2024年から始まった新NISA、皆さんはもう活用していますか?「これを機に投資を始めたい!」と思っている人も多いんじゃないでしょうか。
でも、いざ始めようとすると、
「いろんな商品があって、どれを選べばいいか分からない…」
「よく聞くS&P500とオルカンって、結局どっちがいいの?」
こんな疑問にぶつかりますよね。特に「S&P500」と「オルカン」は、新NISAの積立設定ランキングでも常にトップを争う大人気商品。だからこそ、どっちを選ぶべきか、すごく迷うポイントだと思います。
最近、PRESIDENT Onlineに掲載された投資ブロガーの水瀬ケンイチさんの記事「S&P500」より「オルカン」がおすすめなのは明らか…歴史とデータが指し示す「もっとも賢い投資術」が、この長年の論争に一つの答えを示してくれて、とても話題になっています。

この記事では、なぜ今「S&P500」だけでなく、「オルカン(全世界株式)」への投資が賢明な選択だと言えるのか、その理由を投資初心者の方にも分かりやすく、そして深く掘り下げて解説していきます。この記事を読み終える頃には、きっとあなたの中に「こっちを選ぼう!」という自信が芽生えているはずです!
S&P500かオルカンか…みんなが悩む究極の選択
まず、今日の主役である二つの言葉について、簡単におさらいしておきましょう。
そもそも「S&P500」と「オルカン」って何?
- S&P500 アメリカを代表する優良企業500社の株価を元に計算される「株価指数」です。Apple、Microsoft、Amazonといった、誰もが知る超巨大IT企業から、コカ・コーラやP&Gのような生活に根付いた企業まで、アメリカ経済のオールスターチームのようなものです。 これに連動する投資信託(インデックスファンド)を買うことは、実質的にアメリカ経済全体に投資するのと同じ効果が期待できます。
- オルカン これは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という商品の愛称です。その名の通り、日本を含む先進国から新興国まで、世界約50カ国の株式市場全体に、これ一本でまるっと投資できる商品です。 アメリカだけでなく、ヨーロッパ、日本、中国、インドなど、世界中の企業の成長の恩恵を受けようというのがコンセプトです。
なぜ、この二つで迷うの?
理由はシンプルです。
- S&P500派の主張:「最強のアメリカに乗っかるのが一番効率的でしょ!」
- オルカン派の主張:「未来はどうなるか分からないから、世界中に分散しておくのが一番安心でしょ!」
どちらの言い分も、すごく説得力がありますよね。 ここ10年以上にわたって、アメリカ経済は絶好調でした。だから「わざわざ他の国に分散する必要はない、アメリカだけでいい」と考える人が多いのも当然です。
一方で、歴史を振り返ると、ずっと最強であり続けた国はありません。だからこそ「アメリカ一国に賭けるのはリスクが高い。世界全体に網を張っておくべきだ」という考え方も非常に合理的です。
この「絶好調の現在を取るか、不確実な未来に備えるか」という視点が、多くの投資家を悩ませる根本原因なんです。今回の記事では、この究極の選択に、データと歴史という確かな視点から光を当てていきたいと思います。
なぜS&P500はこんなに人気なの?〜強さの理由と潜むリスク〜
オルカンの話をする前に、まずはS&P500がなぜこれほどまでに投資家を魅了するのか、その理由をしっかり見ていきましょう。S&P500が人気なのには、確かな実績があるからです。
驚異的な過去の実績
ニュース記事でも触れられているように、S&P500のパフォーマンスは、まさに「圧巻」の一言でした。
2010年から2023年の約13年間、S&P500は年平均約12.8%という驚異的なリターンを記録した。 (PRESIDENT Onlineの記事より引用)
年平均12.8%…これがどれだけすごいことか、ピンとこないかもしれません。もし2010年の初めに100万円をS&P500に投資していたら、何もしなくても2023年の終わりには約480万円に増えている計算になります。銀行預金の金利がほぼ0%のこの時代に、とんでもない成長率ですよね。
この間、GAFAM(Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoft)に代表される巨大ハイテク企業が世界を席巻し、アメリカ経済の強さを世界中に見せつけました。この輝かしい実績を見れば、「投資するならアメリカ一択!」と思ってしまうのも無理はありません。
【重要】投資の鉄則:「過去の栄光」は「未来の保証書」ではない
しかし、ここで一つ、絶対に忘れてはならない投資の鉄則があります。それは「過去のパフォーマンスは、将来のリターンを保証するものではない」ということです。
昨日までホームランを打ち続けていた4番バッターが、明日も必ずホームランを打つとは限らないのと同じです。
歴史を大きな視点で見てみると、経済の覇権を握る国は、常に移り変わってきました。
