最近「ステーブルコイン」という言葉をニュースでよく耳にしませんか?
「なんだか難しそう…」
「ビットコインみたいなもの?」
「私たちに関係あるの?」
そんな風に思っている方も多いかもしれませんね。
でも実はこれ、私たちのお金の未来を大きく変えるかもしれない、超重要なトピックなんです!
2025年11月8日の日本経済新聞で、こんなニュースが報じられました。

「メガバンクが揃って動き出す」と聞くと、一気に現実味が増してきますよね。
この記事では、投資初心者の皆さんにも分かりやすく、
- そもそも「ステーブルコイン」って何?(暗号資産との違い)
- なぜ今、日本で「円建て」が盛り上がってるの?
- 先行する「JPYC」と「メガバンク連合」、どう違うの?
- 私たちの生活や投資に、どんな影響があるの?
といった疑問を、最新の情報を交えながら、とことん優しく解説していきます。
この記事を読み終わる頃には、「ステーブルコイン、なるほどね!」と、未来のお金の流れがきっと見えてくるはずですよ。
そもそも「ステーブルコイン」って何?ビットコインと何が違うの?
まず、一番大事なところからいきましょう。「ステーブルコイン」とは何でしょうか?
よく「ビットコインみたいなものでしょ?」と誤解されがちなのですが、実は全くの別物です。
最大の違いは、「価格が安定していること」です。
[ポイント解説] ビットコイン vs ステーブルコイン
- ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨):
- 価格が激しく変動します。1日で10%上がったり下がったりも…。
- 価値の裏付け(担保)がありません。「みんなが価値があると信じている」から価値があります。
- 主な目的は「投資(投機)」や「新しい金融システム(DeFiなど)での利用」です。
- ステーブルコイン (Stablecoin):
- 「Stable(ステーブル)」=「安定した」という意味。
- 日本円や米ドルなどの「法定通貨」と価値が連動するように設計されています。
- 例えば「1 JPYC = 1円」「1 USDC = 1ドル」のように、価格がほぼ変動しません。
- なぜ安定しているの? ちゃんと価値の裏付け(担保)があるからです。発行されたステーブルコインと同額の「円」や「ドル」(あるいは国債や預金)を、発行者がしっかり保有・管理しています。(日本では法律で義務付けられています)
- 主な目的は「決済」や「送金」です。
つまり、ビットコインが「価値が変動するデジタル資産(金のようなもの)」だとしたら、ステーブルコインは「価値が安定したデジタルなお金(現金や電子マネーに近いもの)」と言えます。
ステーブルコインの何がすごいの?
「SuicaやPayPayみたいな電子マネーと何が違うの?」と思いますよね。
ステーブルコインは、「ブロックチェーン」という技術を使って作られています。これが最大の違いであり、すごいところなんです。
[ポイント解説] ブロックチェーンとは?
データを「ブロック」という箱に入れて、それを「チェーン(鎖)」のようにつなげて管理する技術です。世界中のコンピューターにデータが分散して保存されるため、「改ざんがほぼ不可能」「システムが止まりにくい」という特徴があります。 ビットコインもこの技術を使っています。
このブロックチェーン技術のおかげで、ステーブルコインにはこんなメリットがあります。
- 送金コストが激安に(特に海外送金)
- 今、海外に10万円送金しようとすると、銀行で数千円の手数料と数日かかりますよね。
- ステーブルコインなら、これが数円〜数十円の手数料で、わずか数秒〜数分で着金します。革命的です!
- 24時間365日、いつでも決済・送金できる
- 銀行の窓口やATMが閉まっている夜中や土日でも、スマホひとつで世界中に送金できます。
- プログラムと連携できる(これが未来のカギ!)
- 「Aさんがこの仕事を終えたら、自動でBさんに1000円分のコインを送る」といった複雑な契約(スマートコントラクトと言います)を自動実行できます。
今の世界は「ドル建て」が最強
この便利なステーブルコイン、実は世界ではすでに巨大な市場になっています。
ニュース記事にもある通り、その市場規模はなんと約3000億ドル(約46兆円)! (2025年11月時点)
そして、その9割以上が「ドル建て」なんです。
特に有名なのが「テザー(USDT)」や「USDC(サークル社)」で、この2つだけで市場のほとんどを占めています。世界中の企業や個人が、貿易の決済や暗号資産の取引、日々の送金に、このドル建てステーブルコインをガンガン使っているのです。
日本の「円建てコイン」2大勢力が登場! JPYC vs メガバンク連合
これまで「ドル」の独壇場だったステーブルコイン市場に、いよいよ「円」が本格参入します。
今回のニュースで登場した、日本の2大勢力を見てみましょう。
1. 先行するフィンテック企業「JPYC」
- 発行元: JPYC Inc.(日本のフィンテック企業)
- 特徴:
- 2024年10月から、改正された法律(資金決済法)のもとで、いち早く発行を開始しました。
- すでに1億3000万円分以上が発行されており、実績を積んでいます。
- クレジットカード決済でJPYCを買って買い物に使えるサービス(ナッジ社)など、連携するサービスも出始めています。
- 狙い(予想):
- 主にWeb3と呼ばれる新しいインターネットの世界での利用を狙っていると考えられます。
[ポイント解説] Web3(ウェブスリー)とは?
