まさに今、世界経済はトランプ大統領が打ち出す関税政策によって揺れ動いています。国際的な貿易への懸念から市場は不安定になり、NISAを始めたばかりの方にとっては大きな不安を感じる局面かもしれません。「資産が減ってしまうのでは?」「どうしたらいいのだろう?」と焦る気持ちはよく分かります。
しかし、このような株価暴落時こそ、冷静な判断が重要です。パニックになって誤った行動を取ると、大切な資産を失いかねません。
この記事では、NISA初心者の方が株価暴落を乗り越え、長期的な資産形成を成功させるために、暴落時に絶対にやってはいけないことを3つに厳選して解説します。現在の市場動向も踏まえつつ、NG行動とその理由、そして取るべき考え方をお伝えします。この記事が、皆さんのNISA活用の助けとなれば幸いです。

ぼくは現在、国際分散インデックス投資を17年間実践しています。17年の間には、●●ショックと呼ばれるような大きな暴落相場に遭遇しましたが、今でも市場に居続けられています。今回はそんなぼくの経験を踏まえて、投資をはじめたばかりの投資初心者の方に、暴落時にどうすればいいかをお伝えします!
【NG行動①】恐怖に流されるな!「狼狽(ろうばい)売り」の罠
株価が急落すると、メディアは市場の混乱を大きく報じ、SNSには不安を煽る情報が溢れます。保有資産の評価額が下がっていくのを見ると、「このままでは大損してしまう」「早く売って損失を止めないと」という強い恐怖に駆られます。
この恐怖心から、保有している株や投資信託を慌てて売ってしまうのが「狼狽売り(パニック売り)」です。これは暴落時に初心者が最も陥りやすく、絶対に避けるべき行動です。
なぜ狼狽売りはNGなのか?
- 損失を確定させてしまう: 株価が下がっている時に売ると、その時点の「評価損」が「確定した損失」になります。NISA口座では、この損失を他の利益と相殺したり、翌年以降に繰り越したりすることができません。一度確定した損失を取り戻すのは大変です。
- 将来の回復リターンを逃す: 歴史的に見ると、株価は暴落後、時間をかけて回復する傾向があります。リーマンショックやコロナショックの後も市場は回復し、多くの資産は値を戻しました。狼狽売りは、この大事な回復局面のリターンを得るチャンスを自ら手放す行為です。「底値で売ってしまう」という、投資で最も避けたい結果になりかねません。
狼狽売りを防ぐには?
- 長期視点を貫く: NISAは長期投資が前提です。「数年後、数十年後を見据えた投資だ」という基本を忘れないでください。
- 投資目的を思い出す: なぜ投資を始めたのか(老後資金、教育資金など)を再確認すれば、短期的な値動きに惑わされにくくなります。
- リスク許容度を知る: 自分がどれくらいの価格変動までなら冷静でいられるかを把握しておきましょう。
- 情報と距離を置く: 不安を煽るニュースやSNSから一時的に離れ、冷静さを取り戻すことも有効です。
株価暴落は精神的に厳しい局面ですが、ここで恐怖に打ち勝ち、狼狽売りを避けることが長期的な成功への第一歩です。
【NG行動②】チャンスと焦るな!「安易な買い増し」のリスク
株価が下がると、「今が買い時だ!」「安く買えるチャンス!」と感じ、積極的に買い増し(ナンピン買い)をしたくなるかもしれません。確かに、優良な資産を安値で買えれば、将来のリターンは大きくなります。
しかし、暴落時に焦って安易に買い増しをすることも、非常に危険なNG行動です。
なぜ安易な買い増しはNGなのか?
- 「底」は誰にも分からない: 株価がどこまで下がるか、その「底」を正確に予測するのはプロでも不可能です。「もう十分下がった」と思っても、さらに下落し続け、買い増した分まで損失が拡大する可能性があります。「落ちてくるナイフは掴むな」という格言の通り、下落中の安易な買いは危険です。
- 投資資金が尽きてしまう: 底が見えない状況で次々と買い増していくと、本当に買うべきタイミング(底打ち反発後など)で資金がなくなってしまう恐れがあります。
- 精神的な負担が増える: 買い増し後にさらに株価が下がると、「判断が間違っていたのでは」という不安や焦りが増し、冷静な判断を失いやすくなります。
賢く買い増しを検討するには?