- 17世紀:オランダの時代 世界初の株式会社「オランダ東インド会社」は、現在の価値で1200兆円というとんでもない時価総額を誇り、世界経済の中心でした。当時の人が「投資はオランダ株だけでOK!」と考えていたとしても不思議ではありません。
- 18〜19世紀:イギリスの時代 産業革命をリードし、「世界の工場」として君臨。1900年頃には、ロンドンの株式市場が世界の約25%を占めるほどでした。当時のイギリス人も「大英帝国こそ最強!」と信じていたでしょう。
- 20世紀〜現在:アメリカの時代 そして、ご存知の通りアメリカが世界の主役となり、今に至ります。
もし、1900年のイギリスの投資家が「イギリス株だけが一番だ」と信じ込み、自国の株にしか投資していなかったら…その後のアメリカの驚異的な成長を取り逃がしてしまったことになります。
実は、日本も「最強」と言われた時代がありました。1989年のバブル経済のピーク時には、日本の株式市場は世界の時価総額のなんと約45%を占めていました。しかし、その後の「失われた30年」で、そのシェアは大きく低下してしまいました。
この歴史が教えてくれるのは、「一つの国だけに資産を集中させることは、その国の運命と一蓮托生になることを意味し、非常に大きなリスクを伴う」ということです。アメリカがすぐに衰退するとは考えにくいですが、10年後、30年後、50年後も今と同じように「最強」であり続ける保証は、誰にもできないのです。
【かんたん解説】インデックスファンドとは?
S&P500やオルカンのような「指数」に連動することを目指す投資信託のことです。個別企業の株を選ぶ必要がなく、市場全体に広く分散投資できるのが特徴。また、プロが積極的に銘柄を選ぶアクティブファンドと比べて手数料(信託報酬)が格段に安いので、長期的な資産形成を目指す投資初心者には最適のツールと言われています。
データで比較!オルカンが持つ「守りの強さ」とは?
「アメリカ一国集中はリスクがあるかも…」という話をしてきましたが、「じゃあ、オルカンに分散すると、具体的にどんないいことがあるの?」と思いますよね。
その答えは「リスクを抑える効果」、つまり「守りの強さ」にあります。
値動きのブレが小さくなる
投資の世界では、リスクのことを「ボラティリティ(価格変動の度合い)」という言葉で表します。ボラティリティが大きいほど、価格が激しく上下する(ハイリスク・ハイリターン)ことを意味します。
ニュース記事のデータを見てみましょう。
過去20年間(2003~2023年)のデータでは、米国株(S&P500)の年間標準偏差は約15.7%だったが、全世界株式(MSCIワールド)では約14.2%だった。これは約10%のリスク低減効果を意味する。 (PRESIDENT Onlineの記事より引用)
少し専門的な言葉が出てきましたが、要するに「オルカン(全世界株式)の方が、S&P500よりも値動きのブレが約10%穏やかだった」ということです。
これは、投資を続ける上で精神的に大きなアドバンテージになります。例えば、相場が急落した時、自分の資産が毎日大きく減っていくのを見るのは本当につらいものです。その下落幅が少しでもマイルドになるなら、パニックになって売ってしまう「狼狽売り」を防ぎ、長期投資を続けやすくなります。
暴落した時に違いがわかる
この「守りの強さ」は、特に経済危機のような大きな下落局面で真価を発揮します。
- 2008年 リーマンショック(金融危機) S&P500:約37%下落 MSCIワールド(全世界株式):約34%下落
- 2022年 世界的な株安 NASDAQ(米ハイテク株中心):約33%下落 全世界株式:約18%下落
いかがでしょうか。特に2022年の下落局面では、アメリカのハイテク株が大きく売られた一方で、全世界に分散していたオルカンは下落幅をかなり抑えることができています。
これは、世界中の様々な国や地域の経済が、それぞれ異なる動きをするからです。アメリカが不調な時でも、他の国が好調であれば、それがクッションとなって全体のダメージを和らげてくれるのです。
これこそが、投資の格言でよく言われる「卵は一つのカゴに盛るな」の真髄です。S&P500は「アメリカ」という非常に大きくて頑丈なカゴですが、それでもカゴは一つです。オルカンは、「アメリカ」という大きなカゴを中心にしつつ、「ヨーロッパ」「日本」「新興国」といった、たくさんのカゴに卵を分けて入れているイメージ。万が一、一番大きなカゴが揺らいでも、他のカゴの卵は無事、というわけです。
オルカンは「ほったらかし」に最適な理由
オルカンのメリットは、リスクを抑える「守りの強さ」だけではありません。むしろ、ぼくが投資初心者の方に特におすすめしたい理由は、これからお話しする「究極のほったらかし投資」を可能にする点にあります。
1.自動で「為替リスク」も分散してくれる
「S&P500に投資する」ということは、投資信託を円で買っていたとしても、実質的にあなたの資産を100%「米ドル」で持っているのと同じことになります。
【かんたん解説】為替リスクとは?
