2025年11月18日、日経新聞からビッグニュースが飛び込んできました。野村アセットマネジメントや三菱UFJアセットマネジメントなど、日本の運用会社大手6社が、日本初となる「仮想通貨(暗号資産)を組み入れた投資信託」の開発を検討しているというのです。

このニュースは、これからの日本の投資環境を大きく変える可能性があります。今回は、このニュースがなぜ重要なのか、そして私たち個人投資家にとってどのようなメリットや注意点があるのかを、分かりやすく解説していきます。
ついに日本でも!大手6社が「仮想通貨の投資信託」を検討開始
これまで日本では、ビットコインなどの仮想通貨は投資信託に組み入れることが法律で禁止されていました。そのため、私たちは暗号資産取引所の口座を開設して、自分で直接ビットコインを買うしか方法がありませんでした。
しかし、今回のニュースによると、金融庁がついに動き出しました。現在の「資金決済法(お買い物に使うお金の法律)」から、「金融商品取引法(株や債券と同じ投資の法律)」の対象へと、仮想通貨の扱いを変更しようとしているのです。
つまり、仮想通貨は正式な金融商品(投資対象)として認めますよ、という国のお墨付きが得られる方向へ動き出したということです。これは、日本の投資環境にとって革命的な出来事と言えます。
これまでは「仮想通貨=ちょっと怖い投機」という扱いでしたが、これからは「株や債券と並ぶ資産形成の一部」として扱われる未来が見えてきました。
そもそも「仮想通貨の投資信託」って何が良いの?
投資信託になるって言われても、自分でビットコインを買うのと何が違うの?そう思う方も多いかもしれません。実は、初心者にとってこそ、この変化はメリットが大きいのです。
メリット1:証券会社の口座で手軽に買える
これまでは、仮想通貨を買うために、わざわざ専用の暗号資産取引所(コインチェックやビットフライヤーなど)に口座を開設し、本人確認をしてという手間が必要でした。
しかし、投資信託になれば、皆さんが普段使っている楽天証券やSBI証券などの証券口座から、株や投資信託と同じ感覚で購入できるようになります。一つの画面で資産管理ができるのは、非常に便利です。
メリット2:管理の手間とリスクが減る
仮想通貨を直接持っていると、秘密鍵(パスワードのようなもの)の管理や、ハッキングによる流出リスクに自分で備える必要があります。パスワードを忘れて、資産が取り出せなくなったという話を聞いたことがあるかもしれません。
投資信託であれば、プロの運用会社が厳重なセキュリティ(カストディ業務と言います)で管理してくれるため、パスワード紛失やハッキングの心配を個人でする必要がほぼなくなります。
メリット3:透明性が高まる
SBIグローバルアセットなどが検討しているように、きちんとした指数(インデックス)に連動する商品になれば、適正な価格で売買できるようになります。販売所の手数料が高すぎる、といった初心者特有の悩みも解消されることが期待されます。
最大の壁「税金」が変わる!これが本当の革命だ
実は、今回のニュースで投資家たちが一番注目しているのは、投資信託が出ることそのものよりも、その裏にある税制改正の可能性です。
現在の税金:最大55%の負担(総合課税)
今の日本の法律では、仮想通貨で儲けた利益は雑所得(総合課税)として扱われます。これの何が厳しいかというと、給与所得などと合算されるため、利益が出れば出るほど税率が上がり、最大で利益の約55%(所得税+住民税)を税金として納めなければならないのです。
期待される未来:一律20%へ(申告分離課税)
ニュースによると、金融庁は法改正に合わせて、仮想通貨の税金を株や投資信託と同じ約20%(申告分離課税)にするよう求めています。もしこれが実現すれば、どれだけ利益が出ても税金は約2割で済みます。
例えば1億円の利益が出た場合を比較してみましょう。
これまで:約5,500万円が税金(手取り4,500万円) 改正後:約2,000万円が税金(手取り8,000万円)
この差は非常に大きいです。さらに、株で損をした分を仮想通貨の利益から引くといった損益通算ができるようになる可能性もあります。これが実現すれば、投資戦略の幅がグッと広がります。
浮かれるのはまだ早い?知っておくべき「リスク」
良いことばかりをお伝えしましたが、投資には必ずリスクがあります。特に仮想通貨は、株や債券とは比べ物にならないほど価格の変動が激しい資産です。
桁違いの値動き(ボラティリティ)
専門家も指摘していますが、ビットコインなどの値動きは、株式や金(ゴールド)と比べても桁違いに大きいです。1日で価格が10%動くのは日常茶飯事ですし、数ヶ月で価格が半分になったことも過去に何度も起きています。
投資信託になったからといって、中身のビットコインが安定するわけではありません。パッケージが綺麗になっても、中身のリスクは変わらないということを理解しておく必要があります。
投資は「サテライト」で
運用会社の幹部も言っているように、仮想通貨への投資は資産の一部にとどめるべきです。全財産を投資するのではなく、資産の1%から5%程度を組み入れることで、資産全体のリターンを底上げするスパイスとして使うのが賢い方法です。
投資信託だから安心と思い込まず、無くなっても生活に困らない余剰資金で投資することが鉄則です。
いつから買えるの?NISAはどうなる?
最後に、今後のスケジュールと気になるNISA(少額投資非課税制度)について予想してみましょう。
目標は2026年の解禁
ニュースによると、金融庁は2026年の通常国会での法改正を目指しています。順調にいけば、2026年の後半から2027年にかけて、実際に証券会社の画面にビットコイン投信やイーサリアムETFといった商品が並ぶことになるでしょう。
SBIグローバルアセットは、設定から3年で5兆円規模を目指すとしており、市場の期待値の高さが伺えます。米国ではすでにビットコインETFが普及しており、日本でも同様のブームが起きる可能性が高いです。
NISAへの採用は?
ここで一番気になるのが、NISA口座で買えるのかという点です。もしNISAで買えれば、利益に対する税金がゼロになります。
ただ、現時点ではまずは課税口座(特定口座)での解禁が濃厚です。NISAは長期・積立・分散に適した商品が選ばれる傾向にあるため、値動きの激しい仮想通貨投信がいきなりつみたて投資枠に入るハードルは高いと考えられます。
しかし、成長投資枠であれば、将来的には対象になる可能性もゼロではありません。まずは法改正と税制改正の行方を注視しましょう。
まとめ
今回のニュースをまとめると、以下のようになります。
- 大手6社が仮想通貨投資信託を準備中。日本の投資環境が大きく変わります。
- 最大のメリットは税金。最大55%から20%になれば、投資としての魅力が非常に高まります。
- 証券口座で買える。面倒なウォレット管理や取引所開設が不要になり、利便性が向上します。
- リスクは高いまま。商品になっても中身は仮想通貨です。資産の数%程度に留めるのが正解です。
- 開始は2026年以降。今すぐではありませんが、準備期間として捉えましょう。
怪しい資産から当たり前の資産へ。仮想通貨は今、その階段を登ろうとしています。法改正が実現すれば、日本の個人マネーが市場に流れ込み、価格にもポジティブな影響を与えるでしょう。
まずは、現在お持ちの証券口座の情報を確認し、今のうちにログインできるようにしておきましょう。また、少額でも良いので、今のうちに仮想通貨の値動きをチェックして、1日でどれくらい動くのかを肌感覚で知っておくことも立派な勉強になります。
新しい時代の波に乗り遅れないよう、一緒に情報を追っていきましょう。
