QUICK資産運用研究所の推計によると、国内公募の追加型株式投資信託(ETFを除く)には、なんと14兆2443億円もの資金が流入したとのことです。
これは、過去最大となった2024年の15兆3383億円に次ぐ、歴代3番目の規模。投資への関心の高まりが、数字にもはっきりと表れていますね。
そして注目すべきは、個別ファンドのランキングです。首位に輝いたのは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」。2兆4541億円という歴代最大の資金を集め、2年連続で首位となりました。
2位には同じシリーズの「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」がランクイン。この2つのファンドだけで、4兆3900億円を超える資金が集まったというから驚きです。
一方で、3位以降には毎月分配型のファンドやゴールド関連ファンドが顔を並べ、資金流出のランキングではESG投信やDX・半導体関連のテーマ型投信が上位を占めました。
この結果から、投資初心者の皆さんが知っておくべき大切なポイントが見えてきます。今回は、このランキングが示す「投資の光と影」について、わかりやすく解説していきますね。
オルカンが2年連続首位の意味──多くの投資家が「合理的な選択」をしている証拠
オルカンってどんな投資信託?
まず、「オルカン」について簡単におさらいしましょう。正式名称は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」。この投資信託は、日本を含む世界中の株式市場に分散投資する、いわゆる「インデックスファンド」です。
インデックスファンドとは、特定の指数(この場合はMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)に連動することを目指す投資信託のこと。プロのファンドマネージャーが銘柄を選ぶのではなく、機械的に指数と同じ動きをするように運用されます。
なぜオルカンが選ばれるのか
オルカンが2年連続で首位に輝いた背景には、いくつかの理由があります。
1. 低コストであること
オルカンの信託報酬(運用会社に支払う手数料)は年0.05775%以内と、業界最低水準。100万円を投資しても、年間の手数料は約577円程度です。長期投資では、このコストの差が運用成績に大きく影響します。
2. 世界中に分散投資できること
オルカンは、先進国から新興国まで、世界中の約3,000銘柄に投資しています。特定の国や地域に偏らないため、リスクを分散できるんです。
3. 新NISAの対象であること
2024年から始まった新NISA制度では、つみたて投資枠と成長投資枠の両方でオルカンを購入できます。非課税で運用できるメリットは大きいですよね。
合理的な投資家が増えている安心材料
オルカンが2年連続で首位を獲得したということは、「低コストで世界中に分散投資する」という合理的な投資スタイルを選ぶ人が増えているということ。これは、投資初心者にとっても心強いニュースです。
昔は「儲かりそうな銘柄を当てる」という投資スタイルが主流でしたが、今は「長期・分散・低コスト」という堅実な考え方が広まっています。金融庁も推奨するこの投資スタイルが、実際に多くの人に選ばれているのは、とても良い傾向だと言えるでしょう。
ランキングの影の部分──毎月分配型とテーマ型ファンドへの資金流入
オルカンの人気は喜ばしいことですが、一方で少し気になる動きもあります。それが、毎月分配型ファンドとテーマ型ファンドへの資金流入です。
毎月分配型ファンドの人気が続いている
2025年のランキングを見ると、3位、4位、7位に毎月分配型のファンドがランクインしています。
- 3位:インベスコ 世界厳選株式オープン(為替ヘッジなし)(毎月決算型) 1兆4188億円
- 4位:フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型)
- 7位:アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型
毎月分配型ファンドは、その名の通り毎月分配金を受け取れるタイプの投資信託。定期的にお金が入ってくるのは魅力的に感じられますが、実は長期的な資産形成には向いていないという側面があります。
毎月分配型の何が問題なのか
1. 複利効果が得られない
投資で資産を増やす最大の武器は「複利効果」です。複利効果とは、運用で得た利益を再投資することで、利益が利益を生み、雪だるま式に資産が増えていく仕組みのこと。
例えば、100万円を年利7%で30年間運用した場合を考えてみましょう。
- 複利運用の場合:約761万円に増加
- 単利運用(毎月分配を受け取る場合):約310万円
なんと、451万円もの差が生まれるんです!毎月分配金を受け取ってしまうと、この複利効果を最大限に活かせなくなってしまいます。
2. 税金が毎月かかる
分配金を受け取ると、その都度約20%の税金がかかります(NISA口座以外の場合)。つまり、せっかく増えた資産から税金が引かれ、残りを再投資することになるので、運用効率が悪くなってしまうのです。
3. 元本を取り崩している場合がある
分配金には「普通分配金」と「特別分配金(元本払戻金)」の2種類があります。特別分配金は、運用益ではなく、あなたが投資した元本を返しているだけ。つまり、資産が増えていないどころか、減っているということです。
毎月分配型が向いている人もいる
ただし、毎月分配型が全ての人に悪いわけではありません。例えば、リタイア後で定期的な収入が欲しい人、すでに十分な資産がある人には向いている場合もあります。
問題なのは、「毎月お金がもらえてお得」という理由だけで、長期の資産形成を目指す若い世代や現役世代の人が選んでしまうこと。自分の投資目的に合っているかをしっかり考えることが大切です。
テーマ型ファンドのリスク
2025年のランキングでは、金(ゴールド)関連ファンドが6位と10位に入りました。また、資金流出のランキングでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)や半導体関連のテーマ型投信が上位を占めています。