海外の資産に投資する場合、その国の通貨と日本円との交換レート(為替レート)の変動によって資産価値が変わるリスクのことです。例えば、1ドル=150円の時に買った100ドルの資産(=15,000円)は、もし円高が進んで1ドル=100円になると、ドルの価値は変わらなくても円換算では10,000円に価値が目減りしてしまいます。
つまり、S&P500一本に投資していると、アメリカの株価だけでなく、「円高・ドル安」の動きにも資産が左右される、二重のリスクを負っていることになるのです。
一方、オルカンはどうでしょうか? オルカンは全世界の株式に投資しているので、あなたの資産は自動的に米ドル、ユーロ、円、人民元、インドルピーなど、世界中の通貨に分散されます。特定の二国間の為替レートがどう動こうと、他の通貨がその影響を緩和してくれるため、為替リスクも自然と分散されるのです。
株価の予測だけでも難しいのに、為替の動きまで予測するのはプロでも至難の業。オルカンは、この悩ましい為替リスクの問題も、一本で解決してくれる優れものなのです。
2.自動で「未来の成長国」に投資してくれる
これがオルカンの最大の魅力かもしれません。 オルカンは、時価総額加重平均という方法で、各国の株式市場の規模に応じて投資比率を自動で調整してくれます。
…と言っても難しいですよね。簡単に言うと、「今、勢いのあるイケてる国の割合を自動的に増やし、勢いがなくなってきた国の割合を自動的に減らしてくれる」という、とんでもなく賢い仕組みを持っているのです。
例えば、ニュース記事でも言及されているように、今、世界では新たな成長エンジンが次々と生まれています。
- インド:2023年に中国を抜いて人口世界一に。若い労働人口が豊富で、今後の経済成長が非常に期待されています。
- 東南アジア(ASEAN):人口約6.7億人、平均年齢も約30歳と非常に若く、中間層がどんどん拡大しています。
10年後、20年後、これらの国々の中から、今のGAFAMのような世界的な大企業が生まれてくるかもしれません。
もしあなたがS&P500だけに投資していたら、この大きな成長の波に乗り遅れてしまう可能性があります。しかし、オルカンを持っていれば、何もしなくても、自動的にインドやベトナムといった成長国の比率が高まっていきます。
つまり、あなたはただオルカンを積立設定して、あとは仕事や趣味に没頭しているだけでいいのです。その間に、オルカンがあなたに代わって世界中の経済状況をパトロールし、最適な資産配分に自動でリバランス(調整)してくれる。これぞ「究極のほったらかし投資」と言われる所以です。
賢い投資家がオルカンを選ぶ本当の理由
ここまで、オルカンの持つ「守りの強さ」や「ほったらかしに最適な仕組み」について見てきました。 最後のブロックでは、なぜ数々の投資のプロや賢人たちが「全世界への分散投資」を推奨するのか、その本質に迫ります。
「期待」されすぎているアメリカ、「割安」なその他の国々
投資の世界には、株価が割安か割高かを判断するための物差しがあります。その代表が「PER(株価収益率)」や「PBR(株価純資産倍率)」です。
【かんたん解説】PER / PBRとは?
