いま、お金の置き場所が変わりつつある
「銀行に預けておけば安心」——そう思っていた時代が、静かに終わりを告げようとしています。
2026年2月、日本の長期金利(10年物国債の利回り)が2.2%を超えました。これは2024年には1%前後だったことを考えると、わずか2年足らずで倍以上になった計算です。この金利上昇の波が、私たちの「安全なお金の置き場所」の常識を根本から変え始めています。
日経マネー(2026年2月16日)が報じた内容によれば、いまや「預金より債券が有利」になりつつあり、さらには個人向け国債の選び方の定番セオリーだった「変動10年一択」という考え方も崩れ始めているというのです。
「国債?難しそう…」と思った方、ご安心ください。この記事では、投資初心者の方でもわかるように、いまの金利環境で何が変わったのか、そして個人向け国債をどう選べばいいのかを、できるだけかみ砕いてお伝えします。
株には手を出したくないけれど、預金だけではインフレに負けてしまう気がする——そんな方にとって、今回の変化はとても重要な話です。ぜひ最後まで読んでみてください。
「預金より国債」が新常識に。その理由とは?
定期預金と国債、どちらがお得?
まず、基本的なところから確認しましょう。
2026年2月現在、大手銀行の定期預金金利は、1年物でも高いところで年率1%前後です。ただ、2年や3年に預けても、それ以上に金利が上がるわけではありません。銀行は「金利を上げたくても、簡単には上げられない事情」があるためです。
一方、個人向け国債や新窓販国債(=銀行や証券会社の窓口で買える国債)の2月募集分の利回りを見ると、こうなっています。
| 種類 | 利回り(年率・税引前) |
|---|---|
| 変動10年(個人向け国債) | 1.48% |
| 固定5年(個人向け国債) | 1.66% |
| 固定3年(個人向け国債) | 1.39% |
| 新窓販国債2年 | 1.2%超 |
| 新窓販国債10年 | 2.2%超 |
2026年2月募集分のデータ(財務省・各証券会社情報より)
わずか2年間の新窓販国債でも1.2%を超え、大半の銀行の定期預金金利を上回っているという状況です。
なぜ預金と国債でこんなに差が出るの?
これには構造的な理由があります。
国債の利回りは市場の金利動向を素早く反映します。日銀が政策金利を引き上げたり、将来の利上げが予想されたりすると、市場でのお金の需要と供給のバランスが変わり、国債利回りもすぐに動きます。
一方、銀行の預金金利は経営判断が入るため、なかなか上がりません。銀行側としては、金利を上げるとコストが増えるため、市場金利が上がっても預金金利の引き上げは後回しになりがちです。
結果として、金利上昇局面では「預金 < 国債」という逆転現象が起きやすくなるのです。
インフレに負けたくないなら?
もう一つ大切な視点があります。最近は物価が上がり続けており(インフレ)、たとえば年率2%の物価上昇が続くと、1000万円の預金は実質的に毎年20万円分の価値が目減りしていくことになります。
預金金利が1%程度であれば、実質的にはマイナスの運用になってしまいます。国債でも完全にインフレに勝てるわけではありませんが、少しでも目減りを抑えるための手段として、国債の存在感が増しているのです。
「変動10年一択」のセオリーはなぜ崩れたのか?
そもそも「変動10年」って何がよかったの?
個人向け国債には3種類あります。
- 変動10年:金利が半年ごとに見直される。10年満期だが1年後から中途換金可能。
- 固定5年:買った時の金利が5年間ずっと固定。
- 固定3年:同じく固定金利で3年間。
長らく「変動10年一択」と言われてきた理由はシンプルです。個人向け国債は発行から1年後にいつでも解約(中途換金)できるため、「10年」という満期の長さはほとんどデメリットになりません。しかも低金利の時代には、将来金利が上がったとき自動的に恩恵を受けられる変動型が有利——そう考えられていたのです。
なぜいま、そのセオリーが崩れているのか?
変動10年の利回りは、基準となる10年物国債の利回りに0.66をかけた値になります。
例えば、基準金利が2.2%の場合:
2.2% × 0.66 ≈ 1.45%(変動10年の利回りの目安)
これが問題です。基準金利が上がれば上がるほど、かけ算によって差が広がる仕組みになっているため、変動10年の利回りは常に基準金利の「6割強」にとどまります。
一方、固定5年は基準金利(5年物国債の利回り)から0.05%を引いた値、固定3年は0.03%を引いた値で決まります。こちらは「引き算」なので、金利が上がっても差は広がりません。
結果として、金利が上昇した現在の状況では:
- 変動10年:1.48%
- 固定5年:1.66%(変動10年を上回る!)
- 固定3年:1.39%
固定5年が変動10年の利回りを逆転してしまったのです。これは過去には考えにくかった状況で、「変動10年一択」というセオリーが通用しなくなった大きな理由です。
さらに新窓販国債(10年固定)との差はもっと大きい
新窓販国債の10年固定物は、2026年2月時点で利回り2.2%超です。個人向け国債の変動10年(1.48%)と比べると0.7%以上の差があります。
「10年間は使わない」と確信できる資金であれば、新窓販国債10年の方が有利になる可能性が高い、という状況です。
それでも「変動10年」が有利になるケースとは?