テーマ型投資信託とは、特定のテーマ(AI、環境、半導体など)に関連する企業に集中投資する投資信託のこと。「これから伸びそう!」と思えるテーマに投資できるので、わかりやすく魅力的に見えますよね。
でも、テーマ型投資信託には大きなリスクが潜んでいます。
1. 集中投資によるリスクの集中
投資信託の最大のメリットは「分散投資」です。複数の銘柄に投資することで、1つの企業や業種がダメになっても、全体への影響を抑えられます。
しかし、テーマ型ファンドは特定のテーマに集中投資するため、そのテーマ全体が不調になると、大きな損失を被る可能性があります。分散投資のメリットを捨てているようなものなんです。
2. 高値掴みのリスク
テーマ型ファンドが設定されるのは、そのテーマが話題になっている時。つまり、すでに関連企業の株価が高くなっている可能性が高いんです。
「みんなが注目しているから今買わなきゃ!」と思って購入すると、実は高値で買ってしまい、その後株価が下がって損をする…というケースが少なくありません。
2025年の資金流出ランキングを見ると、ESG投信やDX・半導体関連のテーマ型投信が上位に並んでいます。これは、過去に話題になって購入した人が、損失を抱えて売却している可能性を示唆しています。
3. コストが高い
テーマ型ファンドの多くはアクティブファンド(プロが銘柄を選ぶタイプ)なので、信託報酬が高めです。年1.5〜2%程度のコストがかかるファンドも珍しくありません。
インデックスファンドのオルカンが年0.05775%であることを考えると、約30〜40倍ものコスト差があります。長期運用では、このコストの差が運用成績に大きく響いてきます。
投資初心者が知っておくべき「長期・分散・低コスト」の原則
ここまで見てきたランキング結果から、投資初心者の皆さんに覚えておいてほしいポイントをまとめます。
1. 長期投資を前提に考える
投資は、短期的に儲けようとするギャンブルではありません。10年、20年、あるいはそれ以上の長期間で資産を育てていくものです。
長期投資のメリットは、複利効果を最大限に活かせること。そして、短期的な値動きに一喜一憂せずに済むことです。毎月分配型ファンドは、この長期投資の原則に反してしまいます。
2. 分散投資でリスクを減らす
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言があります。特定の企業や業種、国に集中投資すると、そこがダメになった時に全てを失うリスクがあります。
オルカンのように世界中に分散投資することで、どこかの国や業種が不調でも、他でカバーできる可能性が高まります。テーマ型ファンドは、この分散の原則に反してしまいます。
3. 低コストを意識する
信託報酬などのコストは、確実にリターンを減らします。年1%のコスト差でも、30年間では大きな差になります。
例えば、100万円を年5%で30年間運用した場合:
- コスト0.1%の場合:約415万円
- コスト1.1%の場合:約338万円
なんと77万円もの差が生まれるんです!できるだけ低コストのファンドを選ぶことが、長期的には大きな違いを生みます。
新NISAを活用した賢い投資戦略
2024年から始まった新NISA制度は、投資初心者にとって強力な味方です。
新NISAの特徴
- 非課税期間が無期限:売却するまでずっと非課税
- 年間投資枠が拡大:つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=合計360万円
- 生涯投資枠1,800万円:これまでの総投資額の上限
新NISAでの賢い選択
新NISA制度では、毎月分配型ファンドは購入できません。これは、金融庁が「長期・分散・低コスト」の投資を推奨しているからです。
つまり、新NISAの対象商品は、すでに「長期投資に向いているファンド」として選別されているということ。初心者の方は、まずこの新NISA対象商品の中から選ぶのが安全です。
特におすすめなのは:
- 全世界株式インデックスファンド(オルカンなど)
- 米国株式インデックスファンド(S&P500など)
- バランスファンド(株式と債券に分散投資)
これらは低コストで、世界中や米国市場全体に分散投資できます。
ゴールド投資の人気が示すもの
2025年のランキングで注目すべきもう1つのポイントが、ゴールド(金)関連ファンドの人気です。6位と10位にゴールド投資ファンドがランクインしました。
なぜゴールドが人気なのか
ニュースでは「地政学リスクの高まりやインフレ懸念を背景に金が歴史的高騰を続けている」と説明されています。実際、世界情勢が不安定な時、投資家は安全資産とされるゴールドに資金を移す傾向があります。
ゴールド投資の注意点
ゴールドは確かに「守りの資産」として有効ですが、初心者が全資産をゴールドに投資するのはおすすめできません。
理由は:
- ゴールド自体は配当や利息を生まない
- 価格変動が大きい
- 長期的には株式の方が高いリターンが期待できる
ゴールドは、ポートフォリオの一部(例えば5〜10%程度)として保有するのが賢明と言われています。
まとめ──2025年のランキングから学ぶ投資の教訓
2025年の投資信託ランキングは、私たちに大切なことを教えてくれています。
良いニュース:
- オルカンが2年連続首位=多くの投資家が合理的な投資を選んでいる
- 低コストで全世界に分散投資するスタイルが定着してきている
- 新NISA制度が長期投資を後押ししている
注意すべき点:
- 毎月分配型ファンドへの人気が根強い=複利効果を逃している人がいる
- テーマ型ファンドの流入と流出=高値掴みのリスクを取っている人がいる
- 投資の基本を理解せずに「流行」で選んでしまう危険性
投資初心者の皆さんには、「長期・分散・低コスト」という基本原則を忘れないでほしいと思います。
- 10年以上の長期投資を前提に
- 世界中に分散投資する
- 信託報酬が低いインデックスファンドを選ぶ
- 新NISA制度を最大限活用する
- 毎月分配型やテーマ型には慎重に
この原則を守れば、投資初心者でも着実に資産を育てていくことができます。
オルカンの人気は、多くの投資家が正しい道を歩んでいる証拠。あなたも焦らず、じっくりと、自分に合った投資スタイルを見つけていってくださいね。
投資は、お金を増やすだけでなく、経済や世界について学ぶ良い機会でもあります。今回のランキング分析を通じて、少しでも投資への理解が深まったなら嬉しいです。