- 焦らない: まずは冷静になること。「今買わないと!」という焦りは禁物です。市場の動向を注意深く見守りましょう。
- 時間分散を徹底する: 一度に大金を投じるのではなく、複数回に分けて購入する「時間分散」を心がけます。例えば、「毎月〇日に定額を買い増す」「〇%下落したら一部買い増す」など、ルールを決めて機械的に行うのがおすすめです。NISAのつみたて投資は、まさにこの時間分散を実践する方法です。
- 余剰資金で行う: 買い増しは、あくまで生活費や近い将来使う予定のない「余剰資金」の範囲で行いましょう。
- 積立投資は原則継続: NISAで毎月積立投資をしているなら、株価下落時も原則として継続しましょう。ドルコスト平均法により、安いときに多くの口数を買うことができ、平均購入単価を下げる効果が期待できます。
暴落はチャンスにもなり得ますが、それは冷静な判断と計画があってこそ。「安いから」ではなく、「なぜ、どのように買うのか」を明確にして行動しましょう。
【NG行動③】情報に溺れるな!「噂や憶測」への過剰反応
株価暴落時には、様々な情報が世の中に溢れます。ニュース、SNS、専門家の分析、個人の体験談など、玉石混交です。中には有益な情報もありますが、不確かな噂、根拠のない憶測、意図的に不安を煽る情報も少なくありません。
こうした情報に振り回されてしまうことは、冷静な判断を妨げ、誤った投資行動につながる大きなリスクです。
なぜ情報に振り回されてはNGなのか?
- 不確かな情報で行動してしまう: 「〇〇ショック再来か?」といったセンセーショナルな見出しや、断定的な予測に惑わされて売買すると、大きな損失につながりかねません。未来の株価は誰にも分かりません。
- 感情的な判断を助長する: 不安を煽る情報やネガティブな体験談に触れると、冷静さを失いやすくなり、狼狽売りなどの不適切な行動に走りやすくなります。
- 短期的な視点に陥る: 暴落時の情報は日々の値動きに偏りがちです。常にそうした情報に触れていると、NISAの基本である長期的な視点を見失ってしまいます。
情報と賢く付き合うには?
- 情報源の信頼性を確認する: 発信元は誰か、根拠はあるかを確認しましょう。公的機関や信頼できる報道機関、実績のある専門家の情報を重視し、個人のSNSなどは参考程度に。
- 多角的な視点を持つ: 一つの意見だけでなく、肯定・否定、楽観・悲観など、様々な視点からの情報を比較検討しましょう。
- 事実と意見を区別する: 報じられている内容が客観的な「事実」なのか、発信者の「意見・解釈・予測」なのかを見極めましょう。特に将来予測は確定ではありません。
- 情報収集の時間を決める: 四六時中ニュースをチェックするのは精神的に疲れます。1日に1回時間を決めるなど、情報と距離を置く時間を作りましょう。
- 自分の投資方針を信じる: 他人の意見や市場の雰囲気に流されず、自分で決めた投資方針(長期・積立・分散など)を信じ、貫くことが最も重要です。
暴落時こそ情報の取捨選択能力が問われます。溢れる情報に溺れず、冷静に事実を見極め、自分の頭で考える姿勢を保ちましょう。
暴落時の最適解? NISA投資家が本当にすべきこと
さて、ここまで株価暴落時にやってはいけないNG行動を3つ見てきました。狼狽売り、安易な買い増し、情報への過剰反応…これらを避けるだけでも、大きな失敗は防げるでしょう。では、逆に何を「すべき」なのでしょうか? 特に、市場全体がトランプ大統領の関税政策のような外部要因で揺れ動いている今、私たちNISA投資家が取るべき最善の策とは何でしょうか。
結論から言えば、多くの場合、「いつもと違う特別な行動はせず、ただ淡々と、決めたことを続ける」ことが正解となります。
① 淡々と、積立投資を続ける
もしあなたがNISAのつみたて投資枠などを利用して、毎月コツコツと投資信託などを積み立てているなら、暴落時でもその設定を変える必要はありません。むしろ、設定通りに淡々と積立投資を続けることが、非常に有効な戦略となります。
