シリーズ連載「インデックス投資の教科書」、第3回にようこそ!
前回(第2回)は、インデックス投資が、ぼくら投資初心者にとって、なぜこんなにもおすすめなのか、その4つの大きなメリット(分かりやすい、低コスト、分散効果、手間いらず)について語りました。
「よし、インデックス投資、なんだか良さそうだな!」 「これなら自分にもできるかも!」
そんな風に思ってくれた人もいるんじゃないでしょうか?
でもね、ちょっと待って!実際に証券口座を開いたり、どのファンドを買うか選んだりする「前」に、実はもっともっと大事なことがあるんです。
それが今回のテーマ、「投資の目標と期間を決めること」。今回はそんな投資の目標と期間の決め方について説明します!
なぜ目標設定が必要なの?投資の「目的地」を決めよう!
「えー、なんか面倒くさそう…」 「とりあえず始めてみちゃダメなの?」
気持ちは分かります(笑)。でも、考えてみてください。 もし、あなたが船に乗って大海原に出るとしたら、どうしますか?
「とりあえず出発だー!」って、行き先も決めずに、地図も持たずに出航しますか?…しませんよね?どこに向かっているのか分からなければ、ただ波に漂うだけ。燃料が尽きたり、嵐に巻き込まれたりするかもしれません。
投資も、これと全く同じなんです。
目標設定がない投資は、まさに「地図のない航海」。どこに向かっているのか分からないまま、ただお金を市場という大海に投じているようなものです。市場の良い波に乗れればいいですが、悪い波にのまれたときに、「自分はどこに向かっていたんだっけ…?」と不安になって、途中で船(投資)を降りてしまう(やめてしまう)ことになりかねません。
逆に、最初にしっかりと「目的地(目標)」を決めておけば、たくさんのメリットがあるんです。
- メリット①:モチベーションが続く! 「30年後に、豊かな老後を送るために2000万円貯めるぞ!」という具体的な目標があれば、日々の市場のちょっとした値動きに一喜一憂せず、「長期的な目標のためだ」と投資を続ける強い動機になります。ゴールが見えているから、航海の途中、多少の嵐(市場の下落)があっても、頑張れるんです。
- メリット②:自分に合った戦略が選べる! 目的地までの距離(期間)や、どんな船(どれくらいリスクを取れるか)によって、最適な航路(投資戦略)は変わってきますよね。「5年後に車の頭金50万円」が目標の人と、「30年後に老後資金2000万円」が目標の人では、選ぶべき投資信託の種類や、毎月の積立額も全く違ってきます。目標を定めることで、自分にとってベストな投資のやり方が見えてくるんです。
どうでしょう?投資を始める「前」に、まず「自分は何のために投資をするのか?」という投資の「目的地」を決めることが、いかに大切か、少しイメージできたでしょうか?
じゃあ具体的にどうやって目標を立てればいいのか、その方法を見ていきましょう!
「なんとなく不安」から卒業!具体的な目標の立て方
「将来のお金のこと、なんとなく不安なんだよな…」
多くの人が、こんな風に感じているんじゃないかと思います。でも、「なんとなく不安」のままでは、何をどう対策すればいいのか分かりませんよね。
この「なんとなく不安」から卒業するために有効なのが、目標を具体的にすることです。そして、目標を具体的にするための、とっても便利な考え方があるんです。それが「SMART(スマート)の法則」!
これは、目標設定の際に意識すべき5つの要素の頭文字をとったものです。
- S: Specific(具体的か?) → 誰が読んでも同じように理解できる、具体的な内容になっていますか?
- M: Measurable(測定可能か?) → 目標を達成したかどうか、数字などで客観的に判断できますか?
- A: Achievable(達成可能か?) → ちょっと頑張れば手が届きそうな、現実的な目標になっていますか?(高すぎても低すぎてもNG!)
- R: Relevant(関連性があるか?) → その目標は、あなたの人生の他の目標や価値観と、ちゃんと関連していますか?(本当に達成したいことですか?)
