーション)の世界では「教祖」とまで呼ばれる超大物です。そんなダモダラン教授は、「企業が仮想通貨を備蓄するなんて、とんでもない!」と、5つの明確な理由を挙げて、このブームに強く警鐘を鳴らしているんです。

今回はそのうちの2つを、ぼくと一緒にじっくり見ていきましょう。

【理由1】会社のお金の「本来の目的」に反している

まず教授が指摘するのは、「そもそも、会社が持っている現金って何のためにあるの?」という根本的な問いです。

会社の現金(短期資金)は、急な支払いが必要になったり、業績が悪化したりといった、「もしもの事態」に備えるためのクッション、つまり「緩衝材」の役割を果たしています。これを専門用語で「流動性ショックに備える」と言います。

【かんたん解説:流動性ショックと緩衝材】

  • 流動性ショック: 「来月の給料が払えない!」「取引先への支払いが間に合わない!」みたいに、会社が急にお金が必要になってパニックになる状態のこと。
  • 緩衝材(かんしょうざい): 衝撃を和らげるクッションのこと。会社にとっての現金は、経営の衝撃を和らげる大切なクッションなんだ。

ところが、この大切なクッションである現金を、価格がジェットコースターのように変動する仮想通貨に変えてしまったらどうなるでしょう?

ダモダラン教授は、「それは緩衝材を失うだけでなく、自らリスクを増大させる行為だ」と厳しく指摘します。いざお金が必要になった時に、持っていた仮想通貨が暴落していたら…?クッションどころか、抱えた爆弾が爆発するようなものですよね。会社の安全を守るためのお金で、危険なギャンブルをするべきではない、というのが教授の考えなんです。

【理由2】本業が何だか分からなくなる

2つ目の理由は、「企業の成長ストーリーが曖昧になる」という点です。

例えば、あなたがすごい自動運転技術を開発しているIT企業に投資したとします。あなたは、その技術が世界を変える未来を信じて、株を買いました。

しかし、その会社がいつの間にか「イーサリアムを大量に買いました!」「ビットコインの価格が上がったので儲かりました!」と、仮想通貨の話ばかりするようになったらどう感じますか?

「あれ?この会社、本業の技術開発はちゃんとやってるのかな?」 「ぼくが投資したのは、テクノロジーの未来に対してであって、仮想通貨の投機に対してじゃないんだけど…」

と、不安になりますよね。ダモダラン教授が懸念しているのは、まさにこの点です。仮想通貨の運用に夢中になるあまり、会社が本来持っているはずの強みや、成長の物語が見えにくくなってしまうのです。投資家にとって、その会社が「何屋さん」なのか分からなくなってしまうのは、投資判断を非常に難しくさせる大きな問題なんです。

まずはここまで。会社の安全装置を外し、本業までおろそかにしかねない…教授の警告、なかなか手厳しいですよね。でも、話はまだ終わりません。残りの3つの理由を見ていきましょう!

まだある!専門家が語る危険な理由(後編)

さて、ダモダラン教授が企業の仮想通貨備蓄に「NO」を突きつける理由、前半の2つだけでも結構ドキッとしましたよね。後半はさらに核心に迫る内容です。残りの3つの理由を、引き続き分かりやすく解説していきますね!

【理由3】経営者は仮想通貨投資のプロではない

考えてみてください。革新的なソフトウェアを開発する天才プログラマーや、何万人もの従業員をまとめるカリスマ経営者がいたとします。彼らは、それぞれの分野では間違いなく「プロ」です。

では、彼らは仮想通貨の売買でも「プロ」なのでしょうか?