これが「ドルコスト平均法」の強みです。株価が下がっている(=価格が安い)時には、同じ投資額でより多くの口数を買うことができます。市場が回復した際には、この安値で買った分が大きな利益を生む可能性があるのです。暴落は、将来のための「仕込み時」と捉えることもできます。特別な買い増しを焦る必要はなく、ただ普段通りの積立を続けるだけで、自然と時間分散された買い付けを実行できるのです。関税政策がどうなろうと、市場がどう動こうと、感情を排してルール通りに続ける。これが大切です。
② 「売らない我慢」が仕事
特に、全世界株式やS&P500のような、市場全体の値動きを表すインデックスファンドに投資している場合、「市場がどんなに下がっても、決して売らずに我慢し続けること」が、私たちインデックス投資家ができる唯一にして最大の仕事と言っても過言ではありません。
市場は短期的には大きく変動しますが、長い目で見れば世界経済の成長と共に右肩上がりに成長してきました。歴史がそれを証明しています。評価額が減っていくのを見るのは辛いですが、ここで感情に負けて売ってしまえば、その後の回復の恩恵を受けられません。「今は耐える時だ」と割り切り、長期的な視点でどっしりと構えましょう。
③ 見ない、気にしない勇気
含み損が増えていくのを見ると、どうしても不安になったり、何か行動を起こしたくなったりするものです。それを防ぐ最も効果的な方法の一つが、「できるだけ証券口座にログインしない」ことです。
毎日のように評価額をチェックしても、状況が好転するわけではありません。むしろ、精神的な負担が増え、冷静な判断を妨げる原因になります。積立設定さえきちんとしていれば、あとは市場の回復を待つだけです。暴落時は意識的に投資から距離を置き、「見ない、気にしない」勇気を持ちましょう。
④ 投資を忘れて、春を楽しむ
四六時中、株価や経済ニュースのことばかり考えていても、気が滅入るだけです。こんな時こそ、意識的に投資のことを忘れ、気分転換をすることが大切です。
幸い、今は桜が美しい季節です。スマートフォンを置いて、近所の公園を散歩しながらお花見を楽しむのはいかがでしょうか? 美しい景色や心地よい春の陽気は、きっと心をリフレッシュさせてくれるはずです。
趣味に没頭したり、家族や友人と過ごす時間を大切にしたり、仕事に集中したり…投資以外にも、私たちの人生には大切なことがたくさんあります。市場のことは一旦忘れ、日々の生活を楽しむことに意識を向けましょう。
ぼくはお花見しながらジョギングを楽しんでいます!
まとめ
この記事では、NISA初心者の方々が、株価暴落という困難な局面を乗り越えるために知っておくべきことを解説してきました。トランプ大統領の関税政策などが市場に不安を与えている状況を踏まえ、冷静な対応の重要性をお伝えしました。
絶対に避けるべき3つのNG行動として、
- 恐怖心から資産を投げ売る「狼狽売り」
- 底値を見極めずに焦って買い向かう「安易な買い増し」
- 不確かな情報や噂に「振り回される」を挙げ、それぞれの危険性と対策を説明しました。
そして、暴落時に本当に推奨される行動は、意外にも「特別なことは何もしない」ことである場合が多い、という点をお伝えしました。具体的には、
- 決めた積立投資を「淡々と続ける」こと
- 感情に流されず「売らずに我慢する」こと
- 精神的な安定のために、あえて証券口座を「見ない」、投資のことを「忘れる」勇気を持つこと
が有効な対処法となりえます。
NISAは、短期的な値動きで利益を狙うものではなく、長期的な視点で資産を育てていくための制度です。「長期・積立・分散」という投資の基本原則を守り、市場の変動に一喜一憂せず、どっしりと構えることが成功への鍵となります。
株価暴落は誰にとっても不安なものですが、歴史を振り返れば、市場は必ず回復してきました。NG行動を避け、冷静さを保ち、ご自身の投資方針を信じて継続すれば、この局面も必ず乗り越えられます。この記事が、皆さんのNISAによる着実な資産形成の一助となれば幸いです。