- T: Time-bound(期限があるか?) → 「いつまでに」達成するのか、明確な期限が設定されていますか?
うーん、ちょっとカタカナが多くて分かりにくいですかね?(笑) 具体例で見てみましょう!
【悪い目標例 (SMARTじゃない例)】
- 「とにかくお金持ちになりたい!」 → S (具体的でない)、M (測れない)、A (達成可能か不明)、T (期限がない)
- 「老後のために、できるだけたくさん貯金する」 → S (具体的でない)、M (測れない)、T (期限が曖昧)
これだと、何をどれくらい頑張ればいいのか、よく分からないですよね。
【良い目標例 (SMARTな例)】
- 「子供の大学進学費用として、10年後の4月までに、教育資金を500万円貯める」
- S: 子供の大学進学費用 → 具体的!
- M: 500万円 → 測定可能!
- A: (収入や他の支出によるが)10年で500万なら達成可能かも? → 現実的!
- R: 子供の将来のため → 自分(家族)に関連がある!
- T: 10年後の4月まで → 期限が明確!
- 「65歳で退職した後のゆとりある生活のために、30年間で2000万円の資産を作る」
- S: ゆとりある老後生活の資金 → 具体的!
- M: 2000万円 → 測定可能!
- A: 30年という期間があれば達成可能性あり → 現実的!
- R: 自分の老後のため → 自分に関連がある!
- T: 65歳(30年後) → 期限が明確!
どうでしょう?SMARTを意識すると、目標がぐっと具体的になって、「じゃあ、そのために毎月いくら積み立てればいいかな?」とか、「どんな投資方法がいいかな?」という次のアクションにつながりやすくなるのが分かりますか?
難しく考えすぎなくて大丈夫です。まずは「自分は、お金を使って将来どんなことをしたいかな?」を考え、それをSMARTに当てはめてみる練習をしてみてください。漠然とした不安が、具体的な「目標」に変わるだけで、気分もスッキリしますよ!
あなたの「いつまでに、いくら?」を見つけよう!
SMARTの法則を使って目標を具体的にするイメージが湧いてきたら、次は、あなた自身の「いつまでに、いくら必要か?」を見つける番です!
「うーん、そう言われても、自分の将来なんてまだ分からないし…」
うんうん、そうですよね。未来のことなんて、誰にも正確には分かりません。でも、現時点で考えられる範囲で、将来ありそうなライフイベントをいくつか書き出してみることから始めてみましょう。
例えば、こんな感じです。
- 老後の生活資金: (例)65歳から、年金以外に月10万円くらい余裕がほしいな…
- マイホームの購入: (例)5年後くらいに、頭金として500万円用意したいな…
- 子供の教育資金: (例)子供が大学に入る15年後までに、学費として一人あたり〇〇万円くらいかな…
- 車の買い替え: (例)7年後に、新しい車を買うために200万円貯めたいな…
- 海外旅行や趣味: (例)3年後に、世界一周旅行の資金100万円!
- 起業・独立資金: (例)〇年後に、〇〇円くらい…
- その他: 結婚資金、資格取得、大きな買い物などなど…
思いつくままに、まずはリストアップしてみましょう。家族がいる方は、家族と一緒に話し合ってみるのも良いですね。
次に、それぞれのイベントについて、「だいたい、いつ頃のことかな?」そして「いくらくらいお金が必要になりそうかな?」を、ざっくりで良いので書き込んでみます。
「老後の費用なんて、いくらかかるか全然分からないよ!」 「教育費って、大学によって全然違うんでしょ?」
そうなんです。正確な金額を出すのは難しいですよね。でも、今は完璧を目指さなくて大丈夫!
