【インデックス投資の教科書⑰】積立投資、いつ始める?「今すぐ」が最適な理由とは

インデックス投資の教科書

前回は、市場のタイミングを計って売買する「タイミング投資」がいかに難しいか、そして「積立投資(ドルコスト平均法)」がいかに合理的か、というお話をしました。タイミングに悩まず、感情に左右されず、コツコツ続けることの重要性をご理解いただけたかと思います。

さて、そうなると次に気になるのは、「じゃあ、その積立投資、一体いつから始めるのが一番いいの?」という疑問ではないでしょうか。

「今の株価はちょっと高い気がするから、もう少し下がってから始めたいな…」 「最近、景気が不安定なニュースが多いから、もう少し様子を見てからの方が安全かな…」

このように、いざ始めようと思っても、なかなか最初の一歩が踏み出せない、という方も少なくないかもしれません。今回は、この積立投資を始める「タイミング」についての悩みを解消していきましょう。

結論:積立投資に「最適なタイミング」は存在しない

まず、いきなり結論からお伝えします。 積立投資を始めるにあたって、「ここがベスト!」という完璧なタイミング、最高の買い時というものは、残念ながら誰にも分かりません。後から振り返って「あの時が一番良かったね」ということは言えても、リアルタイムでそれを知ることは不可能なのです。

なぜでしょうか? それは、前回もお話しした通り、未来の市場価格の動きを正確に予測することが誰にもできないからです。「来月、株価が上がるか下がるか」「1年後、市場がどうなっているか」を確実に当てられる人はいません。

もし、「もう少し株価が下がったら始めよう」と思って待っていたら、そのまま株価が上がり続けてしまい、結局もっと高い価格から始めることになってしまうかもしれません。逆に、「景気が良くなってきたから今がチャンス!」と思って始めたら、その直後から市場が下落し始める、という可能性だってあります。

つまり、「最適なタイミング」を待とうとすることは、多くの場合、予測不可能な未来を待つことと同じであり、貴重な「時間」だけが過ぎていってしまう、「機会損失」につながる可能性が高いのです。

「時間」こそが最強の味方!複利効果を最大限に活かす

では、タイミングが重要でないとしたら、何が重要なのでしょうか? 長期的な資産形成において、最も強力な武器の一つ、それは「時間」です。

投資には「複利」という素晴らしい効果があります。これは、投資で得た利益(利息や分配金など)を再投資することで、その利益がさらに新たな利益を生み、まるで雪だるまが坂道を転がるように、時間が経てば経つほど資産が加速度的に増えていく効果のことです。(複利については、今後の連載でも詳しく取り上げますね!)

この複利の効果を最大限に活かすための秘訣は、ただ一つ。「できるだけ早く投資を始めること」です。

例えば、同じ目標金額を達成する場合でも、投資を始めるのが1年遅れるだけで、毎月積み立てなければならない金額が増えたり、より高いリターン(つまり、より高いリスク)を狙わなければならなくなったりする可能性があります。

時間は、すべての人に平等に与えられています。そして、早く投資を始めることは、誰にでも実行可能な、非常に有利な戦略なのです。

格言に学ぶ「Time in the market beats timing the market.」

投資の世界には、こんな格言があります。

「Time in the market beats timing the market.」

日本語に訳すと、「市場に居続けることが、市場のタイミングを計ることよりも重要である」といった意味になります。

これは、市場の上げ下げを予測してベストな売買タイミングを狙うこと(timing the market)にエネルギーを費やすよりも、たとえ相場が良い時でも悪い時でも、とにかく市場に「参加し続ける」こと(time in the market)の方が、長期的に見れば資産を増やす上で効果的である、という考え方を示しています。

積立投資(ドルコスト平均法)は、まさにこの「市場に居続ける」ことを実践するための手法です。価格が高い時も安い時も淡々と買い続けることで、自然と市場に参加し続けることができます。そして、早く始めれば始めるほど、価格が変動する中で購入単価を平準化していく機会も多く得られることになります。

完璧なタイミングを探して市場の外で待ち続けるよりも、一日でも早く市場に参加し、時間を味方につけること。これが、長期投資の成功確率を高めるための重要なマインドセットと言えるでしょう。

不安なら「少額」からでOK!「始めること」が第一歩

「理屈は分かったけど、やっぱり今すぐ始めるのは不安…」 「まとまったお金がないと始められないんじゃ…?」

そう感じる方もいるかもしれませんね。でも、心配はいりません。

現在の日本では、投資を始めるためのハードルは非常に低くなっています。特に、ネット証券などを利用すれば、投資信託の積立投資は、なんと月々100円や1,000円といった、本当に少額からでも始めることができるのです。

もし、まだ投資に対する不安が大きいのであれば、まずは、お小遣いの一部や、毎月缶コーヒー1本分を我慢するくらいの、ご自身にとって精神的にも経済的にも全く負担にならない金額からスタートしてみてはいかがでしょうか。

大切なのは、金額の大小よりも、「まず始めてみること」です。

  • 実際に投資を始めて、資産が少しずつ増えたり減ったりするのを体験する
  • 証券口座の画面操作に慣れる
  • 経済ニュースの見方が少し変わる

といった経験をすること自体が、投資への理解を深め、不安を解消していく第一歩になります。

積立金額は、投資に慣れてきたり、収入が増えたりしたタイミングで、いつでも変更したり増額したりすることができます。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは、あなたのペースで、小さな一歩を踏み出すことが何よりも重要なのです。

まとめ:積立投資のベストタイミングは「今すぐ」!

第17回の今回は、積立投資を始める「最適なタイミング」について解説しました。

  • 最適なタイミングは存在しない:未来の市場は予測不可能であり、「最高の買い時」を待つことは機会損失につながる可能性がある。
  • 時間が最強の武器:早く始めるほど投資期間が長くなり、複利効果を最大限に活かせる。
  • 市場に居続けることが重要:「Time in the market beats timing the market.」の格言通り、タイミングを計るより市場に参加し続けることが大切。
  • 少額から始めればOK:「始めること」が第一歩。月々数百円からでもスタート可能。金額は後から調整できる。

結論として、積立投資を始めるのに「早すぎる」ということはあっても、「遅すぎる」ということはあっても、待つことに合理的な理由はほとんどありません。もしあなたが積立投資を始めようと考えているなら、まさに「今すぐ」が最良のタイミングと言えるでしょう。

さて、積立金額はいくらが適切なのか?という疑問も湧いてきますね。次回は、その点について考えていきます。

次回の第18回は、「毎月いくら積み立てるべき?目標金額から逆算してみよう」と題して、あなたの投資目標やライフプランに合わせて、無理なく続けられる積立金額を設定するための具体的な考え方について解説します。お楽しみに!

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