「次世代のインターネット」と呼ばれる新しい概念です。
- Web1.0:ホームページを見るだけ(一方通行)
- Web2.0:SNSなどで誰もが発信できる(双方向)
- Web3.0:ブロックチェーン技術を使い、特定の巨大企業(GAFAなど)に情報が集中するのではなく、個人が自分のデータを管理・活用できる世界を目指します。NFTやDeFi(分散型金融)などがこれにあたります。
JPYCは、このWeb3の世界で使われる「円」として、中心的な存在になろうとしています。
2. 満を持して登場「3メガバンク連合」
- 発行元: 三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行(が共同で)
- 特徴:
- 3つのメガバンクが「規格を統一」して共同で発行します。つまり、どの銀行が発行したコインでも、互いに交換したり、共通で使えたりする(互換性がある)仕組みを目指しています。
- システム基盤には「プログマ(Progmat)」という、三菱UFJ信託銀行などが開発したデジタル資産の基盤を使います。
- まずは、三菱商事が国内外の拠点間の決済(越境決済)に使う実証実験からスタートします。
- 狙い(予想):
- まずは法人(企業)向けの利用、特に「国際送金」や「貿易決済」を効率化する狙いが大きいでしょう。
- 3メガバンクが持つ合計30万社以上の膨大な顧客企業に導入が進めば、一気に普及する可能性があります。
- 将来的には、もちろん個人向けのサービスにも広がってくるはずです。
こう見ると、JPYCがWeb3向けでスピード感を持って先行し、メガバンク連合が「銀行の信頼感」と「法人顧客基盤」を武器に、インフラごと作ろうとしている構図が見えてきますね。
なぜ今、メガバンクも参入?背景にある「デジタル円離れ」の危機感
「でも、なんで今になってメガバンクが重い腰を上げたの?」
「しかも、ライバル同士なのに、わざわざ『共同』でやるなんて?」
そう思いますよね。
実は、そこには日本円の未来に対する、かなり強い危機感があるんです。
このままでは「円」が使われなくなる!?
思い出してください。今、世界のステーブルコイン市場の9割以上は「ドル建て」です。
海外では、USDCなどを使った決済が、お店やネットショッピング(Shopifyなど)でどんどん使えるようになっています。
もし、この「安くて早くて便利なドル建てコイン」が、そのまま日本でも普及したらどうなるでしょう?
- 日本の企業が、海外との取引でドル建てコインを使うようになる。
- 日本の個人が、ネットショッピングでドル建てコインを使うようになる。
- 給料もドル建てコインで払われるようになるかも…。
そうなると、日本国内でも「円」が使われなくなり、「ドル」ばかりが流通することになりかねません。これが「デジタル時代の円離れ」です。
そうなれば、日本円の価値や信頼性(円の信用)が下がり、日本経済全体に大きなダメージとなります。
アメリカの国策「ジーニアス法」
この「ドル一強」の流れは、アメリカの国策でもあります。
ニュース記事にも「ジーニアス法」という言葉が出てきましたね。
[ポイント解説] ジーニアス法 (GENIUS Act)
2025年7月にアメリカで成立した、ステーブルコインに関するルールを定めた法律です。トランプ政権が強力に推進しました。
この法律のすごいところは、「ステーブルコインは危ないから規制する」というネガティブなものではなく、「しっかりした裏付け(米ドルや米国債など)を持つ優良なステーブルコインは、国のお墨付きを与えるから、どんどん使いなさい!」というポジティブな内容であることです。
これは実質、「ドル建てステーブルコインを世界中に普及させて、デジタルの世界でもドルの覇権を維持するぞ!」というアメリカの国家戦略なんです。
このままではヤバい!
アメリカが国を挙げて「デジタル・ドル」を推進するなら、日本も「デジタル・円」をしっかり作って対抗しないと、経済的に負けてしまう!
この強い危機感から、金融庁も「円建てステーブルコイン」の普及を強力に後押ししており、それに応える形で、3メガバンクも「ケンカしてる場合じゃない、まずは一緒に『円のインフラ』を作ろう!」と、共同で動き出すことになったのです。
JPYC vs メガバンクは「対立」じゃない!「共存」こそが未来のカギ
さて、ここまで聞くと、「先行するJPYC」と「巨大なメガバンク連合」、どちらが勝つんだろう?という「対決」の構図をイメージしてしまいますよね。
でも、私は未来は「対立」ではなく「共存」だと考えています。←ココ重要!