- インターネットで検索してみる: 「老後 必要資金」「大学 学費 平均」などで検索すれば、大体の目安となる金額が出てきます。金融庁のウェブサイトなど、公的な情報も参考になりますよ。
- 金融機関などのシミュレーションツールを使ってみる: 多くの銀行や証券会社のウェブサイトで、ライフプランや教育資金、老後資金のシミュレーションが無料でできます。簡単な情報を入力するだけで、必要な金額の目安を計算してくれますよ。
- FP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみる: お金の専門家であるFPに相談すれば、より具体的に、あなたの状況に合わせたアドバイスをもらえます。初回相談無料のFPも多いので、活用してみるのも手です。
これらの情報も参考にしながら、まずは「仮の目標金額と時期」を設定してみましょう。
大切なのは、「自分ごと」として将来のお金について考えるきっかけを持つことです。ここで出した数字が、あなたの投資の航海における、最初の「灯台」の光になってくれるはずですよ。
ゴールまでの距離で走り方が変わる!「投資期間」を意識しよう
さて、将来のライフイベントと、それに必要な「目標金額」と「時期」が、なんとなく見えてきましたか?
次に意識したいのが「投資期間」です。 これは目標を達成するまでに、あとどれくらいの時間があるか?ということです。
例えば、
- 目標:15年後に子供の教育資金500万円 → 投資期間:15年
- 目標:5年後に車の頭金200万円 → 投資期間:5年
- 目標:30年後に老後資金2000万円 → 投資期間:30年
といった感じです。
「なんで投資期間がそんなに大事なの?」
それは、投資期間の長さによって、取れるリスクの大きさが変わってくるからです。そして、取れるリスクの大きさが変われば、選ぶべき投資戦略(どんな金融商品に、どれくらいの割合で投資するか)も変わってくるんですね。
マラソンで考えてみましょう。
- 短い距離(5kmとか)を走る場合: 最初からスピードを出して、全力疾走に近い感じで走りますよね?多少のリスク(転ぶとか)は覚悟の上で、タイムを狙います。
- 長い距離(フルマラソンとか)を走る場合: 最初から全力疾走したら、途中でバテてしまいます。ペース配分を考えて、エネルギーを温存しながら、着実にゴールを目指しますよね?
投資もこれと似ています。
- 投資期間が短い(目安として5年以内):
- 考え方: 5年後に必要なお金を、大きく減らすわけにはいきません。安全性重視です。
- 戦略例: 値動きの比較的安定している債券の割合を多めにするか、あるいは投資の中でも比較的リスクの低いとされる商品を選ぶ。場合によっては、投資ではなく預貯金で準備することも選択肢になります。インデックス投資の中でも、リスクを抑えたバランスファンドなどが考えられます。
- 投資期間が中期(目安として5年~10年程度):
- 考え方: ある程度のリスクを取りつつ、安定性も考えたい期間です。バランスが重要。
- 戦略例: 株式と債券をバランス良く組み合わせたポートフォリオを考える。例えば、株式50%:債券50%のような配分です。
- 投資期間が長い(目安として10年以上):
- 考え方: 時間がたっぷりあるので、短期的な価格変動(リスク)を受け入れつつ、長期的な成長(リターン)を狙うことができます。時間を味方につけて**「複利効果」**を最大限に活かしたい期間です。(複利については、また別の回で詳しくお話ししますね!)
- 戦略例: 株式の割合を高めにして、積極的にリターンを追求する。例えば、全世界株式インデックスファンドのように、100%株式で運用する商品を選ぶことも考えられます。
インデックス投資は、基本的に長期投資と相性が良いと言われています。なぜなら、短期的な市場のアップダウンはあっても、長い目で見れば世界経済は成長していく可能性が高い、という考えに基づいているからです。
あなたの目標達成までの期間はどれくらいでしょうか?その期間に応じて、どれくらいのリスクなら受け入れられそうか、考えてみてください。これが、具体的な投資商品選びにつながっていく、大事なステップになりますよ。
人生は変わるもの!目標もアップデートしていこう
ここまで、投資の目標と期間を設定することの重要性や、具体的な考え方についてお話ししてきました。
「よし、これで自分の投資計画の土台ができたぞ!」
そう思ったあなた、素晴らしいです!大きな一歩ですね。
でも、最後に一つだけ、覚えておいてほしいことがあります。それは「最初に立てた目標が、絶対ではない」ということです。
ぼくたちの人生って、予想外の出来事の連続ですよね?