ダモダラン教授は、「IT企業や自動車メーカーの経営者が、仮想通貨の投資スキルを持っていると考える合理的な理由はない」とバッサリ。つまり、「餅は餅屋」ということわざ通り、本業でどれだけ優秀でも、畑違いの金融市場で勝ち続けられる保証はどこにもない、と指摘しているんです。

会社の将来を、経営者の個人的な「相場観」という不確かなものに賭けてしまうのは、あまりにも危険すぎる。それが教授の考えです。

【理由4】投資家に判断を任せるべき

これは、株主の権利という視点からの、非常に重要な指摘です。

もし会社に事業に使う以上のお金(余剰資金)があるなら、その使い道は誰が決めるべきでしょうか?

ダモダラン教授は、「そのお金は投資家に返して、どう使うかは投資家自身に判断させるべきだ」と主張します。会社が勝手に仮想通貨を買うのではなく、例えば配当金として株主に分配する。そして、その配当金を受け取った投資家が、「よし、このお金でイーサリアムを買おう!」とか「いや、自分はもっと安定した資産に投資したい」とか、各自のリスク許容度に応じて自分で判断すればいい、というわけです。

会社の独断でリスクの高い資産に投資するのは、株主から託されたお金の「使い方」として、果たして適切なのか?という厳しい問いかけですね。

【理由5】取引の透明性が低く、不正のリスクがある

最後の理由は、仮想通貨市場そのものが抱える問題点です。それは「透明性の低さ」。

株式市場と比べて、仮想通貨の取引はまだまだルールが未整備な部分が多く、誰が、いつ、どんな目的で売買しているのかが分かりにくい側面があります。

ダモダラン教授は、この不透明さが「自己取引や、それ以上に悪質な行為を引き起こすリスクがある」と警戒しています。

【かんたん解説:自己取引って?】 例えば、会社の役員が「会社がもうすぐビットコインを大量に買う」という内部情報を知っていて、その情報が公開される前に、自分個人の口座でこっそりビットコインを買い込んでおく、といった不正な行為のこと。インサイダー取引の一種だね。

会社の資金を使って仮想通貨を買うという名目で、実は関係者が裏でこっそり儲けている…なんてことが起きるかもしれない。そんな疑念を生むような不透明な投資は、そもそも企業が行うべきではない、というのが教授の最後の警告です。

以上、5つの理由を見てきました。どれも企業の長期的な健全性や、株主への誠実さを問う、本質的な指摘ばかりでしたね。では、このブームと警告の板挟みになって、僕たち投資家は一体どうすればいいのでしょうか?ぼくなりの結論をまとめてみたいと思います。

結論 – 僕たち投資家はどう向き合えばいい?

さて、企業の仮想通貨備蓄ブームの熱狂と、専門家からの厳しい警告、両方を見てきました。頭が少し混乱しちゃったかもしれませんね。

「結局、企業が仮想通貨を持ってるのは良いことなの?悪いのことなの?」 「ぼくたちは、これからどういう視点で投資先を選べばいいんだろう?」

最後に、この問題に対するぼくなりの考えと、明日からの投資に役立つ具体的なアクションプランをまとめてみたいと思います。

企業の買いは、むしろ市場を不安定にする?

まず、ダモダラン教授が最終的に何を言いたいのか、その核心に触れておきましょう。

教授は、「企業に仮想通貨を備蓄させたいと思っている投資家の多くは、企業が買うことで需要が増え、価格が上がることを期待している」と分析しています。確かに、マイクロストラテジーのような巨大な買い手が登場すれば、価格は上がりやすいですよね。

しかし、教授はここに大きな皮肉があると言います。

こうした投機的な買い(=企業の備蓄)が増えれば増えるほど、価格の変動(ボラティリティ)はより一層激しくなります。その結果、ビットコインやイーサリアムが、日常の支払いに使えるような「安定した通貨(現金の代替手段)」として社会に受け入れられる可能性は、むしろ低くなってしまう、と結論づけているのです。