ここで、パソコンのOSを例に考えてみましょう。
「Windows」と「Linux」の素敵な関係
皆さんおなじみの「Windows」は、世界中の多くのパソコンに搭載され、企業や役所、家庭で使われる「標準(デファクトスタンダード)」ですよね。使いやすく、サポートも手厚く、対応ソフトも豊富です。
一方、「Linux」というOSを知っていますか? これは「オープンソース」といって、設計図が公開されており、世界中のエンジニアが自由に改良できるOSです。サーバー(Webサイトの裏側を支えるコンピューター)の世界では圧倒的なシェアを誇り、Androidスマホのベースにもなっています。
Windowsが「閉じた世界で、信頼と実績を提供するインフラ」だとしたら、Linuxは「開かれた世界で、自由な発想とスピードを提供するインフラ」です。
そして大事なのは、この2つは「共存」していることです。 企業の基幹システムはWindowsで動き、その裏側のWebサーバーはLinuxで動く、なんてことは当たり前です。Microsoft(Windowsの会社)自身も、今やLinuxを積極的に活用しています。
ステーブルコインも同じ未来になる!
この関係、JPYCとメガバンクコインにそっくりだと思いませんか?
- メガバンク連合(プログマ基盤) = “Windows”
- 銀行の「信用力」をベースにした、法人向け・貿易決済・大規模決済のための「標準インフラ」。
- 金融庁ともしっかり連携し、マネーロンダリング対策なども万全な、安心・安全な「閉じた」システムからスタートする。
- JPYC = “Linux”
- フィンテック企業の「スピード感」を武器にした、個人向け・Web3・新しいサービスのための「開かれた」インフラ。
- 世界中のブロックチェーンや新しいサービスと自由に繋がり、イノベーションを生み出す。
そして、この2つが「共存」し、さらには「連携」する未来がすでに見えています。
実は、検索結果(ITmedia 2025年10月31日)によると、JPYCは、メガバンク連合が使うシステム基盤である「プログマ(Progmat)」と、すでに協業を発表しているんです! プログマの基盤を使って、新しい「信託型JPYC」を発行する計画があるとのこと。
つまり、彼らはすでに対立するのではなく、お互いの得意分野を活かしながら、連携する道を選んでいるのです。
メガバンクが整備する「高速道路(プログマ)」と、JPYCが張り巡らせる「毛細血管(Web3サービス)」が繋がることで、初めて日本全体に「デジタル円」がスムーズに流れるようになるのです。
私たち投資初心者が注目すべきポイント
この「お金の未来」の大きな変革期に、私たち投資初心者は何に注目すればよいでしょうか?
- 「決済」や「送金」のニュースに敏感になる
- 「〇〇社がステーブルコイン決済を導入」「銀行の海外送金手数料が大幅値下げ」といったニュースは、この流れが加速しているサインです。
- Web3関連のサービスを体験してみる
- JPYCを使ってNFTを買ってみるなど、少額から新しい技術に触れてみると、その可能性が肌感覚でわかります。(もちろん、リスクを理解した上で!)
- 関連企業の株価をチェックする
- メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)はもちろん、システム基盤を提供する「プログマ」に出資している企業や、JPYCと連携する企業(ナッジなど)が、この変革でどう成長していくか、長期的な視点で見ていくのは面白いかもしれません。
もちろん、課題も残っています。
- 法整備: マネーロンダリング(資金洗浄)対策や、利用者保護のルールをどう徹底するか。
- 技術的な課題: JPYCの上限額(現在1回100万円)の撤廃や、海外のステーブルコインとの互換性など、まだまだクリアすべき点は多いです。
しかし、この流れはもう止まりません。
まとめ:お金の「OS」が変わる!未来の当たり前に乗り遅れないために
今回は、投資初心者の皆さんに向けて「円建てステーブルコイン」のニュースを深掘りしてみました。
今日のポイント
- 「ステーブルコイン」は、価格が安定した(例:1コイン=1円)デジタルなお金。
- 「安く・早く・24時間」送金できるのが強み。
- 世界は「ドル建て」が9割で、このままだと日本経済がピンチ(円離れ)。
- そこで、日本でも「JPYC(フィンテック)」と「メガバンク連合(法人向け)」の2大勢力が本格始動!
- これは「対立」ではなく、「Linux(JPYC)」と「Windows(メガバンク)」のような「共存」と「連携」の未来になる可能性が高い。(すでに協業も発表!)
ステーブルコインの登場は、単なる新しい決済手段が増える、という話ではありません。 それは、私たちが使っている「お金」という社会の根本的な「OS」が、アップデートされるような大事件です。
かつて、現金からクレジットカードへ、そしてスマホ決済(PayPayなど)へと「当たり前」が変わってきたように、数年後には、ステーブルコインで送金したり、買い物をしたりするのが「当たり前」になっているかもしれませんね。