- 急に結婚することになった!
- 子供が生まれた!
- 転職して収入が変わった!
- 引っ越しすることになった!
- 思いがけず大きな病気をしてしまった…
などなど、ライフプランは常に変化していく可能性があります。
当然、ライフプランが変われば、お金に関する計画、つまり投資の目標や期間、毎月の積立額なども、見直す必要が出てくるかもしれません。
例えば、
- 独身のときに立てた「30歳までに500万円」という目標が、結婚して子供が生まれたら、「子供の教育資金として15年で〇〇万円」に変わるかもしれません。
- 転職して収入が上がったら、毎月の積立額を増やして、目標達成のペースを早められるかもしれません。
- 逆に、収入が減ってしまったら、一時的に積立額を減らす、あるいは目標達成時期を少し延ばす、といった調整が必要になるかもしれません。
だから、一度立てた目標に縛られすぎないでくださいね。大切なのは、定期的に自分の目標と、それに対する進捗状況を確認する習慣を持つことです。
例えば、年に1回、年末や自分の誕生日などに、「今の目標はこれでいいかな?」「計画通りに進んでるかな?」とチェックする時間を作るのがおすすめです。
もし、目標と現状にズレが出てきていたら、
- 目標金額や達成時期を見直す
- 毎月の積立額を調整する
- 投資先の配分(リスクの取り方)を見直す
といった「軌道修正」をすればいいんです。
投資の航海は、一直線に進むとは限りません。時には嵐が来て迂回したり、新しい島(目標)が見つかって進路を変えたりすることもあるでしょう。
大切なのは、変化に気づき、柔軟に対応していくこと。そうすれば、最終的にあなたの目指す目的地に、きっとたどり着けるはずです。
目標設定は、投資を始めるための重要な第一歩ですが、それはゴールではありません。あなたの人生と共に、目標も柔軟にアップデートしていく。そんなしなやかな心構えで、これからの投資ライフを楽しんでいきましょう!
まとめ:投資の羅針盤を手に入れて、次の一歩へ!
第3回の今回は、インデックス投資を実際に始める「前」の、とっても大切な準備段階である「投資目標と期間の設定」についてお話ししました。
- なぜ目標設定が必要か? → 投資という航海の「目的地」を決めることで、モチベーションを維持し、自分に合った戦略を選ぶため。
- どうやって目標を立てるか? → 「SMARTの法則」を意識して、具体的で、測定可能で、達成可能で、自分に関連があり、期限のある目標にする。
- 目標金額と時期の見つけ方 → 将来のライフイベントを洗い出し、「いつまでに、いくら必要か」を、まずは概算で掴む。
- 投資期間の重要性 → 目標までの期間によって取れるリスクが変わり、それによって投資戦略(株式と債券の比率など)も変わってくる。インデックス投資は長期と相性が良い。
- 目標はアップデートするもの → 人生の変化に合わせて、目標や計画は定期的に見直し、柔軟に修正していくことが大切。
「なんとなく将来が不安だから、とりあえず投資でも始めてみようかな…」 そう考えていた方も、今回の記事を読んで、「なるほど、まずは自分の人生と向き合って、お金の目標を立てることから始めるのが大事なんだな」と感じていただけたのではないでしょうか?
目標と期間という「投資の羅針盤」を持つことで、これからの投資の道のりが、より明確で、安心して進めるものになるはずです。
さて、投資の目標が決まったら、次はいよいよ具体的な行動に移る…とその前に!もう一つ、絶対に確認しておきたいことがあります。
次回の第4回は、「投資の第一歩!投資を始める前に生活防衛資金を確保する重要性」について解説します。投資で失敗しないために、必ず知っておくべき「守りのお金」のお話です。ぜひ、次回の記事もチェックしてくださいね!