どちらも、企業の利益や資産に対して株価がどれくらいの水準にあるかを示す指標です。ざっくりと「数値が低いほど、その株は割安である」と理解しておけばOKです。
ニュース記事によると、2024年時点でのアメリカ株式市場のPERは約22倍。これは歴史的に見ても、他の国々と比べても、かなり高い水準です。これはつまり、「投資家たちが、すでにアメリカ企業の将来に大きな期待を寄せている(=期待が株価に織り込み済み)」状態だと言えます。
一方で、アジアや新興国の市場は、PERが14〜15倍程度と、アメリカに比べて相対的に割安な水準にあります。
これは何を意味するのでしょうか? 割高な市場は、少しでも期待を裏切ると株価が大きく下落しやすい一方、割安な市場は、ちょっとした良いニュースでも株価が大きく上昇するポテンシャルを秘めている、ということです。
もちろん、割安いのにはそれなりの理由がある場合も多いですが、世界中に分散投資しておくことで、こういった「期待と現実のギャップ」から生まれるリターンを狙うこともできるのです。
投資のバイブルも「国際分散」を推奨している
この「全世界への分散投資」の重要性は、ぼくだけが言っているわけではありません。『ウォール街のランダム・ウォーカー』や『敗者のゲーム』といった、世界中の投資家が読む「投資のバイブル」とされる名著でも、一貫してその有効性が説かれています。
驚くべきは、これらの本の著者はアメリカ人であり、アメリカの読者に向けて書かれているにもかかわらず、「アメリカ人投資家でさえ、資産の30〜40%はアメリカ以外の株に投資すべきだ」と明確に推奨している点です。
世界最強の経済大国に住む投資家でさえ、自国だけでなく世界に目を向けるべきだと言われているのです。だとしたら、日本の投資家である私たちが、日本円という単一通貨に生活を依存している以上、なおさら資産は世界中に分散させておく必要性が高いと言えるのではないでしょうか。
まとめ:未来は分からない。だから「全部」買うのが正解!
さて、長かったS&P500とオルカンの比較も、いよいよ最終結論です。
この記事のポイントを振り返ってみましょう。
- S&P500の魅力: 過去の実績は圧倒的。アメリカの成長に賭けるなら最高の選択肢。
- オルカンの魅力:
- リスク低減: 暴落時のダメージを和らげる「守りの強さ」がある。
- 為替分散: 特定の通貨への依存を避け、為替リスクを自動で分散してくれる。
- 成長の自動追尾: これから伸びる国や地域を自動で組み入れ、世界の成長をまるごとキャッチできる。
- 賢者の選択: 歴史やデータ、投資のプロたちも「国際分散」の重要性を説いている。
では、結局どちらを選べばいいのか? ぼくの答えは、特に投資初心者の方であればあるほど、「オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)」から始めることを強くおすすめします。
なぜなら、「将来、どの国が最も成長するかなんて、誰にも正確に予測することはできない」からです。
10年後もアメリカが最強かもしれません。でも、もしかしたらインドや東南アジアが世界経済の中心になっているかもしれない。あるいは、誰も予想しなかった国が台頭する可能性だってあります。
未来が分からないからこそ、「じゃあ、もう全世界をまるごと買っておこう!」というのが、オルカンの思想です。これほど合理的で、精神的にも楽な投資法はありません。ただ、毎月コツコツとオルカンを積み立てていけば、世界経済が成長する限り、あなたの資産もそれに連れて成長していくことが期待できます。
もちろん、S&P500を否定するわけではありません。「ぼくはアメリカの未来を信じている!」「多少リスクをとっても高いリターンを狙いたい!」という強い信念があるなら、S&P500は非常に魅力的な投資先です。
一つの考え方として、資産の大部分を占める「コア」の部分はオルカンでどっしり構え、残りの「サテライト」部分でS&P500や、自分が応援したい国のインデックスファンド、個別株などに投資するという方法もあります。
新NISAという素晴らしい制度が始まった今、大切なのは最初の一歩を踏み出すことです。今回の記事が、あなたの「究極の選択」の助けとなり、賢い投資家としての第一歩を後押しできたら、これ以上に嬉しいことはありません。
さあ、あなたもオルカンと一緒に、世界経済の成長という大きな船に乗り込みましょう!