「じゃあ変動10年はもう選ぶ意味がないの?」——実は、そう単純ではありません。変動10年には、固定型にはない大きな強みがあります。
今後さらに金利が上昇するなら変動10年が有利
日銀は2023年から2024年にかけて政策金利を引き上げ始め、長期金利も上昇トレンドにあります。もしこれからも金利がさらに大きく上昇すれば、変動10年の利回りも一緒に上がっていきます。
たとえば、将来の基準金利が3.5%になった場合:
3.5% × 0.66 ≈ 2.31%(変動10年の利回り見通し)
これは現在の固定5年(1.66%)を大きく上回ります。「これから金利がもっと上がる」と考えるなら、変動10年は依然として有力な選択肢です。
変動10年の3つの安心ポイント
- 元本が保証されている:発行体が日本国のため、元本が割れる心配がほぼない。
- 最低金利の保証がある:金利が極端に下がっても、年0.05%の最低金利が保証されている。
- 1年後から自由に換金できる:急にまとまったお金が必要になっても、1年経てばいつでも解約可能(ただし直前2回分の利子相当額が差し引かれる)。
2026年1月の応募額でも人気は健在
2026年1月の応募額を見ると、固定5年が3529億円で最も多く、変動10年が2825億円で続きました。固定5年が逆転したことで多くの投資家の注目を集めていますが、変動10年も依然として高い人気を誇っています。
新たな選択肢も登場!国債ETF・投信・30年国債とは?
金利上昇の恩恵を受けられる低リスク商品は、個人向け国債だけではありません。最近では、新しい選択肢も増えてきています。
国債で運用するETF・投資信託
ETF(上場投資信託)とは、株式市場に上場されている投資信託のことです。個々の債券を自分で購入・管理しなくても、少額から分散投資ができます。
最近では国債で運用するETFや投資信託の設定が相次いでいます。個人向け国債を直接買うのが面倒、あるいは少額から試したいという方には、こうした商品が入門として適しています。ただし、個人向け国債と違って価格変動リスクがあることは覚えておきましょう。
利回り3%台半ばの30年国債という選択肢
2026年に入り、長期金利の上昇とともに30年国債の価格は大きく下落しています。債券は価格が下がると利回りが上がる仕組みなので、30年国債の利回りは3%台半ばという高水準になっています。
「30年は長すぎる」と思うかもしれませんが、ETFや投資信託を通じて間接的に購入することも可能です。もちろん、将来金利がさらに上がれば価格は下落する可能性もありますし、逆に金利が下がれば値上がり益が期待できます。長期的な資産形成の一環として、検討してみる価値はあるかもしれません。
どれを選ぶ?タイプ別の目安
| あなたのタイプ | おすすめの選択肢 |
|---|---|
| まず安全重視、元本は絶対守りたい | 個人向け国債(変動10年 or 固定5年) |
| 5年は使わないお金がある | 固定5年(現在最も利回りが高い) |
| 10年以上使わない確信がある | 新窓販国債10年(利回り2.2%超) |
| 今後の大幅な金利上昇を見込む | 変動10年 |
| 少額から試したい、手間を省きたい | 国債ETF・投資信託 |
| 高利回りで長期運用したい(リスク許容) | 30年国債(ETF経由) |
まとめ:お金の置き場所、見直しのチェックリスト
ここまで読んでいただきありがとうございました。今回の記事のポイントをまとめます。
この記事の要点
① 預金より国債が有利な時代になってきた
2026年2月時点で、2年の新窓販国債でも年率1.2%超と、多くの銀行の定期預金金利(1%前後)を上回っています。インフレが続く中、預金だけに頼るのは資産の目減りにつながりかねません。
② 「変動10年一択」のセオリーは崩壊した
変動10年の利回りは基準金利の0.66倍で決まるため、金利が上がるほど他の種類との差が広がります。2026年2月時点では固定5年(1.66%)が変動10年(1.48%)を逆転。今後の金利見通しをふまえた「自分なりの判断」が必要です。
③ 選択肢は広がっている
個人向け国債3種類に加え、新窓販国債、国債ETF・投信、30年国債など、低リスク運用の選択肢は増えています。自分のライフプランや使う予定のある時期に合わせて、賢く選びましょう。
④ 「株には投資しない資金」の置き場所を今すぐ見直そう
老後資金や緊急時の備えなど、絶対に減らせないお金は、銀行に眠らせておくより国債に置いておく方が今の時代は合理的かもしれません。
最後に一言
投資というと「リスクが怖い」と感じる方も多いですが、個人向け国債は元本が保証されており、リスクは非常に低い商品です。まずは1万円(最低購入額)から試してみるのもよいでしょう。
ただし、金利環境は常に変化します。「今月の利回りが高いから」という理由だけで飛びつくのではなく、自分がいつ、いくら必要かをしっかり考えた上で選ぶことが大切です。
この記事が、みなさんの「お金の置き場所」を考えるきっかけになれば嬉しいです。引き続き、一緒に賢いお金の使い方を学んでいきましょう!
