【2028年解禁】日本の暗号資産ETFはなぜ遅い?税制改正と同時施行の衝撃と、初心者が見るべき「世界の今」

投資ニュース解説

仮想通貨(暗号資産)に関するちょっと残念なニュースが飛び込んできました。

【独自】暗号資産ETF、2028年解禁へ──税制改正と同時施行で調整(CoinDesk JAPAN) - Yahoo!ニュース
暗号資産(仮想通貨)税制の「申告分離課税」への移行が2028年1月までずれ込む見通しとなったことを受け、暗号資産ETF(上場投資信託)の国内解禁についても、同時期まで先送りされる公算が高まっているこ

2025年12月18日、日本国内での「暗号資産ETF(上場投資信託)」の解禁が、2028年1月までずれ込む見通しであることが報じられたのです。当初、業界内では「早ければ2026年、遅くとも2027年には……」と期待されていただけに、この「2028年」という数字は非常に残念なニュースとして受け止められています。

今回のニュースのポイントは、暗号資産ETFの解禁が、税金のルールが変わる「税制改正(申告分離課税への移行)」と同じタイミングに調整されているという点です。

なぜ、さらに2年も待たなければならないのでしょうか?そして、この遅れが日本の投資家にとって何を意味するのか。投資初心者の方にも分かりやすく、深掘りして解説していきます。

そもそも「暗号資産ETF」と「税制改正」って何?

投資を始めたばかりの方にとって、専門用語が並ぶと少し難しく感じますよね。まずは、今回のニュースの主役である2つの言葉を整理しましょう。

  1. 暗号資産ETF(上場投資信託)とは ETFとは、証券会社を通じて株と同じように売り買いできる投資信託のことです。現在、ビットコインなどの暗号資産を買うには、専用の「暗号資産交換所」に口座を作る必要があります。しかし、ETFが解禁されれば、普段使っている証券口座で、トヨタやソニーの株を買うのと同じ感覚でビットコインに投資できるようになります。
  2. 申告分離課税(税制改正)とは 現在、日本で暗号資産の取引で得た利益は「雑所得」として扱われ、住民税を含めて最大で約55%もの税金がかかることがあります。これを、株やFXと同じように一律20%(所得に関わらず一定)の税率にしようというのが、待望されている「税制改正」です。

なぜこの2つがセットなの? 金融庁が懸念しているのは「不公平」です。もしETFだけが先に解禁され、税率が20%になったらどうなるでしょうか。「現物(本物のビットコイン)で持つと税金が高いけれど、ETFなら安い」という不自然な状況が生まれます。これによって、現物を扱う国内の市場が廃れてしまうことを防ぐため、当局は「ETF解禁」と「税制改正」をセットで行う方針を固めたようです。

世界から大きく取り残される日本。2028年は「遅すぎる」のか

今回のニュースを受けて、多くの投資家や専門家が抱いた率直な感想は「日本はまた世界から遅れてしまう」という危機感です。

すでに海外、特にアメリカでは、2024年1月にビットコインETFが承認され、市場は空前の盛り上がりを見せています。世界最大級の資産運用会社であるブラックロックなどが提供するビットコインETFには、すでに約15.5兆円(1000億ドル)規模の資金が流れ込んでいます。これは、世界中に存在するビットコインの総量の3%以上を、たった一つの運用会社が保有するほどの勢いです。

海外では環境整備がハイスピードで進んでいる アメリカだけでなく、香港や欧州などでも暗号資産を金融商品として扱う環境がどんどん整っています。機関投資家(プロの投資家)が安心して参入できる土壌ができているのです。

一方、日本はどうでしょうか。これまでも「慎重すぎる」と言われてきましたが、今回の2028年への延期によって、さらに数年の空白期間が生まれることになります。技術や金融のトレンドは日進月歩です。2028年になった頃には、世界のスタンダードはさらに先へ進んでいる可能性が高いでしょう。