良かれと思ってやったことが、逆に仮想通貨の未来の可能性を狭めてしまうかもしれない…なんとも皮肉な話ですよね。

投資家としての3つのアクションプラン

では、この複雑な状況を踏まえて、ぼくたち個人投資家は具体的にどう行動すればいいのでしょうか?3つのステップを提案します。

  1. 投資先の「仮想通貨チェック」をしよう! まずは、あなたが今投資している会社、あるいはこれから投資しようと考えている会社が、会社の資産として仮想通貨を保有しているか調べてみましょう。企業のIR情報(投資家向け情報)や決算資料を見れば、記載があるはずです。
  2. 「なぜ?」を考え、リスクを理解しよう! もし保有しているなら、「なぜこの会社は仮想通貨を持っているんだろう?」と考えてみることが大切です。
    • ストラテジー社のように、それを経営戦略の柱にしているのか?
    • それとも、単なる余剰資金の運用先の一つなのか? 前者であれば、その企業の株価は仮想通貨の価格と一蓮托生です。大きなリターンも期待できますが、暴落すれば会社の存続すら危うくなる超ハイリスク・ハイリターンな投資であることを理解する必要があります。
  3. 投資目的を切り分けよう! もしあなたが「仮想通貨の将来性に賭けたい!」と思っているなら、企業経由で間接的に投資するのではなく、自分で直接、仮想通貨取引所でビットコインやイーサリアムを買うのも立派な選択肢です。その方が、企業の経営リスクや、ダモダラン教授が指摘したような不透明なリスクを切り離して、純粋に仮想通貨の値上がりに投資できます。

企業の仮想通貨備蓄は、まだ始まったばかりの新しいトレンドです。ブームに乗って大きな利益を得るチャンスがある一方、その裏には専門家が指摘するような、見過ごせない大きなリスクがいくつも潜んでいます。

大切なのは、ブームに思考停止で乗っかるのではなく、その光と影の両方をしっかりと理解し、自分自身のリスク許容度と照らし合わせて、冷静に投資判断を下すこと。この視点を忘れずに、これからも賢く資産運用と向き合っていきましょうね!

【まとめ】企業の仮想通貨ブーム、冷静な視点で見極めよう!

今回の記事では、最近話題の「企業による仮想通貨の備蓄」という新しいトレンドについて、深掘りしてきました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう!

今、何が起きている? ストラテジー(旧マイクロストラテジー)社の驚異的な成功をきっかけに、多くの企業が会社の資産でビットコインやイーサリアムを買い集めるブームが起きています。「ハイテクの女王」キャシー・ウッドのような著名投資家もこの動きに注目しており、関連企業の株価は急騰しています。

専門家からの厳しい警告 しかし、「バリュエーションの教祖」と呼ばれるダモダラン教授は、このブームに真っ向から「待った」をかけています。教授が挙げる5つの危険な理由は以下の通りでした。

  1. 現金の目的に反する: 会社の安全装置であるべき現金を、値動きの激しい資産に変えるのは危険。
  2. 本業が曖昧になる: 仮想通貨投資に夢中になることで、会社本来の強みが見えなくなる。
  3. 経営者は投資のプロではない: 本業のスキルと投資のスキルは全くの別物。
  4. 投資家に判断を委ねるべき: 余ったお金は株主に還元し、使い道は投資家自身が決めるべき。
  5. 透明性が低い: 不正な取引(自己取引など)の温床になるリスクがある。

僕たち投資家の心構え この熱狂と警告の板挟みの中で、僕たちが取るべき態度は「冷静な分析」です。

  • あなたの投資先が仮想通貨を保有しているかチェックしましょう。
  • もし保有しているなら、それがどんなリスクを伴うのかをしっかり理解しましょう。
  • 仮想通貨そのものに投資したいなら、企業経由ではなく直接投資も検討しましょう。

企業の仮想通貨保有は、大きなリターンをもたらす可能性を秘めた「諸刃の剣」です。ニュースのヘッドラインや株価の勢いだけで飛びつくのではなく、その裏にあるリスクをしっかりと見極める。そんな賢い投資家を目指して、これからも一緒に学んでいきましょうね!

タイトルとURLをコピーしました