2025年も残すところあとわずかですね。「年末は大掃除で忙しい!」という方も多いと思いますが、お家の中だけでなく、あなたの大切なお金の棚卸しは進んでいますか?
2025年12月20日の日本経済新聞(朝刊)では、「老後資金、棚卸しで点検 インフレ考慮し運用戦略を」という特集が組まれました。
記事の中では、東京都に住む50代のAさんの事例が紹介されています。Aさんは「銀行口座が5つ以上あり、NISAもやっているけれど、全部でいくらあるか把握できていない」と苦笑い。実はこれ、50代以上の男性の3割以上に見られる、あるあるな悩みなんです。
仕事や家事で忙しい毎日を送っていると、ついつい今月のやりくりばかりに目が向きがちです。しかし、定年が見えてくる世代にとって、今は老後資金を整える最後のチャンス。特に、今の日本は物価が上がり続けるインフレの時代に突入しています。ただ貯金しているだけでは、お金の価値が目減りしてしまう……そんな危機感を持って、資産の現状を正しく把握することが求められています。
この記事では、ニュースの内容をさらに分かりやすく噛み砕いて、投資初心者の方が今日から実践できる老後資金の守り方・増やし方を徹底解説していきます!
資産の「棚卸し」完全ガイド:どこに何があるか見える化しよう
棚卸しと聞くと難しく感じるかもしれませんが、要はどこに、何が、いくらあるかを書き出す作業です。まずは以下の手順で、あなたのお金を可視化してみましょう。
1. 金融機関をすべてリストアップする
銀行の普通預金・定期預金はもちろん、証券口座、勤務先の社内預金や確定拠出年金(iDeCoなど)も忘れずに書き出します。
専門用語解説:確定拠出年金(DC/iDeCo) 自分で掛金を出し、自分で運用商品を選んで作る自分年金のことです。会社で加入している場合、専用サイトにログインしないと残高が分からないことが多いので、この機会にIDとパスワードを確認しましょう。
2. 貯蓄型保険を現在の価値に直す
ここが意外な盲点です!養老保険、学資保険、終身保険などの貯蓄型保険は、今解約したらいくら戻ってくるかという解約返戻金の額で評価します。保険会社から届くご契約内容のお知らせをチェックするか、担当者に問い合わせてみましょう。
3. 資産を3つのバケツに分ける
全部書き出せたら、それらを目的別に分類します。これが今後の運用戦略の土台になります。
・流動性資金:日々の生活費、急な出費に備える(例:普通預金)
・安全性資金:数年以内に使うことが決まっているお金(例:定期預金、学資保険)
・リスク性資金:10年以上使わない、増やしたいお金(例:投資信託、株式)
このように整理することで、意外と現金が多いなとか、投資に回せる余裕がこれくらいあるなということが一目で分かるようになります。
インフレの恐怖!「額面」よりも「実質価値」を考えよう
さて、資産の合計額が分かったら、次に考えるべきはインフレ(物価上昇)の影響です。
日銀の予測によると、2025年度の消費者物価指数は前年度比で2.7%上昇する見込みです。これがどういう意味か、ピンときますか? 例えば、今100万円で買えるものが、1年後には102万7,000円出さないと買えなくなるということです。
ここで重要になるのが、実質価値という考え方です。 もし、あなたの貯金が1年間で1%増えたとしても、物価が2.7%上がっていたら、そのお金で買えるものは減ってしまっています。つまり、実質的にはマイナス1.7%ということになります。
日経新聞のニュースでも強調されている通り、金融資産の伸びが物価上昇率(2.7%)を超えない限り、あなたの老後資金は目減りしているのと同じです。 銀行に預けておけば安心という時代は終わりました。これからは、インフレに負けないスピードで資産を育てていく必要があるのです。
50代からの新NISA戦略:年末の注文期限に注意!
インフレに対抗するための強力な武器が、新NISA(少額投資非課税制度)です。
総務省のデータでは、50代の世帯は平均で1,673万円の資産を持っていますが、その8割以上が預貯金や保険です。投資(有価証券)に回っているのはわずか19%。これではインフレの波に飲み込まれてしまいます。
では、具体的にどう動けばいいのでしょうか?
1. 長期・積み立て・分散が基本
50代からでも、投資期間が10年以上あるなら遅くはありません。FPの井戸美枝氏も勧めるように、コスト(信託報酬)が低く、世界中の企業に分散投資できるインデックス型投資信託が選択肢の筆頭です。代表的なのは、通称オルカンと呼ばれる全世界株式インデックスファンドですね。
2. 年末の注文期限は12月23日?
ここが一番大事なポイントです! 2025年のNISA枠(成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円)を使い切りたい場合、受け渡し日が年内でなければなりません。 投資信託を注文してから自分のものになる(受け渡し)までには数日かかります。例えば、大人気のオルカンの場合、2025年12月23日が年内枠を使うための注文期限となるのが一般的です。
年末にまとめて買おうと思っている方は、今すぐカレンダーにチェックを入れてくださいね!
旧NISAの出口戦略:損をしても活用できる仕組み
すでに数年前から投資を始めている方にとって、2025年末は大きな節目です。 2021年に旧制度の一般NISAで購入した商品の非課税期間(5年間)が、2025年12月末で終了するからです。
終了後、資産は自動的に課税口座(特定口座など)に移されます。ここで取るべき戦略は2つです。
1. 利益が出ている場合
一旦売却して利益を確定させ、非課税メリットをフル活用しましょう。その資金で2026年の新NISA枠を買い直すのが効率的です。
2. 損失が出ている場合
そのまま課税口座へ移すのも手です。なぜなら、課税口座に移った後の損失は、他の利益と相殺できる損益通算ができるようになるからです。
解説:損益通算 投資で出た利益と損失を合算して、税金を安くする仕組みです。NISA口座内での損失はこれまで他の利益と相殺できませんでしたが、課税口座に移れば、他の株の利益にかかる約20%の税金を減らせるメリットに変わります。
まとめ:今日からできる第一歩
今回のニュースを通じて、私たちが今すぐやるべきことが見えてきましたね。
- 年末のお金の大掃除として、全資産を書き出し、3つのバケツ(流動性・安全性・リスク)に分ける。
- インフレ(2.7%)を意識し、今の運用でお金の実質的な価値を守れているかチェックする。
- 新NISAを活用し、預貯金の一部をリスク資産へ移動させる(年内注文は12月23日頃がリミット!)。
- 2021年からの旧NISA利用者は、年内の売却か、課税口座への移行かを判断する。
老後資金の不安を解消する一番の特効薬は、現状を正しく知ることです。数字が見えると、不思議と次に何をすべきか、落ち着いて判断できるようになります。
まずは今週末、通帳や保険の証書を広げて、資産の棚卸しから始めてみませんか?