日本の投資家が直面するリスクと「円売り」の懸念

「別にゆっくりでもいいじゃない」と思う方もいるかもしれません。しかし、日本の解禁が遅れることには、実体経済へのリスクも潜んでいます。

  1. 日本の資金が海外へ流出する 日本の投資家が「どうしてもビットコインETFを買いたい」と思ったとき、国内で商品がなければ、海外の口座や海外の資産へ目を向けざるを得ません。巨額の資金が日本からアメリカなどの市場へ流れることは、実質的な「円売り」の圧力になります。これがさらなる円安を招く一因になる可能性も否定できません。
  2. 投資家保護の限界 日本の金融庁が厳しく規制をする理由は、本来「投資家を守るため」です。しかし、国内で魅力的な商品が提供されない結果、投資家が日本の法律が及ばない海外の怪しいサービスに手を出してしまい、トラブルに巻き込まれる……という本末転倒な事態も懸念されます。
  3. 国内産業の停滞 SBIホールディングスなどの国内大手企業は、すでに「SBI・ビットコイン/XRP ETF」といった具体的な商品案を公表し、準備を整えています。技術もインフラも準備できているのに、ルールの整備が追いつかないためにビジネスができない。この状況は、日本のフィンテック産業の国際競争力を削いでしまうことになりかねません。

金融庁が「内外同時解禁」にこだわる理由とは

今回のニュースでは、当局が「国内で組成されるETF」と「海外で組成されるETF」を同時に解禁する方針であることも明らかになりました。

なぜ同時なのでしょうか? もし、アメリカの有名なETF(ブラックロックのものなど)だけを先に日本で買えるようにしてしまうと、日本の運用会社が作るETFに誰も見向きもしなくなってしまうからです。日本の証券会社や運用会社を育て、守るための配慮と言えます。

しかし、その「公平性」を重視するあまり、全体のスピードが落ちているのが現状です。最近では、海外の暗号資産ETFを間接的に取引できる商品を提供していた証券会社に対し、金融庁が「望ましくない」という見解を示したことで、サービスが終了に追い込まれた事例もありました。

ルールをきっちり決めることは大切ですが、その間にチャンスを逃しているという側面は、投資家として知っておくべき事実です。

2028年まで、私たちはどのように向き合うべきか

「あと2年も待てないよ!」という声が聞こえてきそうですが、投資初心者の方は、この状況をどう捉えれば良いのでしょうか。

焦らずに勉強の期間と捉える 投資において「待つ」ことも立派な戦略です。2028年に税制が整い、ETFが解禁されれば、今よりも圧倒的に有利で安全な環境で投資ができるようになります。それまでは、少額で現物取引を体験してみたり、ブロックチェーンの技術について学んだりする「準備期間」にするのが賢明です。

現行の「つみたてNISA」などを活用する 暗号資産ETFがなくても、現在日本には素晴らしい投資環境(NISAなど)があります。まずはそちらで資産形成の基礎を作りつつ、2028年の暗号資産バブル(?)に備えて余剰資金を蓄えておくのも一つの手です。

政治やルールの変化に注目する 今回の「2028年」という方針も、今後の政治情勢や世論の変化によっては、前倒しになる可能性がゼロではありません。ニュースで報じられた関係者の声にも「先行する可能性もゼロではない」という含みがありました。

まとめ:日本の暗号資産ETFの未来

最後に、今回の内容を振り返ってみましょう。

  • 暗号資産ETFの国内解禁は2028年1月までずれ込む可能性が高い。
  • その理由は、税率を20%に下げる「税制改正」とタイミングを合わせるため。
  • 海外(特にアメリカ)はすでに巨大市場を形成しており、日本は大きく遅れている。
  • 国内企業(SBIなど)は準備万端だが、当局の「慎重な姿勢」が続いている。

2028年という設定は、正直なところ「非常に遅い」と感じざるを得ません。海外との競争を考えれば、もっとスピード感のある対応が望まれます。

しかし、裏を返せば、2028年には「税金が安くなり」「信頼できる国内企業の商品を」「使い慣れた証券会社で」買えるようになるということです。これは投資家にとって大きなメリットであることは間違いありません。

日本の暗号資産市場が、世界に追いつき、追い越す日が来るのか。それとも、このまま慎重な姿勢を崩さずに独自路線を歩むのか。これからも最新情報をチェックしていきましょう。

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